copyright 2024 ワニマガジン 加速
タイトル | 蚕のひとつ覚え |
作者 | 加速 |
掲載誌 | WEEKLY快楽天 2025 No.21 |
ページ数 | 24 |
ヒロイン | レヴァ |
竿役 | お坊ちゃん |
発射数 | 2 |
公式タグ | フェラ / パイパン / ニーハイ・ニーソ / 中出し / お姉さん / 巨乳 / メイド服 / 淫乱 / 背徳・インモラル / 金髪・茶髪 |
修正 | 白抜き修正 |
いきなり反省の弁で申し訳ないが、書くことの多い作品を選んでいるとはいえ最近いくらなんでも記事が長すぎる。レビュー作品数を減らすことは全く本意では無いので、本日配信されたの加速先生の作品を早速ご紹介したい。加速先生はWeekly快楽天の新人作家紹介記事、エロマンガ・フレッシャーズ(EF)の初回を担当されている。前回は当時最新の第6回までご紹介し、目下第11回まで進んでいる。大変好評を頂いたのでこちらも次回記事が出次第まとめたい。
白いレヴァはキラキラを知らない
こちらも最近まとめさせていただいたが、本作ヒロインも文句のないクラシックスタイルのメイド、レヴァさんである。本作は特に叙述トリック的なものがあるわけではないと思って読んでいるが、以下ネタバレ的な要素が含まれているため先に一読をお勧めしたい。なお虫が苦手な方は1ページ目1コマ目だけ目を瞑って頂ければ以降問題ない。レヴァさんはweekly恒例のカバー絵3連作を担当されている。リアタイ読者の方は既にこちらのイメージが強いかもしれないが、レヴァさんは蚕のように白いのだ。

本作の竿役はレヴァから「お坊ちゃん」と呼ばれている。以下「坊」と呼称する。呼び名の通り、レヴァの雇い主は坊の父親で、本作ではメイドものらしく「ご主人様」と呼ばれている。もともとレヴァは娼館で働いており、好色とおぼしきご主人様の眼鏡にかなってレヴァは身請けされる。レヴァの右額にはこのときの名残であろう、不気味なほど真円の刻印が遺っている。そんな彼女はご主人様のことを大変慕っていたのは想像に難くない。ところが彼女は自他共に認めるポンコツであり、家事全般がダメな子だったのだ。この運命のすれ違いからか、ご主人様は外出時に彼女を帯同せず屋敷で坊のお守りをもっぱら担うこととなっていた。一方で坊もまた父親からネグレクトされがちであり、結果かまってくれるレヴァを頼りにしていた。本作はそんな二人が待つ屋敷にご主人様がご帰館したところで始まる。「自分を名前で呼ばない父はどうせ僕のことも覚えちゃいない」と拗ねる坊に、「ご主人様はお坊ちゃんと同じく優しい方なのでそんなことはない」と庇うレヴァ。5ページ、「あんな奴がレヴァの…何を知ってるんだよ」と嫉妬の心をチラ見せた坊に勘づいたレヴァは、「だめですよ 人の物に手をつけたら」と薄ら本妻のようなフリを見せた。ここまでが前段だ。
「あ…シャル様…?」
6ページ、夜這いを仕掛けたレヴァはご主人様にお断りされてしまう。暗い廊下で泣き濡れるレヴァを見つけた坊は、不安定な彼女の心に気づく。そして優しい言葉をかけた坊を見つめる瞳の熱に、ほのかな危機感を感じた。娼館育ちのポンコツであるレヴァは「夜伽」以外の価値をとうに諦めていた。最後に残った自分の価値を大切なご主人様に否定されたことを認められず、自分が床上手であることを必死に坊にアピールし始めた。坊の意向も聞かずに、舌を絡め取り、チンコをしゃぶり続けるレヴァ。ここから本作はエロシーンと坊のモノローグが乖離してゆく。濃厚なおねショタプレイで興奮する脳では、この裏に走るモノローグは処理しづらい。順番にまとめよう。
- 父がレヴァを見捨てるくらいなら、献身的に身体を差し出してくる彼女を自分が受け止めてあげれば全員ハッピーなのではないか? (12ページ)
- レヴァは自分に父親を重ねている。坊のこともレヴァ自身のことも見えていない。(15ページ)
- 父親ほどの権力も人徳も自分には無い。父もレヴァも自分のことを見捨てるのが許せない(16ページ)
- それでも自分はレヴァに自分のことを見てほしい。自分のことを認識しているか確かめたい(19ページ)
