copyright 2025 コアマガジン 小箱みみず
タイトル | 八月一日と葉月 |
作者 | 小箱みみず |
掲載誌 | HOTMILK 2025.08 |
ページ数 | 61 |
ヒロイン | 葉月さよ |
竿役 | 八月一日夏樹 |
発射数 | 3 |
公式タグ | パイパン / タイツ・パンスト / 処女 / 制服 / 同級生・同僚 / 学生 / 尻フェチ / 巨乳 / 恋愛 / 淫乱 / 童貞 / 足コキ |
修正 | モザイク修正 |
本日はHOTMILKから、小箱みみず先生の作品をご紹介したい。こちらも前回ご紹介した昼寝先生「柊先輩くんくんくんくん」を超える61ページの超大作だ。
過去作レビュー: かわいいは、ざんこく [小箱みみず] 黒姫とねずみ (HOTMILK 2025.02)
サマー・テープ
以前ご紹介した「黒姫とねずみ」も57ページの大作だった。エロシーンに重厚爆撃をする昼寝先生の60ページと対照的に、小箱みみず先生の織りなす男女の関係はとてもセンチメンタルで重層だ。本作のような作品を読み解いて解説を施すのが私の至福の時なのだが、本作は作中にてヒロインの口から十二分な心象描写がなされている。男性向けエロ漫画としては異質とさえ言える。さらにpixiv fanboxに先生ご本人から詳細な解説までなされている。一方でこれまた先生ご本人から、感想発信用のハッシュタグ#小箱みみず作品感想が用意されている。当ブログで取り上げた作品で、作者様が感想を求められているときは敬意を以てリンクをポストさせて頂くのだが、正直作品の良さが伝わっていないのではと思う駄文をブン投げることに躊躇することはよくある。ここまでご用意頂いているのなら応えないわけにはいかないと、気合いを入れて本稿を用意させて頂いた。エロ漫画の感想に専用アカウントを用意している方は少ないのかもしれない(ちなみに私は@camome_senseiが本アカである)が、皆々様も奮って感想を投稿しようではないか。
上記の通り本作にはpixiv fanboxにて作者ご自身の解説が既にある。そして有料記事もご用意されている。私は両方拝読させて頂いた。以下レビューでは有料記事の内容には触れないようにしている。
当ブログでは直接的間接的にインスピレーションを受けた私の独断でチューンした曲を貼らせて頂いている。エロ漫画で満たせないの寂しさを埋めるには聴覚刺激が必要だと感じているからでもある。なんと本作には小箱みみず先生ご自身が選曲したテーマミュージックが存在する。ぜひ併せてご堪能頂きたい。
高等学校卒業程度認定試験
本作竿役の八月一日夏樹くんは以降説明する事情により不登校に陥ってしまう。事後、彼は一念発起して大学受験を目指す。そのために必要になるのが「高等学校卒業程度認定試験」略して「高認」である。2005年に「大学入学資格検定(大検)」から移行し今年で20周年となる。高認合格者は大学入試はもちろんのこと就職などの面でも高校卒業と同等に扱うこととなっている。科目は英国数理と地歴・公共(両方必須)である。高認はれっきとした国家試験なのだが、ぶっちゃけとにかくユルい。高校では必修である「家庭科(大検時代は必須)」「保健体育」が課されないうえに、合格ラインは5割程度とかなり低めに設定されている。年2回受験が可能(8月・11月)であり、16歳以上であればほぼ誰でも受験が可能だ。そしてとにかく免除規定が多い。「高校で単位を取っている」「他の検定資格を持っている(歴史能力検定など)」「過去の試験で科目合格している」ものについては基本免除される。つまり積み上げが可能であり、今回は英国、次回は理数というように部分的に攻略して最終的に全科目そろえば「合格」となる。日本全国すべての高校で単位認定を厳しくやっているとは思えないので、ユルい高校に行けば取れていたであろう高卒資格を、高認一発試験だけ厳しくするのは不公平なのだろう。複数回挑戦可能な点がとにかく低リスクであり、タイパコスパの面で高校進学より高認の方が良いと薦める向きも少なくない。もし現時点で悩んでいる方が居れば私からのアドバイスが一つ。「高校認定資格を取ってしまうと二度と高校に入れない」というのは私はリスクだと思う。
なお夏樹くんは高認を受けるのだが、高校二年まで普通に在籍して単位を取っていた高校生であれば、高認はほとんどの科目が免除となる。ただ仮に全科目免除の場合でも最低一科目はテストの合格基準を満たす必要があるそうだ。余談も余談だが、「中認」(就学義務猶予免除者等の中学校卒業程度認定試験)というのも存在する。中学修学は義務である。これは病気や海外移住などワケありのご家庭向けの制度だ。また高認と似て非なる「高等学校卒業程度認定審査」というものも存在する。これは高校を飛び級して大学に入ったものの何らかの理由で大学を卒業出来なかった人に高卒資格を認定する制度で、さらにレアである。
