令和のたけくらべ [橙織ゆぶね] 巣立ち 後編 (WEEKLY快楽天 2024 No.12)

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copyright 2024 ワニマガジン 橙織ゆぶね

タイトル 巣立ち 前編
作者 橙織ゆぶね
掲載誌 WEEKLY快楽天 2024 No.11
ページ数 18
ヒロイン 藤田深雪
竿役 木村浩一
発射数 2
公式タグ フェラ / 制服 / 同級生・同僚 / カップル・夫婦 / 学園 / 学生 / 恋愛 / 淫乱 / ぶっかけ・顔射
修正 白抜き修正
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copyright 2024 ワニマガジン 橙織ゆぶね

タイトル 巣立ち 後編
作者 橙織ゆぶね
掲載誌 WEEKLY快楽天 2024 No.12
ページ数 18
ヒロイン 藤田深雪
竿役 木村浩一
発射数 2
公式タグ 同級生・同僚 / カップル・夫婦 / 学生 / 巨乳 / 恋愛 / 淫乱 / 陰毛 / ぶっかけ・顔射
修正 白抜き修正
皆様のご愛顧を持って、当ブログは10万アクセスを数えさせていただいた。当ブログはURL変更のため一旦立て直しをしており、カウンターは昨年4月からのカウントとなっている。とはいえ駆け出しの頃は全くアクセスがなかったので誤差のようなものだ。引き続きお付き合い頂ければ幸い。そんな個人的節目の本日は新年一発目に続いて橙織ゆぶね先生の前後編作品をご紹介したい。

次にイくマンガ大賞2023

Weekly快楽天は我らがkomifloの誇る配信専用コンテンツとして生まれている。「エロの週刊配信」という旗印で、エロマンガアカデミーなど様々な企画を提供している。当初はかるま先生の4コマなど色々試行錯誤もあったが、最近は快楽天本誌の登竜門として、例えば悪いがジャンプ+のような活況を見せている。Weeklyから本誌に羽ばたいた代表がどじろー先生だろう。対して橙織ゆぶね先生は相性が良いのかワニマガジンではWeekly一本で描き続けられ、初単行本「じゃお、エッチしちゃう?」は描き下ろし除いて初出が全作品Weeklyとなった。おそらく唯一ではないかと思う。「次にイくマンガ大賞」があれば是非推したい実力派作家様である。とにかくヒロインの人懐っこさ、「気づけば好きになっている」ヒロインの描写、ストーリー展開が私は好きだ。

あらすじ

本作は最初から前編と銘打っており、続くことが予告されていた。連作もこなす先生だが、本作の前編はあからさまに不穏であり、当ブログとしても後編を待ってのレビューとさせて頂いた。未読の方はなるたけ通しで読むことをお勧めしたい。本作の登場人物は3人、ヒロインの藤田深雪、そして男が二人、木村浩一と庄司くんだ。後者は苗字が分からずじまいなのだが、前編の扉絵に出ている彼である。庄司と深雪は幼馴染で、幼少期からしっかり者の庄司君が深雪の面倒を見てきたらしい。その結果、周囲も当人自身も「庄司君が居ないとダメになる」という認識を持ってしまった。そこに唐突に浩一が現れ深雪に告白するところから本作は動き出す。深雪は毎朝庄司に付き従いながらも、隠れるように浩一との逢瀬を重ね性愛の喜びを知ってしまう。そしてハマった。深雪は庄司に対する申し訳なさを感じつつも、自分を必要としてくれる浩一の存在にすっかり溺れて身体を重ねる、というところで前編は締まる。

学習性無力感

本作前編のテーマは「学習性無力感」だ。心理学者セリグマンの実験により、犬をグループに分け犬の嫌がる電撃を与え続けた。頭を動かすと電撃を止めたグループの犬は、電撃を嫌がり止める方法をあれこれ模索した。しかし何をしても電撃を与えた方のグループは、そのうち電撃を与えてもリアクションを取らなくなる。この事が人間を含む他の動物にも当てはまると分かり、継続的なストレスに対して抵抗する手段が無いと一旦判断すると以後全般的にストレスに対して受け身の態度になり改善行動を取ろうとしなくなる事が分かった。学習性無力感の恐ろしいところは、この認識に陥ってしまうと実は簡単な回避手段が目の前にある場合でも自発的に動けなくなることだ。本作の深雪は、庄司の尊大な馴れ馴れしい態度に辟易していたが、母親を含む周囲の圧力から逃れることをせず迎合する道を選んできた。結果、自己肯定感が著しく損なわれ、実際にダメ人間を演じるかのようになってしまった。そんな彼女に木村浩一というクラスメートが突然告白した。深雪自身ほとんど面識のない男子でコクハラ的ではあるのだが、自分にここまで好意を持ってくれた理由を問うた。浩一は深雪の無力感を「落ち着いていて大人っぽい雰囲気」と感じ、時折「凄くつらそうにしている」事を見抜いていた。これが深雪の琴線に触れた。彼女は浩一の好意を受け入れるとともに、おそらく無意識のうちにこの関係を隠すようになっていた。庄司から見えないところで二人は逢い、話した。身体の関係になるまで1ページもかからなかった。浩一が意を決して誰もいない家に深雪を誘うところで前編はオチとなった。

