copyright 2024 ワニマガジン 小野未練
タイトル | ピアノどろぼう |
作者 | 小野未練 |
掲載誌 | 快楽天 2025.04 |
ページ数 | 24 |
ヒロイン | 垂水美羽 |
竿役 | 松永広音 |
発射数 | 2 |
公式タグ | 同級生・同僚 / 学生 / 巨乳 / 手コキ / 淫乱 / 陰毛 |
修正 | 白抜き修正 |
本日は引き続き快楽天から、小野未練先生の作品をご紹介したい。「感動ポルノ」という言葉は、他人の悲劇による情動を売り物にするという下卑た行為を指す批判的な用語だ。比喩としての意図は重々承知だが、いささかポルノという創作物に対しての敬意が無い点は頂けない。日々ポルノから感動を受け取っている一人として、本作を含めた小野未練先生の作品こそ正当な意味での「感動ポルノ」と呼び讃えたい。
boy meets girl in rainwater
本作は「汽水域の二匹は」と同様に、傷を抱えた二人がそれと知らず邂逅するところから始まる。雨の降る古びた団地の一室という湿度の高さも似ている。ヒロインの垂水美羽も、竿役の松永広音も、どことなく物憂げな湿っぽい目線の持ち主だ。同じ団地に住む美羽が、あまり面識のない同級生の広音の部屋に押しかけて来たところから始まる。2ページ目から「手マン」「アイジン」という剣呑なワードが出てくるので先に二人の経緯を整理したい。なお本作は両者フルネームが出ているのだが、ヒロインは「たるんでない」という理由で苗字呼びを嫌がっておられるので、以後両者とも名前呼びさせていただく。広音は元々いわゆる金持ちの妾の子で、幼少期は裕福かつ愛に満ちた生活をしていた。特技のピアノもその名残りである。しかし関係がバレたところから関係が破綻したらしい。愛人でなくなった母親は生活に窮し、夜の商売をしながら息子と団地暮らしを余儀なくされている。いっぽう美羽はおそらくJC時代に、上の階に住んでいる「雄太くん」という家庭教師と肉体関係を結んでいた。いつからいつまでかは不明だが、雄太に対する美羽の感情は少なくとも現時点では冷ややかだ。こちらも関係が明るみになり雄太は街を追われた。そして早すぎる交合により身体の芯に火をつけられた美羽だけが残された。身勝手な大人に与えられ奪われた点は同じだが、不倫による爛れた性関係はあくまで母親のものであり、周囲の雑音と裏腹に広音は全く接点が無かった。対する美羽は周囲もおそらく両親も正確には知らない秘めた肉体関係を、無音のまま独りで抱える羽目になったのだ。親近感をもって近づいた美羽はその秘めた情念をチラつかせてみたが、広音はむしろ性的にナイーブだった。ナイーブさゆえに広音は美羽のヘルプサインを察知し、秘めていた自分の想いを全て晒す。美羽は広音の抱えるものを理解した上で、8ページ「やっぱさあ、手マンしてくれない?」と返したのだった。
ピアノとクレープ弁当
本作タイトルにもあるピアノは、鍵盤独特の美しさとモノクロ漫画映りの良さ、静画での演奏シーンの伝わりやすさで舞台装置として多用される。吹奏楽器、ありていに言うと「尺八」の方がエロ漫画寄りと言えるはずだが演奏シーンを納得感を持って描くのは並大抵ではない。そしてとにかくピアノが弾ける男子は女性ウケがいい。ピアノを弾ける状態で置いてある家はもはや少数派だが、本作でも出てくる「都庁ピアノ」のようにパブリックスペースでカジュアルに(しかもタダで)カノジョに披露できる機会が格段に増えている。他の楽器はこうはいかない。学校でもだいたいピアノは弾き放題で、本作のようにピアノ要員は活躍の場がある。

ピアノを略さずに言うと「ピアノフォルテ(pianoforte)」で、音楽用語でいう「弱く(piano)」「強く(forte)」を合わせたものである。祖先である鍵盤楽器チェンバロに対して、打鍵によって音の強弱をつけられるところがピアノの売りだからだ。その意味でピアニストの指使いがウマいという美羽の仮説は当たっている。13ページ、美羽から「クレープ弁当」ことクレッシェンド(crescendo)という演奏指示が出る。「だんだん強く」という意味で、ピアノの譜面では頻出といえる。別に人それぞれでいいのだが、各種おもちゃの仕様などから総合的に勘案するとイク直前の指示は「だんだん速く」の方が妥当ではなかろうか。音楽用語でいうと「アッチェレランド(accelerando)」「ストリンジェンド(stringendo)」となる。この語に聞き覚えのある方へ余談だが、「ストレッタ(stretta)」は「緊迫して(速く)」、「アラルガンド(allargando)」は「だんだん強く遅く」という指示記号である。
