コメント読み上げON [しらないひとし] 誰にもあげないっ!! (BEAST 2025.06)

copyright 2024 ワニマガジン しらないひとし

本日はBEASTから、オキニ作家しらないひとし先生の作品をご紹介したい。

V! V! V! Victory!

神代の昔から「傾城」と呼ばれるほどの美女はその美貌と女性にょしょうで財をなした。しかしその維持・増進そして宣伝にかかる諸経費も、本人の肉体的精神的負担も相当なものだった。しかも生身の人間が相手できる男の数などたかがしれている。美声とスキャンダルで一世風靡したエリザベス・ビリングトンというイギリスのオペラ歌手は1801年の1年に破格の1万ポンド、現在の額で1億円を稼ぎ出した。すごいことだが、現代の歌姫テイラースウィフトの収入2000億円とは比べるべくもない。違いはリーチの長さ、全世界の人に楽曲を売れる仕組みにある。レコードがCDに替わり、インターネットで直接配信できるようになった。本当に良いものであれば、いつでもどこでも見られ、売れる時代である。その中でも時代の寵児として異彩を放つのが「動画配信」という分野と言える。

komifloに「撮影・配信」というタグが追加されて以来、本作のテーマである「V」こと配信者を題材とした作品が増えている。理由は簡単。親和性がいいからだ。男性の性欲をかき立てるためにはセクシーな容姿が必要とされる。容姿は半分は天性のものであり「その女性がやりたいこと」とのミスマッチが多々起こりうる。一方で容姿を飯のタネにするためには不断の維持コストもまた必要だ。そのため生身の女性コンテンツは「千年に一人の美少女」など自然と限られた供給をベースとしたヒエラルキーが固定化される。対して我らが二次元コンテンツは様々な形態のクリエイター様の切磋琢磨により膨大な数の供給がある。天性の能力が不要とは言わないが、創意工夫と努力そしてチームワーク次第で上を狙える世界だ。動画で、静画で、文字で、声でと、各自が得意とするもので勝負できる。いっぽう古来より、二次元クラスタは作家と受け手の間を「作品」が隔てており、作家ご自身に優れたパーソナリティがあったとしてもそれが作品内に現れていなければ伝わらないというジレンマがあった。SNSというツールができて以来、クリエイターの考えていることが表出するようになったとはいえ作品とは一線を画していた。ある意味でこれを解消したハイブリッドが「バーチャルユーチューバー」こと「V」となる。誰かの手により生み出されたアバターを「受肉」した配信者のパーソナリティーそのものがガワ身ごと評価され、誰かに気に入られれば収入にも繋がる。一般的なアイドルビジネス・水商売と違いサービスの受け手側もまた顔を出さなくてよいという点も我々向きだ。今や「V」の世界は二次コンテンツ先進国である日本で巨大なエコシステムを形成し始めている。そんな世界の片隅で本作は始まる。

混沌と破壊の王 エルダーク・ノワール

本作のヒロインはあすみと呼ばれている。配信者としての名前は微妙に見切れているが「フェアリーエンジェルアンナ」(以下アンナ)と読める。アンナさんは1周年配信をするほど頑張ったのだが、「見てくれるのは5人がやっとのド底辺」と結果を残せていなかった。沼に沈むなら一人より二人がいい。アンナさんは中の人の彼氏、本作竿役である剛くんを受肉させ「混沌と破壊の王エルダーク・ノワール」(以下ノワ)としてVの世界に引きずり込んだ。L-Dark-Noir、エルは分からないが暗・黒(英語・仏語)である。彼はつぶらな黒目とキノコ頭からはちょっと想像しづらい低音イケボの持ち主であり、多くの若い乙女の耳の膜を響かせた。また持ち前の人の良さで視聴者コメントを丁寧に拾ったことからも人気を博し、コラボやグッズ制作まで手がける人気者となったのだ。結果としてノワくんと客層が違うアンナさんは苦境を脱すること無く廃業し、彼氏であるノワくんにVの先輩風を吹かせることに甘んじていた。今日もまた人気配信する彼氏の背中で、ノワくんぬいを抱きしめながら羨みの涙を流していたのだった。

独占欲は次元を超える

そう。あすみさんはもず先生ガールズ並みにクセと我の強さが持ち味だ。逆に剛くんはしらないひとしボーイズに例のないクセの無さ、上等な湯豆腐のような淡泊な滋味しかない。ノワくんは偏見だが女子から言い寄られ経験があまり無さそうに見受けられるが、ここまで持ち上げられても天狗にならず浮気する気配も無い。ノワールというガワに護られて収益だけ得ている文句のない彼氏である。にもかかわらずあすみさんはベッドの中でも、まさにヤってる最中でも彼氏に対する独占欲を持て余していた。黙って裏で彼女ヅラでほくそ笑んでいれば万事うまくいっていたのに、どうしてもマーキング欲を抑えきれなかったのだ。ライブ配信中にもかかわらず彼氏の股の間に入り込みパンツを下ろしてしまった。良くも悪くも正直なノワくんは黙って切ればいいものを「ちょっと水こぼしちゃっただけだから」と場を取り繕ってしまった。無視されたと感じたあすみさんは勃起チンコへの攻略を開始する。信者どもはノワが見せた隙にこれ幸いにとスパチャをねじ込む。さらに事態を収拾できず慌てるノワ。三者三様の悪循環で14ページ、ついにあすみの黒い独占欲が次元を超えて信者へと伝わってしまう。