3割あれば十分な賭け
本作は敢えて説明が時系列に沿っていない。ネタバレではあるが、二人の馴れ初めを時系列で書くとこうなる。
- 夏樹、生徒会長に当選。葉月、生徒会書記になる。
- [3年の夏] 水やりを押しつけられた夏樹が、生徒会以外で初めて葉月と話す
- 葉月が夏樹のカバンにタイツを入れる。生徒会室で夏樹オナる。
- オナバレして夏樹停学処分。
- [6の三ヶ月前] 葉月がコンドームを買った上、夏木の家の前でストーキング開始
- [4から数ヶ月後] 卒業した葉月さんと遭遇。本作のメイン時間軸。
- [1年後] 葉月の大学に後追いで入学する
ヒロインの葉月さよと八月一日夏樹の二人は両片思いだった。夏樹くんは「葉月書記が文字の大きさにもこだわるくらい真面目なところ」が好きだと言っている。葉月さんは色々愛が重いのだが、「『八月一日』という目立つ名字を背負いすぎていて色々我慢しているところ」がいじらしい、というのが発端だったと読む。この名字は北関東に実在する珍名で、「八月一日」は群馬に、同じ読みで「八月朔日」は茨城に多いとされる。「穂積」という名字と同義で、旧暦の8月1日に取れたての稲穂を積んでお備えする神事が由来だそうだ。ちなみに今年の旧暦8月1日は新暦9月22日にあたる。小鳥遊や四月一日と並ぶ「知らないと読めない」系の有名名字であり、良くも悪くも目立ってしまう彼は他人からの目線に気を張って生きてきた。生徒会長にも推され、夏の水やり当番にも当てられた。それでも表面上は弱いところを見せない夏樹に葉月は恋愛以上の屈折した感情を抱いてしまう。結局なぜ葉月さんが「自分の匂い付きタイツを夏樹のカバンに入れる」という行為に勝算を感じたかは明かされない。男子高校生相手に正直ブラやパンツならイチコロであろう。しかし露骨すぎる。万が一「クサい」とでも言われたら自殺しかねない。むしろ葉月さんの羞恥心の限界点が黒タイツだったのかもしれない。ともかく結果これが刺さる。11ページ、一般に男子は竿さえ出せれば行為可能であり、ズボンもパンツも穿いたまま出せる仕様になっている。プレッシャー耐性が災いしたか夏樹くんは下全おろしのうえに乳首へのアクセスまで用意した。フィニッシュではタイツを顔に乗せて左手はシャツの下かもしれない。これは確かに見られたら停学までありそうだ。一方で生徒会室を視姦する葉月さんもまたノーパンM字で乳全開だった。葉月さんが高校卒業出来たのも紙一重の差だったとも言える。
Tights
男のフェチは青年期以前の刷り込むことが可能だという論文がある。この実験では、エロ画像と小銭の入った瓶を交互に映す画面を見せることで、エロくない瓶に反応させることに成功したという。この例は一時的なものだが、ある程度エロと関連のある物品であれば永続的にフェチを強化出来るという。本作を読んで私は二つのことを感じた。夏樹くんはもともとタイツフェチではなく、葉月の行為によって発現したであろう事。そして「タイツの手触りは気持ちいいもんな」である。
タイツには定義がある。歴史的には男性の乗馬用に穿くもので、タイツ(=張り付く)とストッキング(=下半身を覆うもの)両方の呼び名があった。1939年にナイロンが発明された以降は、女性向けに大量生産され、両足分が繋がっていないものをストッキング、繋がっているものをパンストないしタイツと呼ぶようになる。この境界線を決めるのが皆さんご存じ「デニール」だ。デニールは繊維全般に使う用語であり、「糸9000メートルの重さ(g)」で定義される。つまり1デニール = 約0.11mg/mとなる。糸の色によらず日本では25から30デニール、海外では40デニール以上の糸で作られたものをタイツと呼ぶ(メーカーにより異なる)。おしゃれ以外のファクターとして気温が重要だ。80デニール以上は防寒目的といえる。夏場は30デニール以下が望ましい。本作は名前からして夏の要素から冒頭入っているのだが、さすがに葉月さんは生足である。タイツオナのエピソードが何月の話かは明言がないが、両者それなりに汗をかいているため、それこそ残暑のまだ残る旧暦八月一日くらいに若干やせ我慢して穿いたタイツなのかもしれない。

なら縛られて、注がれて
