copyright 2024 ワニマガジン へのえの
タイトル | 始まりはまず握手から |
作者 | へのえの |
掲載誌 | WEEKLY快楽天 2024 No.43 |
ページ数 | 22 |
ヒロイン | 私 |
竿役 | 俺 |
発射数 | 2 |
公式タグ | パイパン / OL / 中出し / 淫乱 / 貧乳・微乳 |
修正 | 白抜き修正 |
本日はぜひ取り上げたかった、Weeklyからへのえの先生の作品をご紹介したい。
食欲スワッピング
言うまでもなく、食欲と性欲は人間に限らず生物にとっての至上命題である。しかしこの二つには大きな相違点がある。食欲は「欲求」と「胃袋」が必ずしも強調していない。どんなに食べたくても、あるいは今食べないと無くなると分かっていても、腹に納められないということは高頻度で発生する。性欲も同じようなことは起こりうるが、一発抜いてしまえば欲求の側もかなりの勢いで減退する。また性欲の対象は人類全体を分母に取るととんでもないバリエーションに発展するが、個々人レベルでは比較的狭い範囲に執着しがちである。対して食べ物は限られたバリエーションの中でも可能な限り「違うものを食べたい」欲求が存在する。そこで本作の「互いの料理を分け合う」という概念の発生だ。全パターン一口は食べてみたいが胃袋的にも財布的にも厳しい。それは隣の人も大なり小なり同じことだ。しかし当然この「食欲スワッピング」に合理性があったとしてもハードルは高い。性欲におけるスワッピングと同様に、どこかしら「不潔感」がある行為であり、誰彼構わずというものではない。だからこそそれが出来る関係性は親子やカップルレベルの親密さが要求される。本作は逆に、食への好奇心だけでこのハードルを越えた二人が親密になる話である。
本作の二人は最後まで名乗っていないため、以後ヒロインは「私」、竿役は「俺」と呼称する。
Round.1 社畜飯店
A定食: [豚肉とキクラゲ炒め]+[焼売などから一品]
B定食: [酢豚] + [餃子/唐揚げなどから一品]
本作を時系列で並べると、なれそめのエピソードは3ページである。二人は首からネームカードを下げたサラリーマンだ。社食というわけではなさそうなので勤務先は違うかもしれない。オフィス街のランチは基本的に時間との戦いだ。提供する側も「日替わりランチ」と称したプリセットメニューを大量に用意し、客側も迅速にそれを受け取る。そんな中で店頭ディスプレイを前に悩む二人は自然と惹かれあったのだろう。最初はヒロインが声をかける。社畜飯店の定食は「メイン皿」プラス「選べる一品料理」という構成らしい。選べる一品は「焼売・餃子・唐揚げ」などから選べるが、A定食とB定食で選択肢が違う場合、追加支払いで複数選べるなどのバリエーションがある可能性は残る。「全部食べたい」という欲求を隠さない私に全力で同意する俺。自然と「シェア」という言葉が飛び出し、二人は熱い握手を交わした。これが「始まりの握手」である。
Round.2 回転寿司
私の注文: イカ / つぶ貝 / マグロ / カンパチ
俺の注文: カツオ / 生タコ / 松前漬 / エンガワ / ハマチ
ここから幾度かのランチシェアを重ね、二人は冒頭の寿司デートに連れ立つ。質より数を重視する二人は回転寿司のカウンターをチョイスした。ちなみに大手回転寿司チェーンのメニューを見たところ、くら寿司にはカンパチがなく、かっぱ寿司には松前漬けが、スシローには生タコが、はま寿司にはカツオが居なかった(店舗・時季により異なる)。解説するとつぶ貝とは巻貝(壺)の総称で、一般的にはエゾバイ貝を指す。松前漬けは細切りのスルメと昆布を調味液に漬けたもので、ニンジンや数の子が和えられる北海道名産だ。ハマチはブリの成長途上を指し、カンパチはブリ属の別種の魚である。なおヒロインが提起した「寿司がなぜ2つ一組で皿に乗せられているか」という疑問には諸説あるが、「もともとの寿司は一口には大きかったため半分に切って出した」という説が有力そうだ。その意味では「二人で食べる想定」というのもあながち間違いではない。ちなみにヒロインは脱いでもスレンダーなのだが単独でも10皿いけるらしい。
