酒は止そう、夢になるとイけねぇ [小野未練] ふぇいたる・ふぁうんど・ふってーじ (快楽天 2025.12)

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copyright 2025 ワニマガジン 小野未練

タイトルふぇいたる・ふぁうんど・ふってーじ
作者小野未練
掲載誌快楽天 2025.12
ページ数22
ヒロイン江永
竿役鵜飼
発射数1
公式タグショートカット / JD / 巨乳 / 後輩・部下 / 恋愛 / 撮影・配信 / 淫乱 / 羞恥 / 金髪・茶髪 / 陰毛
修正白抜き修正

やっとここまで辿り着いた感が強い。やはり触れたい快楽天から、小野未練先生の作品をご紹介したい。

Fatal found footage

本作タイトルを英綴りに直すとFatal found footage (以下FFF)となる。Fatalは「致命的」という意味だ。Found footageは直訳すると「見つけた足跡」となる。一方でfootageには「未編集の映像素材」という意味がある。その昔動画編集はフィルムの切り貼りで行っており、フィルムをフィート単位で数えていたことが由来らしい。Found footageで「既存の記録映像を流用して別の映像作品を作る」、絵でいうところのコラージュのような製作技法の呼び名となっている。さらに派生して「第三者が遺した映像を視聴者と追体験する形式」の映画ジャンルを指している。遭遇している問題がその場で起きているわけでは無い(起きたかどうかも分からない)という点でホラーと相性が良く、1999年公開「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」がこのスタイルの代表作とされる。一方で「寝取られビデオレター」形式のエロ作品もこの系譜と見なせる(Found footageは「無編集」が条件らしいが、間男がノーカットで出さないのは興ざめの感がある)。本作はホラーでもNTRでもない、純愛ビデオレター作品である。

次は、今池、今池。東山線ご利用の方は、お乗り換えです

本作の舞台を整理したい。二人は同じ大学の先輩後輩であり、ヒロイン江永から見て竿役の鵜飼がおそらく一つ上である。二人の家(下宿先?)はこの大学と繁華街の間にあり、地下鉄沿線で「大学 – 江永宅 – 鵜飼宅 – 繁華街」という並びになっているそうだ。これだけでは何とも言えないが、江永さん宅の最寄りが「今池駅」ということから、舞台は名古屋市営地下鉄沿線とわかる。今池駅には2線乗り入れているのだが、11ページ右下コマにおそらく「徳重行き」と書いてあるので桜通線(下図赤線)である。

並び順で大学の反対側にある「繁華街」となるのは、久屋大通・名駅あたりならどこでも良さそうだ。そして大学は特徴的な三角屋根から愛知大学車道キャンパスかと思ったが間尺が合わない。私の結論は名古屋市立大学の滝子(山の畑)キャンパス1・2号館だ。最寄りは桜通線桜山駅である。そうすると鵜飼先輩宅は高岳たかおかか車道ということになろうか。比較的狭い範囲内での物語と言える。桜通線の今池付近となると大学終わり時間帯に「誰もいない」という事は考えにくいが、ヒロイン江永さんの痴態を第三者に見られるとなると話が違ってくるので仕方ないところだ。あと結局、この想定だと11ページ(大学から先輩宅向き)は徳重行きではなく中村区役所太閤通行きになるはずだということだけ付記しておく。

夢でオチたら

本作はヒロイン江永さんが酔っ払って鵜飼先輩の家に送られ狼する所から始まる。翌朝、記憶の無い彼女は鵜飼先輩とマッパで寝ていた。この展開で思い起こされるのは小野未練先生の初商業エロ作品「夢でオチたら」(ゼロス#108)およびその元ネタである落語「芝浜」である。以下この3作品のネタバレを含めるので楽しみたい方は先にお読み、ないしお聞き頂きたい。「芝浜」は三代目桂三木助師匠の十八番で、名演を下に貼らせて頂いた。

項目芝浜夢でオチたらFFF
主人公魚屋の勝浜浦さん江永さん
夜の回想十両入った財布を拾い大宴会芝との濃厚なセックス覚えてない
朝の認識財布など拾ってないと聞かされるエロい夢を見た鵜飼先輩と朝チュン
実際の夜財布は拾った特に何もなしせんぱいだいしゅき
その後の主人公禁酒し懸命に働く芝を意識しオナ禁平静を装う
さらにその後財を成した後、改心のため女房が財布の事を隠したと聞かされるより芝を意識するハメになり実際にHする忘れていた夜の痴態を見せられ再度ヤられる
サゲ「酒は止そう、夢になるといけねぇ」芝をシバく「すんませんした…」