今さら隠してももう遅い♡

まんまと口内射精した混沌と破壊の王エルダーク・ノワールは、アエぎながら彼女の真名を言ってしまうという混沌をもたらし、あわてて配信を切って破壊を司ろうとした。しかしそれを阻止して「今さら隠してももう遅い♡」と返したのは、かつてノワによってVの世界から追放されたフェアリーエンジェルアンナだった。詳細は不明だが、低音イケボでならしたノワには「俺オナ民」とでも言うのか彼を性の対象とみる男性ファンが少なからずついていた。アンナによってコメント読み上げがONとなったあすみの防音部屋では、ガチ恋女勢の阿鼻叫喚に混ざってアップし始めた俺オナ民が歓喜の声を上げだした。さっさとマイクを切ればよかったものを、アンナは淫語と個人情報と激しいキスが混ざった濁流をインカムに注ぎ込み、悲喜交々のコメントがノアのヘッドセットに直接返ってくる。挿入してさらにノってきたアンナさんはNTRビデオレターの定番コメント「イェーイ画面の向こうの彼女さん見てる?」の正ヒロイン版をガチ恋勢にぶつけた。そしてノワをベッドに連れ込んだ上で一発搾り取る。23ページ、ある程度彼の中でVとしての詰みを認識したのか、逆転してあすみの名前含めて愛のイケボを流し込んだ。ここらで面倒くさい女勢はおおかた脱落し、コメントが追い風になってくる。ついでにここでノワの真名も暴露され、あとで暴露アカウントの角栄スマソに晒される。そして皆に祝福かつ通報されながら絶頂とアカウントBANを迎える。

コメント読み上げON

もう一度頭から、ノワの信者について見ていこう。第一の信者はもちろんフェアリーエンジェルアンナご本人である。今は亡き自身の配信でデビューさせる。自分のガチ彼氏をして「超『小』型新人」と表記するところに後々のやらかしの片鱗がうかがえる。そして5ページ、初生リスナー「ついの…」、孕ませてほしい「YOUSEIKUN」、「まくろ」といったガチ恋スパチャ勢が現れる。運命の日8ページ、配信のラストは「真宵」さん。ノワの反応から推察するとこんなかんじだろうか(金額は推定)。

そしてイケボを独占したい「ノワール推し」(\10,000)、痛いポエマー呼ばわりの「暗闇堕天の聖女」(\10,000)と続き、「ライン越え」とあすみをピキらせた赤スパ(アカ不明)につづく。12ページ、水こぼしたと誤魔化そうとしたノワに「クリーニング代」「飲み物代」のスパチャが連打される。そして14ページ、なかなか勘のいいコメントが並ぶ。

• なんか変な音してる?
• 誰かいるよね、彼女?
• フェラじゃね草草
• え?マジでなにやってるの?
• 嘘だろノワ!!??
• あすみって誰よ!
• あすみ?
• イった????え????

ここでコメント読み上げ機能がONになる。実際に読み上げさせてみたので音量に気をつけて再生してみてほしい。可能であればコレを聞きつつ16ページから読んでみると謎のリンク感があるかもしれない。1分39秒しかないので実用には向かないかもしれない。悪しからず。

コレを聞きながら、本作のクライマックスは19ページ。対面座位の二人にも見えないノワ信者のご尊顔が拝める。般若の形相でコメントを打つ右上、ノワくんぬいに怒りをぶつける左上、逆にノワくんぬいを抱えてヘッドセットで実況を聞きながら自ら乳首とクリを攻める左下。そして衝撃の右下である。スマホでおそらく正しく動作していないであろうノワールのガワ身とチャット欄を激しくシゴきつつ、なんと自らの手で射精に至っている。冒頭にも書いたとおり男性向けエロの二次元コンテンツは膨大な供給がある。その中で、敢えて、ガワ身も中身も男で、しかもリスナーとの真面目なやりとりしかしていなさそうな配信を聞き、しかもその中で起こった謎の女との緊急エロ公開配信で抜いたという。王への敬虔さ故か、予言者か、鬱勃起か、何でもいいのか。いずれにしても上級者であり、このコマを挟まれたしらないひとし先生もまた上級者で間違いない。エロ漫画的に比較的わかりやすい順当な展開が多かったBEAST今号の中で色モノ感を「誰にもあげないっ!!」と死守した本作をぜひお試しいただきたい。

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