聴いてたよ きこえない
ブログ書きとして日本語の同訓異字にはそれなりに気を遣っている。本作はピアノがメインアイテムなのだが、小野未練先生は本作で「聞く」「聴く」「きく」を使い分けておられる。それぞれ5回、2回、2回登場する。「聞く」は普通に会話を聞いたとき。「聴く」は7ページ、母親に自分のピアノの演奏を「聴きに来てほしかったな」と呟いた広音、そして8ページ、涙目の美羽さんがわざわざ傍点までつけて「ふざけてない 聴いてたよ」と訴えた時だ。広音が伝えたい自分の親にさえ隠していた想いを届けるという行為に、そしてそれが美羽の耳だけでなく心の奥にしっかりと届いたことを明確に伝える言葉として選ばれている。ひらがなの「きく」は4ページ、「松永くんのピアノきかせてあげてくれない?」というシーン。本来は「聴く」なのだろうが、この時点で美羽はまだ音色に秘められた思いまで受け取るか決めかねていたと味わいたい。最後は14ページ、「しんぞうのおとだけがきこえる」というモノローグだ。上記の通り、美羽は雄太を失って以降ずっと誰にも言えず無音を抱えて生きて来た。本作ではピアノの演奏音は文字として描かれていない。その代わりにエロシーンでは水音や吐息などの擬音が背景を埋め尽くすほどうるさい。実際に鳴っている音はピアノより、雨音よりも微かなものだろう。それでも二人の交わる音が何より美羽の乾いた心を満たしてゆく。しかしそれら淫靡な擬音すら上書きしてゆく。「つらいとか、さびしいとか、かなしいとか、…ぜんぶ、どうでもよくなる」傷を持つ同級生と共鳴する胸の高鳴りしかきこえないと彼女は告げたのだ。
あの人の涙も思い出せないの
小野未練ガールズは、まず下半身だけ脱ぎ半着衣でおっぱじめる形が多い気がする。美羽さんはどじろー先生の天野結華さんと同じくそばかす属性持ちだ。そばかす(雀卵斑)は思春期に発現し加齢とともに消えていくため、若さの証とともにコンプレックスとして描かれがちである。もちろん妙齢以上の女性はうまく上塗りしているという面もあろう。美羽さんは雄太との逢瀬の時にすでにそばかす属性であり気にしている素振りはない。16ページから17ページの大コマにかけて、もしかしたら雄太くんにも見せていない胸の谷間にも追いそばかすが現れるのだ。一般的にそばかすの原因は紫外線で、肌が白いほど目立ちやすい。胸元をざっくり開ける白人女性にありがちな属性だ。美羽さんはそうとは見えないのだが、オフには意外とあけっぴろげな一面があるのかもしれない。そして性的に一歩リードしているからこその騎乗位で広音にのしかかる。たるみのない豊満な乳房、みっちりとした肉付き、上気した頬を伝う一筋の涙が女体の重量感と躍動感を伝える。腰を打ち付けつつ手を繋ぎ唇をべーっとする。体位変更のないまま一直線に絶頂へ。向かい合う潤んだ瞳。恋愛ではなく同情から始まった行為。未熟な関係を互いに繋ぎ止めようとするところでオチとなる。非常に情報量の多いところから始まり、それをエロシーンに真っすぐに繋げて一気に押し切る。決してインスタントではない重厚感のある、余韻たなびく、上も下も貰い泣きしそうな名作だ。
話半分は酒の席のご愛嬌
では本作タイトル「ピアノどろぼう」とは何だったのか? 作中では寂しさを持て余した美羽が、多感で無垢なピアノ少年の手と身体をずるい大人たちから奪い去りたい、自分のものにしたいという感情として提示されている。そうなのだろう。そこに私はもう一つの結末をご紹介したい。困窮生活に耐えかねた広音は美羽とも上手くいかず、ピアノのことなど忘れスリに手を染める。しかしとある夜に見かけた誰かの高級ピアノに目を奪われ欲しいと思う。しかしもちろんピアノなど盗めるわけがない。広音は誰もいない深夜の町でそのピアノを弾き始める。
あのピアノ盗んで 弾きたいな取って置きの 自慢のクラシックバラード
それを聴いたら 出て行ったあの娘も 落ちぶれちまった僕をきっと見直すはずさ
ピアノ盗んで やり直したいな僕の くそったれの人生
丁度 人目を避けてコソコソ生きるのに 嫌気が差してきたところなんだ
続きはこちらを聴いてもらいたい。
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