「芝浜」というのは、実際にあって覚えていたことを女房に「酒に酔って夢でも見たのか」と無かったこと扱いされる話である。対して「夢でオチたら」の浜浦さんは本当にただのエロい夢を見ただけのところ、それが実現するという話である。登場人物名から芝浜が下敷きなのは間違いないと思うが、タイトル通り夢オチの話だ。一方で「FFF」は酒に酔ってイイ事があったところまでむしろ芝浜に近い。違いは「朝、本人がその事を覚えていない」点である。覚えていないのだから江永さん本人発信では何も起きない。なので鵜飼先輩による「ふぁうんどふってーじ」から物語が動き出した。

イヤホンで 記憶の糸をたぐり寄せろ

「夢でオチたら」と同じく、大学生の男女がカラんでいればエロいことの一つもあるだろうという認識がヒロインにはあった。浜浦さんはあくまで「そう思った」発進なのに対して、江永さんは起きたであろう事象に対する自己合理化である。鵜飼先輩が寝ているのをいいことにいそいそと服を着て自宅に戻りシャワーを浴びる。その日の大学、芝くんは嗅覚で浜浦さんの朝シャワーに気付いた。鵜飼先輩も気付いたかもしれないが口にはしていない。何も覚えていない江永さんも、全てを覚えている鵜飼先輩も、昨晩の狂乱を一旦伏せるという点で暗黙の合意がなされた。しかし認識は違った。全ては泡沫の夢として風化させるつもりの江永さんに対し、鵜飼先輩は江永の名誉のためにTPOを選んだに過ぎなかった。帰りの地下鉄で周囲に誰も居ないことを確認した上で鵜飼先輩は切り出した。

篝火のごとく二人を 照らすエロ自撮り

本作の面白さは、江永自らが鵜飼先輩にぐちゃぐちゃに犯される記録、ビデオレターの作成を求めたことだ。こういうのは鵜飼の元カノ今カノに対する示威行為もしくはマーキングが目的だ。だからこそ鵜飼が非モテであることを本作は強調している。他の女に見せることを被写体の江永は望んでいない。では何のために?作中では語られていないが、答えは一つしかない。へべれけの江永さんは、酔いが醒めた自分が絶対にヘタれることを重々知っていた。実際そうしようとした。そんな自分の退路を自ら絶つ、セキニン取れという未来の自分へのメッセージだった。何なら「本人に見せろ」とまで事後の江永は鵜飼に伝えていたのかもしれない。想像もしない過去の自分からの不意打ちに、強いメッセージに江永は応えた。12ページ、名古屋地下鉄はドアが閉まる直前にブザーが三回鳴る。名古屋に住む人の想い出に刻まれているであろう寂しい音が今池駅に今夜もこだまする。

酒は止そう、夢になるとイけねぇ

鵜飼先輩宅で連夜の二回戦。酒に逃げようとする江永を鵜飼先輩は許さない。器用に下だけ脱ぎ寝バックで挿入。「はは…すげえすんなりだ 昨日より」。寝バックはどうしても男側は手を着く必要がある。鵜飼先輩はそんなに床上手ではなさそうなので、酔っ払いを相手に片手で動画撮影しながらのプレイはさぞ大変だったろう。ここから江永さんの自省に満ちたモノローグが続く。恋慕の想い、我慢、昨晩の醜態、すべてをチンコでかき混ぜられた彼女は消え入るような声で「あたしのこと きらいにならないで…」と卑屈な告白をする。先輩もまた抜けたチンコを握り直しつつ江永への感謝と好意で応えた。

さて芝浜である。主人公の勝は酒癖が悪いことを自覚しており、「財布を拾った」という事実さえも酒のせいだと猛省し禁酒に至った。商売の魚屋に精を出し財を築いたちょうど三年後に、女房は持ち主不明で下げ渡された財布と酒を差し出し、嘘でも真っ当に生きて欲しかった真意と、それはそれとして財布を隠して騙したことを離縁覚悟で詫びた。勝は得心し、女房に改めて感謝の意を伝える。めでたさに酒杯を手にした勝だったが「やはり酒は止そう、夢になるといけねぇ」というサゲで締まる。「夢でオチたら」の浜浦さんは単にエロいだけで飲酒の描写は無い。本作こそ明確に酒の上のアヤマチでこうなっているのだが、構図が逆である。勝が財布を拾ったことは酒を飲んだ事とは直接関係が無い。一方で本作は酒があってこそ二人は付き合うことが出来た。にもかかわらず、まあ当然ではあるが、「もう酒は止そう」と言ったのは鵜飼先輩の方だった。想い人と付き合えて調子に乗りかけた江永さんが全裸で深々と頭を下げて「すんませんした…」というところでオチとなる。最後のエロシーン自体の尺は短めなのだが、冒頭から漂う淫靡な雰囲気、突然のセルフfound footageによる動揺から繋がる臨場感が下半身に刺さる。えーすけガールズ「言語化出来ない快感に飲まれる」のと対照的に小野未練ガールズは「わかった上でどうにもならない」もどかしさを性感に転化するのが強い。古典落語のように余韻のある名作である。

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