- 自分に力が無くても、無力なレヴァは縋れるなら誰でもいいんだ(21ページ)
2と3の間で射精が挟まる。一瞬賢者になった坊と、逆に火がついたレヴァ。条件反射的にご主人様への恭順を口にするレヴァを見た坊は心が折れかかる。それでも誘われるようにロストチェリーした坊は、嫌でも彼女をモノにしたくなった。18ページ、セックス中にもかかわらず違う男との夢を語り続けるレヴァの口を坊は右手で封じた。強引に口を捕まれたレヴァは素に戻る。と同時にS心をざわつかせる抜きドコロだ。20ページ、「あ…シャル様…?」レヴァは応えた。そしてご主人様を裏切ったこと、そもそも捨てられたことを自覚し、新たな拠り所である坊に献身を誓った。私は最初「シャル」というのが坊の名前だと素直に思った。当ブログは可能な限り固有名詞を拾いたいため、竿役の名前にシャルと一度は書いた。しかしそれにしては本人の顔色が芳しくない。悩んだが、どちらともいえないが、ここでレヴァは坊ちゃんの名前を「覚えていなかった」、つまり彼はシャルという名前ではないという解釈を採ることにした。自分が新たにご主人様と媚びた相手の名前すら当てられていないことに坊は失望し、「ああ わかってはいたけど この人には本当に何もないんだ」という諦念と憐憫の感情が出たという事だ。より哀しくなる解釈ではあるが、私の中ではしっくりくる。
蚕にすらなれなかった女
もう一つ私は初見で引っかかりを感じていた。その前に本作冒頭に登場したカイコガに触れたい。日本は養蚕先進の地であったため、義務教育でカイコガに触れた方も多いと思う。ご存じの通りカイコガは蛾の仲間であり、幼虫から蛹になるときに作られる繭が絹糸で出来ている。絹(シルク)は優美な質感と丈夫さから古代より現代に至ってもなお重宝されている。カイコガの家畜化に成功した中国の重要な交易品となり、日本でも早くから養蚕の技術が取り入れられた。この家畜化があまりにも出来過ぎたため、養蚕で用いるカイコガという品種(Bombyx mori)は飼育者である人間の手を借りないと生存も繁殖も出来ない生き物と化してしまった。しかもカイコガは蛹から羽化するときに酵素で繭のタンパク質を溶かしてしまうため、絹糸を取り出す前に蛹自体を殺す必要がある(非暴力を掲げたガンジーによって、そうしない養蚕も生まれている)。生殺与奪を人間に預けた哀しい生き物として描かれることも多い。本作タイトルにある「蚕」は明らかにレヴァを指しており、「自分が出来る夜伽を一つ覚えのように繰り返す」さまを重ね合わせている。私が引っかかった点はここだ。生物として最もダメだと思わせる、蚕が自力で出来ない行為こそが交尾、セックスなのだ。蚕というのは経済的な生産性だけがあり生殖出来ないところに特徴があると私は思う。本作のレヴァから受ける印象と真逆と言えなくもない。むしろバリキャリしごデキだが子宝に恵まれない人間こそ蚕になぞらえたくなる。
しかし本作を繰り返し読んで自分の中で結論が出た。娼館を出てなお夜伽を繰り返す彼女は、セックスのまねごとが出来ても本来の意義を果たせない–不妊なのではないか。そこで気になるのが右額の封緘である。よく見ると蚕の幼虫がSの字になっているように見え、周囲に不明な文字が綴られている。識別用の焼き印か何かかもしれないが、不妊であることの証明、もしくは呪いそのものなのかも知れない。本人はこの封緘を全く意に介していない。作中でも触れられていない。でもそうだとするならば、その意味でも本作のレヴァの性行為は「蚕のひとつ覚え」であり、坊の全ての発言にさらなる重みが出てくる。無邪気に「およめさんになれちゃったり」とのたまう口を塞ぎたくなる。加速先生の作品には、その名の通り読者に情報量をたたき込むスピード感がある。その醸し出すほの暗さを感じるままに味わうもよし、一旦立ち止まって思考するのもまた良しだと思っている。前者で愉しむのが正しいエロ漫画の読み方だとは思うが、改めてこんな味わいもどうだろうか。
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330円
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