非常に長大な本作のストーリー・エロについて感想を述べたい。まずエロから。小箱みみず先生は前作「黒姫とねずみ」でも披露した足コキプレイの造詣が深い。風俗全般でも行える手コキと違い、足コキにはテクニック以上に、女性に組み敷かれているという「ストーリー性」が必要になる。16ページのような「タイツ顔踏み」がまさにそれにあたる。男が女を踏んでもあまり美しくならない。磨き上げ補正された女性の脚線美を用いるところにこそ美学がある。同時に足裏は掌や脇なみにアポクリン腺が発達している獣臭い部位であり、誰も彼もに見せられるものではない。自分でも見えない己の恥部を晒し出すことへの周知と信頼がそこにある。20ページ、本作で最も淫靡だと思われる、「竿役が自虐しながらヒロインの足を顔にこすりつける」シーンがその極致だ。一方で22ページからの本格的な足コキ。これは男性向けエロ漫画として必要なシーンではあるが、実際の動きとしては難しい。少なくとも自分には出来る気がしない。脚はこういう動きをするように出来ていないのだ。現実的には19ページの「床オナ」式の擦り方である程度仕上げた上で、22ページのように女性側が上体を後ろに倒した体位でフィニッシュに向けて擦り上げるのが精一杯だろう。「動画観て練習してきたの…」というセリフの通り、24ページのように顔を見ながらの足コキはかなりトレーニングしたのだろう。発射した後すこし葉月さんがキョドるのが可愛い。36ページからいよいよ本番シーン。焦りを隠せない夏樹に、「ほづみくんが処女膜破って♥」と若干命令系で挑発するところが良い。40ページ、「お」「か」「し」「て」も同様だ。SはサービスのSというように、甲斐甲斐しくもズタズタに攻める葉月さんのキャラはよく練り込まれている。51ページ、一発キメた夏樹くんのモノローグ「自分の精液なのに 愛液と言葉が混ざって さよちゃんの味がする」。ほぼコンドームの味だと思うが、竿役にそう言わせる事への説得力が詰まっている。エロ漫画初心者向けとは言わないが、玄人好みの仕上がりである。
新たな鎖で縛って上書きしちゃいな
最後に本作のストーリーについて。冒頭に書いたとおり本作ヒロインの葉月さんはほぼ全てセリフで言ってしまっているので、時系列さえ理解出来れば分かりやすい。竿役の目線で追ってみよう。1ページ目。葉月さん側が何でここに居たかはともかく、夏樹から見て偶然出会った葉月の生足に顔を赤らめる。男にとって下心と純愛は表裏一体だ。「もっと話したい」ので「待っててくれる?」と言ったところで暗転する。流石にこの流れで中退したわけではないので、昼飯は一緒に食べて話したのだろう。この後の流れを考えるとボタンの掛け違え、と言い切るには少し重い導入だ。
ここで時間軸が一気に卒業式まで飛ぶ。秋冬を通り越して春が見えている。この間の事件がいつ起きたかは定かではない。しかし高校三年の秋以降ということであれば、ぶっちゃけ「見ちゃった方」もあと半年、見なかったことにする方が自然だろう。タイツ盗みの顛末に至ってはそもそも彼に罪が無い。あくまで夏樹自身のメンタルの問題で不登校に陥った。この流れで5ページの再会を現実的にどう受け止めたのか、部屋に入れるまでにどういう会話があったのかは興味深い。この日がハロワの面談という「行きたくない用事」があったのも大きい。事情を知る人が散らばる「卒業」という釈放の日だったこともあったろう。結果として夏樹にとってのターニングポイントとしか言いようのない日になった。
本作ヒロイン葉月さんは竿訳のことを冒頭「八月一日くん」と呼んだ。卒業式の再会以降は一カ所を除いて「ほづみくん」と平仮名表記している。彼がここまで追い詰められてしまったのは、目立つ「八月一日」という名字ゆえだと葉月は考えていた。平仮名で書けば違和感のない名字だ。発声として区別出来るかはともかく、それが葉月の思いやりだった。33ページ、この説明のためもう一度だけ「八月一日くん」と呼ぶ。そして「夏樹くんはただの夏樹くんだよ…」「私は夏樹くんが好き…」以降は名前呼びが混ざる。対して竿役側はずっと彼らしい律儀さで「葉月さん」呼びだった。最後の葉月さん呼びが挿入直後の42ページ。45ページ、こちらは明確にヒロインの方から「”さよ”って呼んで…」とリクエストがかかり、以降はモノローグ含めてさよ呼びを続ける。
57ページ、再度の「待っててくれる?」。前作の黒姫さんを彷彿とさせる「ひとり追いかけっこ」が始まる。「葉月」は8月の異称であり、今の暦でもそう呼ばれる。日々進んでゆく葉月の中で、「八月一日」は一日のまま時間が止まっていた。初日に並ぶことしか許されない、気がつけば置いてけぼりにされる八月一日。しかし旧暦の八月一日は実際には9月下旬だ。躓いて迎えたモラトリアム=夏休みを超えた先、秋近し小夜に、二人はもう一度邂逅を果たす。エロ漫画の事後としては深くて長い、感動しかそこにないラブストーリーだ。
八月一日の一週間前
ちなみに59ページ、二回目のサクラが咲いた日には葉月さんはちゃんと黒タイツを穿いてきている。ラスページはそんなに暑く無さそうな装いだが、どうもロングスカートの下は生足くさい。これは少々いただけない。夏樹くんが生足に目覚めたという解釈も出来るが、私は「タイツは既に脱いでおり、このあとこっそり夏木のカバンに入れる」というバカップルなオチだと読み取った。本作は小箱みみず先生1st単行本「可愛いなら愛して」に収録予定である。7月25日発売。「八月一日の一週間前」と覚えておこう!
本作の単話販売はこちら!!(単行本にも収録予定)

440円
小箱みみず先生の作品はこちら!!

1,480円

440円
コメント