copyright 2025 ワニマガジン 加速
タイトル | 閉じた海にも飛魚は |
作者 | 加速 |
掲載誌 | 快楽天 2025.11 |
ページ数 | 26 |
ヒロイン | 小鳶先輩 |
竿役 | 藪坂 |
発射数 | 2 |
公式タグ | パイパン / ショートカット / 先輩・上司 / お姉さん / 学生 / 巨乳 / 恋愛 / 競泳・スクール水着 |
修正 | 白抜き修正 |
引き続いて快楽天から、加速先生の作品をご紹介したい。快楽天は初掲載とのことだ。
トビウオ
トビウオはトビウオ科(Exocoetidae)の魚全般を指し、日本で食用にされているものでも何種類かある。基本は熱帯の生き物で日本のほか中国や東南アジアで食べられている。日本では「あご」とも呼ばれ、ダシ取りとしても愛されている。海水温が上昇する6月頃から日本沿海に北上し、10月くらいに再び南下する夏の魚である。ご存知の通りトビウオは飛ぶ。こちらで説明した通り、助走無しで飛べるのは鳥・昆虫そしてコウモリだけだが、トビウオは助走をつけて海面から飛び上がると、巨大化した胸ビレで水面を滑空する。海面から最大6メートルの高さを、時速70キロのスピードで飛行する。現代の航空機のモデルは、空を翼で羽ばたく鳥や昆虫ではなく、ヒレを真っ直ぐ伸ばして滑空するトビウオだとも言われているのだ。
ちなみに世界で一番トビウオを愛しているのはカリブ海の小国バルバドスで、伝統料理に用いられるだけでなく1ドル硬貨にトビウオが描かれている。