ピグマリオンとゴーレム

本作後編のテーマは「ピグマリオン効果」そして「ゴーレム効果」と呼んでみよう。ピグマリオン効果とは「期待をかけることによって自己実現的に好成績を発揮する」という心理学用語で、教育現場やマネジメントで使われる用語だ。ピグマリオン(Pygmalion)はギリシャ神話に登場する王様で、自分の彫った女性像に惚れこんでしまい食事を用意するほど入れ込んだ結果、神によって命を与えられ夫婦となったという若干オタ寄りの美談が元ネタになっている。浩一は授業が手に付かないほど深雪のことを想い、二人は愛し合う。この反対の「ゴーレム効果」とは、巨大な力を持つゴーレムも、呪力の源である額の印を消すとただの土に戻ってしまうという伝説から、「ダメだと言い続けると本当にダメになる」という心理学用語である。深雪と浩一が逢瀬を重ねている間、庄司は幼馴染の女子を従えていることを周囲に自慢していた。ある日、庄司は深雪を呼び出し、「今後は彼女として遇する」と通告する。答えなど決まっていると高をくくっていた庄司は、深雪から隠していた事実を突きつける。既に自分は他の男と付き合っていること、既に身体の関係まで進んでいること、そして今や庄司のことなど眼中にない事。事態を呑み込めない庄司に、「バイバイ庄ちゃん 今まで本当に めんどくさかった」という捨て台詞を吐いてオチとなる。

令和のたけくらべ

このオチに対してコメントが若干荒れている。「庄司君が浮かばれない」というのが理由だ。改めて本作を整理して私見を述べたい。全体を通して「深雪が庄司から軽んじられている理由」の説明、具体的なエピソードがない。庄司はやたらと腐しているのだが深雪の失敗談の一つも無い。幼馴染というのは事実でおそらく幼少期は普通に仲の良い男女だったのだろう。唯一提示されている事実から察するに、ボタンの掛け違えは「深雪の身長」にある。一般に女子は男子より成長が早い。幼馴染の女が自分より身長が高くなったことに対して、庄司はコンプレックスを持ってしまった。そこから事あるごとに深雪にマウントを取り始めた。そうと気づかない深雪は最初は庄司の顔を立てていたが、段々その関係に息苦しさを感じるようになった。結果的に庄司の身長は深雪を追い越すのだが、委縮する深雪にますます増長する。2ページ、深雪の頭を押さえつける仕草がそれを象徴している。歩幅に関してもかつて深雪はチビの庄司に配慮していたのだろう。この推察が正しいなら成長期の深雪が原因ではあるものの落ち度はない。かたや前回ご紹介した高晃と同様に、庄司は「深雪は彼女ではない」と言い張るものの他に女を作っていた気配はない。コメント欄でBSSと書かれていたが深雪に一途ではあったのだ。中坊の無益なプライドのせいで好きな女を大事にする方法が分からず、力付くで押さえつけ、眼の前でするりと逃げられたのだ。程度の差こそあれ、本作の庄司に自分を重ね、(真相はともかく)「答え合わせ出来てしまった失恋」の苦さを噛み締めた読者は少なくないのだろう。そして本作の浩一くんは少なくとも作中では一切庄司に触れない。告白するほど好きで、全く知らなかったとは言わせない。そういう浩一くんに少々ズルいところがあっても良かった。有耶無耶にしても良かった。庄司に何か花を持たせても良かった。しかし橙織ゆぶね先生は敢えてスパッと切らせて捨てさせたのだ。ゆぶねガールズは皆とても男に優しいのだが、牧村さんにしても中沢さんにしても「竿役の幸せ」と「自分の幸せ」を重ねようとしている姿が美しい。ヒロインと竿役が幸せになるためには犠牲も厭わない。清濁併せ呑む、美しくも切ない、力強い作品だ。

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