Round.3 ハニトーの出るラブホテル
本作はエロ漫画なので上記は全てこのための導入である。まずこのホテルの話をしよう。蜂蜜をかけて焼いたハニートースト自体は比較的どこにでもあるのだが、「ハニトー」という名称は株式会社ニュートンの登録商標である。半斤ほどの食パンをトーストしたうえでアイスや生クリーム、フルーツでトッピングしてあり、作中で語られている通り1人で食べるにはかなりハイカロリーでボリューミーである。秋葉原などでおなじみのカラオケパセラ、そしてラブホテルであるホテルバリアンリゾートの親会社だ。ホテルバリアンがあるところ(首都圏及び大阪)にはカラオケパセラも出店しているので、ハニトーが食べたければカラオケに行く方が手っ取り早い。なお大阪地区のバリアンではフルサイズのハニトーが無いらしいのでご注意を。バリアンリゾートはバリ風の調度のほか、ウェルカムドリンクやアメニティバイキングなどサービスが充実している。その分少しお高めだが満足度は高い。ちなみに「ラブホテルで朝食バイキング(<そんなんあったら気まずいだろ)」というネタがあるのだが、バリアン一部店舗では本当にある。この二人にもぜひお勧めしたいところだ。
本作では、ハニトー食べたさに勢いで宿泊しにきた二人が、初めてテンションのまま「AVを見つける」「ハニトー焼き上がりまで時間かかるので私シャワー浴びる」「バスローブ姿で俺にシャワー勧める」「電マ見つける」「私が自分で電マを乳首に当ててるのをシャワー上がりの俺に見つかる」という流れで生エッチに突入してしまう。俺くんは正直に、身体の関係がメシ友としての関係性を毀損してしまうことを恐れていた。それだけこの関係を大事にしたいと願っていた。本来女性が言うことである「一夜の過ちということにしましょう」と提案までする。対してヒロインの方は「メシ友としてだけでなく身体の相性もイイ」と肯定的に捉えていた。5ページ、「生というのを差し引いても…」相性がいいと続くヒロインのセリフがある。女性にとっては避妊無しイコール快感ではなく差し引くものでは無いように思うのだが、男性的な思考といえる。「食欲と性欲の融合」「男性と女性の混同」という倒錯性が本作の何とも言えない淫靡な空気感を作っている。そして物語前半は俺君視点の思考で描かれていたのだが、16ページから私視点に切り替わり、グルメレポのように絵で伝わらない快感を言葉で描出してゆく。この軸のシームレスな切り替わりによって、いつしか読者が突かれる側として取り込まれてゆく感覚がたまらない。
Final round 焼肉
事後、焼き肉店に切り替わる。臭いの残る焼肉デートは上級者向け、あるいは経験者向けという定理はよく知られている。これを最後にもってくる、趣深い組み立てだ。そして同時に、ヒロインが述べている通り「一人焼肉は難易度高い」のだ。これは単純にテーブルで焼く焼肉というスタイルを考えたときに、テーブルごとのコストと単価の割が合わないからである。この点をクリアしたのが「焼肉ライク」のスタイルであり、そういうテーブルにしてしまえば一人客も呼べるのだ。これを加味したうえでのヒロインの結論「一人用セットでは各部位を楽しむほど注文できないから」というのは理解できる。ぶっちゃけ二人でも厳しいと思うが。そしてさらに一言「焼肉って食べると — ムラムラしません?」、このセリフの後、両者黙ったまま網の上で握手するところで本作はオチる。どうだろう。ムラムラ=獣性という意味では、肉食ってヤるというのは理想的だ。ただ男女の実際問題として焼肉からセックスという流れは、ムード作りという点で一般論としては難しいと思う。したがってこの問いに返答するのは難しい。しかし焼肉を目の前で食べている女性からこの問いをブッ込まれたという事実だけで両者ムラムラできるのは間違いない。だからこその「黙って握手」である。非常に読みやすく読後感も爽やかな一方で、読めば読むほどに随所の心配りが丁寧で優しい。ぜひともご賞味いただきたい逸品だ。
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220円