コロナ禍をこじ開けて
本作の舞台はおそらく2020年の夏、コロナ禍でレジャー移動が極端に自粛された頃の話だ。東京オリンピックイヤーでもあり、マスクを付けて距離を取るという弥縫策で各種スポーツがだましだまし行われていた。学校の部活も大きな打撃を受けたわけだが、練習すらままならないのが飛沫を出さないわけにいかない吹奏楽部と、本作の水泳部だ。水中でマスクも手指の消毒も不可能かつ無意味であり、互いに距離を取るにもプールは狭すぎる。本作では水さえも抜かれてしまった。本作ヒロインの小鳶先輩(JK3)は水泳部最後の晴れ舞台である夏の大会への出場はおろか開催さえされなかった。部として何もできないまま迎えた9月8日月曜日(なおコロナ禍期間で9月8日が月曜日だったことは無い。直近で月曜日は2014年・2025年)。小鳶先輩は後輩の藪坂くんに「今からサボって海行くぞ!!」と強引な誘いを入れた。
海閉じ
海水浴客の受け入れをスタートする海開きの反対語として「海閉じ」という用語があるにはあるらしい。海開きは安全面や観光面を含めて入念に決定・宣伝される。暑さとともに成長したクラゲが一般にお盆を過ぎた8月後半から目立つようになり、うかつに刺されるとヒドい目に遭う。観光シーズンの終わりと共に徐々に客足が遠のく一方で台風がやって来る。閉めるタイミングは概ね決まっており、気温や採算性などの観点で延長することもあるが大体はひっそりと撤収する。山もシーズン外の登山による遭難が物議を醸しているが、誰の所有物でも無い海は山以上に立ち入り規制する根拠がない(砂浜を立ち入り禁止とすることは出来るが却って危ない)。見張り員不在による危険性を訴えるしかなく、誰もいない海に入ることを止めることは出来ない。コロナ禍の海はまさにこの問題が露見し、密集を絶対に避けたい当局はシーズン通しての海開きの自粛を要請した。しかし上記の通り外出禁止の鬱憤を大自然で晴らしたいという海水浴客に対して、「営業はしていないが安全のための見張り員は立てざるを得ない」と対応に苦慮するという光景が散見された。そんな喧噪も尻切れた9月の海に小鳶と藪坂は飛び込む。
藪坂だったんだ!!
二人とも阿吽の呼吸なのか、「制服の下に水着」といういでたちで制服のまま海に駆け出す。3ページ、小鳶先輩の脚に絡みつく水しぶきが艶めかしい。「泳ぐぞ!」その一言で二人の夏は始まる。海というのは浮力が強いので身体は浮くのだが、波に揺られながらの水泳はいささか酔う。私は一時間も持たないが二人の若さの持て余しは夕方まで続いた。5ページ、「なんで僕を呼んだんですか」という藪坂の問いに、まとめると「寂しいから」「藪坂は来てくれると思ったから」とバツの悪そうな顔で答えた。純愛への導線。これだけに飽き足らず、小鳶先輩は左足親指を負傷して藪坂に更衣室までおんぶしてもらう。藪坂はさらに踏み込む「別に泳ぐだけが楽しみじゃ無いでしょ」=夏が終わったらもう誘ってくれないんですか?という意味だろうか。この問いの答えは全文引用する。
小さい頃通ってたスイミングスクールにさ アイスの自販機が置いてあったの お母さんが それ用のお小遣いをくれて 帰りのバスでそれを食べながら友達と話すのが好きだった だから続けてたの それだけ」「だから 本当に泳ぐのが好きかわかんない どうせもう引退するし 受験あるし こんなことなら去年 個人2位のまま辞めるべきだったな
藪坂の意図に即した回答だった。泳げないことより寂しいことが嫌だ、と。それに対して藪坂からさらにエモい想い出が飛び出す。「俺も好きでしたよそのアイス 同じスクールだったし」。仲間がいて賑やかで楽しかったスイミングライフ。コロナ禍によって予定よりも早く孤独に追い込まれた小鳶は、自分を慕っているであろう後輩を自分勝手に呼び出してしまったことにバツの悪そうな顔をしていた。しかしその憧憬に藪坂も入っていたことを小鳶は知った。藪坂はそんな当時から小鳶に憧れていた。そんな藪坂を自分の仲間に入れようと小鳶はアイスを奢っていたこと、藪坂はカッコつけに背伸びして「レーズンバタークランチ」を頼んだこと。それを二人ともうっすら覚えていたことが判明する。大きくなった後輩の背中に小鳶先輩の愛しさが溢れていた。
センサーライトプレイ
9ページ、本作圧巻の「センサーライトプレイ」が始まる。「そこで動く人がいるときにだけ光る照明」は、利用者の利便性だけでなく、闇に紛れて良からぬ事をする人への犯罪抑止、そしてもちろん経済性と三拍子優れている。公共施設のトイレなどに打って付けといえる。唯一の難点は、利用者がじっとしていると勝手に照明が落ちてしまうことで、トイレであろうが適度に動くことが求められるのだ。傷口をシャワーで洗い流した小鳶先輩は女子では無く男子更衣室に入り藪坂のカバンから絆創膏を取り出す。そして藪坂を呼びつけ、「いーから貼れ バカ」と足を出す。女性の足は誰にもおいそれと晒すものでは無い。まして水着の下はもう素肌である。エロシチュにたまらなくなったのは小鳶先輩だった。藪坂の唇を奪い、勃起したチンコに小鳶は股を開いた。15ページ、いよいよ挿入というところで、小鳶先輩の冒険心と破滅願望が二人を外から見えるシャワーへと誘った。シャワーの壁に手を突き尻を出す小鳶の姿がセンサーライトで照らされる。腰だけではなく藪坂の両手が小鳶のおっぱいをひん剥く。20ページ、「先輩 動かないで」と藪坂が囁く。人影だ。静まった二人を照らす明かりが消える。セックスに限らず男性の射精にはピストン運動という動作を伴う。おそらく女性のオーガズムにも必要だと思われている。一方でセックスというのはどこまでもプライベートであり、他人に見られるリスクもまた情動を強く揺さぶるスパイスでもある。繋がっているところにスポットライトを当てないために息を潜めて「動かない」という性行為。愛する人を守り愛される生物の原初を思わせる交合に「変なイキかたしちゃっただろ」という小鳶先輩の表現はふさわしい。そしてまた二人だけのライトを浴びながらショーは続く。
17の愛
本作に登場する「スイミングスクールの帰りに買うアイス」として恐らく皆様の頭に思い描かれるのはグリコ「セブンティーンアイス」だろう。下のような自動販売機で売られているアイスとして日本中で知らぬものは居ないほど有名である。同じく店売りアイスとして有名な「サーティーワン」と同様に、17種類のアイスを常時販売している。


フレーバーは地域差などもあり、本作で登場した「レーズンバタークランチ」も現役だ。本稿にあたり辺りを探してみたのだがこの味には出会えなかった。こちらを含めた「Special selection」と書いてあるシリーズはレギュラー品より一段高い値段がついている。先輩に奢ってもらうときは気をつけたい。

セブンティーンアイスの「17」には、「17歳の学生向け」という意味が込められている(念のため、サーティーワンは31歳向けでは無く、「毎日違う味を1ヶ月楽しめる」という意味がある)。ここでいう17歳は意外にも17歳教的な「若さ」ではなく、「ガキの食べ物であるアイスを高校生でも楽しめるように」という「スタイリッシュさ」を求めた結果らしい。そう、本作の二人は高校三年と二年であり、誕生日次第ではどちらもセブンティーンである。事後、藪坂がセブンティーンアイスを小鳶先輩に奢り返す。少々夏が遠くなってきた10月、海が、水着が、スポットライトが、そしてアイスが人生で一番似合う二人による、開くことが無かったとある晩夏の煌めきに癒やされる作品だった。
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