内向きの露出 [楝蛙] 本日の勝負服 (快楽天 2024.05)

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copyright 2024 ワニマガジン 楝蛙

タイトル 本日の勝負服
作者 楝蛙
掲載誌 快楽天 2024.05
ページ数 21
ヒロイン 七瀬
竿役 浅野けんご
発射数 1
公式タグ JD / 巨乳 / 恋愛 / ぶっかけ・顔射
修正 白抜き修正
 
個展のレビューに続けて楝蛙先生の最新作をご紹介する。快楽天の巻頭作品である。
 

惰性67%

本作は「男2女2で家飲み」というエロ漫画でよくある趣向だ。いくつになっても性の垣根を越えるのは難しいので、自分と同性の人間が居ない空間は話を合わせづらい。もちろん大勢ではやりづらい。性の話をするのに最も適したパーティー構成ではないだろうか。これを徹底的にヤり尽くしたのが皆さんご存知、紙魚丸先生の建前一般作品「惰性67%」である。こちらは結局最後までデキなかったのだが、本作は実質的にWデートの様相らしい。舞台はヒロイン七瀬の部屋。「鰐大映像研究部」というサークルの活動として映画の鑑賞会をするというのが導入だ。竿役の浅野くんとヒロインの七瀬とはここまでレイトショーを二人で観るくらいの仲、楝蛙先生作品で私が都度提唱している「残り30cmの距離感」のまま、お互い最後の一歩を踏み出せないでいた。今日もそのはずだった。七瀬宅に向かう手前で浅野の頭上に舞い降りた一切れの黒い布が二人を「勝負」へと誘ったのだった。
 

勝負服

「勝負服」という用語を多用しているのは競馬しか知らない。あらゆるスポーツや勝負事には大体決まった服装があるのだが、チームスポーツなら「ユニフォーム」(=同じ服という意味)、それ以外は適宜専用の名前が付いていることが多い。競馬の騎手が着る勝負服は、騎乗する馬の馬主ごとにデザインを決めている。馬の識別に用いられるため乗る馬に合わせてレース毎に着替える。動作の邪魔にならないシンプルな素材であり、新馬戦だろうがG1だろうが色柄は変わらない。単なる消耗品の作業着であり、いわゆる「ここぞという場面で選ぶ一張羅」というニュアンスからは程遠いといえる。そして本作のような男女の関係で言う勝負服には高確率で「下着」の意味が含まれている。以前どじろー先生「天野結華」シリーズで書いたが、セックスの同意を取り付けるまでが男側の勝負なのに対して、実際に服を脱いで肌を重ねるところで男性をその気にさせるところを女性は勝負と捉えがちである。男性の下着は機能性も不要で清潔であれば何でも良い。女性の下着ははるかに機能性が求められるにも関わらず、機能を超えた装飾品としての総合点を追い求めており、自身が納得できる「勝負下着」でないと気持ちが乗らないのだ。「だったら先に見せろ」だの「どうせ脱ぐのに」だのは野暮であろう。ちなみにワコール調べによると、勝負下着を持っていると答えた女性の割合は46%という微妙な数字である。持っている側の意見としては赤ないし本作と同じ黒という回答が多い。
 

落としても安心、部屋干し

本作のオチの先回りになるが、浅野の頭に舞い降りた黒下着は七瀬のもので結果合っていたにもかかわらず「今後は落ちた下着を拾うな!」と釘を刺されてしまう。まあ持ち主の手元に帰らなければ泥棒であるし、人のセクシー下着を拾ってナニに使うんだと言われればおしまいである。浅野はそれがセクシーパンツであると認識した時に持ち主を妄想するのだが、明らかにこの人を淫乱お姉さんとしてイメージしているのが小ネタ的に面白い。下着をどこに干すか問題は男性にはピンとこないものがあるが、察するに七瀬さんは普段は部屋干し派なのだろう。勝負下着のローテの都合で洗濯はしたのだが、部屋に浅野くんを招くことを思い出しあわてて外に干した、そして落としたという感じだろうか。浅野君は偶然それに気づいてしまい、ブラとパンツと七瀬が一つの線で結ばれてしまった。どうしても我慢できない浅野は、けんごと佳乃が発情して退出したタイミングでいきなりブッ込む。当然キレる七瀬だったが、事情を聞き察する。他ならぬ浅野には元より見せるつもりもあったのだ。「竿役を足蹴にするヒロイン」という描写はスカートでやりがちなのだが、デニムパンツだったのには理由があるのだ。
 

内向きの露出

先ほど「露出と感度」の南おねえさんに触れたのだが、彼女は言わば「外向けの露出」派といえる。人里離れた山中で服を脱ぎ、SNSにて発信する。人の目線を感じたら脱がない選択肢もあったろう。開放的だが計画的な露出だ。対して七瀬さんは「内向きの露出」を披露していた。上記の通り、勝負下着と言いながらも実際見せる段になったら勝負も何もない。あくまで女性側が家を出る前に決める「覚悟」の問題なのだ。七瀬さんのワードローブ事情は分からないが、彼女の出した結論はアンデルセン的に言うと「バカには見えない下着」だった。南おねえさんと違い、脱がなければバレることは無いはずだが、穿いてないことがバレたら逃げ道がない。これはこれで恥ずかしい露出なのだ。先ほど触れた「足蹴」も、布一枚という意味ではパンチラというかパンモロである。ここから展開が加速する。16ページ、メガネを外す。顔を隠しつつも我慢できずに浅野の顔を見てしまう。17ページ、B->A->C->告白の流れを5ページで駆け抜ける。
そして朝チュン、映画のためなら徹夜談義も辞さない浅野君だが、Hしたら寝てしまうのは仕方ない。まどろみから目を覚ますと、今度はバカでも見える方の勝負下着姿の七瀬がいた。楝蛙作品では不倫に巻き込まれる展開の最後で「あたしは浮気ダメだからね!」というセリフを言わせるオチがある。本作の「当て馬」であるけんごと佳乃は「付き合っていないのに関係アリ」らしいのだが、浅野君には一切非がない。七瀬が言いたかったことは「落ちてる女物のパンツを拾うな」の方だったのだが、さすがにコレだけ言うのは恥ずかしかったのだろう。21ページ、ラストカットの下着姿が一番可愛い。勝負服姿の「本日」は始まったばかりだ。
 

あらすじ

映画鑑賞サークルの浅野は、会場である七瀬の家の近くでセクシーな黒のパンツを拾ってしまう。そして七瀬の家のベランダで偶然目撃したブラとペアであると気づいてしまう。散会後、二人になるやいなや勝負下着について七瀬に聞いてしまう。それが自分に向けられた勝負だったこと、そして今夜の「勝負服」を聞かされてしまう。

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