copyright 2025 ワニマガジン 小野未練
タイトル | ローン・ウルフのそれから |
作者 | 小野未練 |
掲載誌 | 快楽天 2025.10 |
ページ数 | 22 |
ヒロイン | 野上瑠夏 |
竿役 | 史郎 |
発射数 | 3 |
公式タグ | しつけ / フェラ / 学生 / 巨乳 / 幼なじみ / 陰毛 |
修正 | 白抜き修正 |
9月になった。本日は快楽天からご愛顧している小野未練先生の作品をご紹介したい。9月1日は不登校や自死のきっかけになることが残念ながら多いと聞く。本作は別にそういう話では無いが、夏休みの終わりというところに深く刻まれた作品であることから、ぜひ本日紹介としたい。
いつまでこうやって一緒に居れるんだろう?
本作は冒頭1コマめの時点で挿入済みである。竿役の史郎は、幼馴染の野上瑠夏と夏休みじゅうカラミざかりな日々を送っていた。史郎は物心ついた時から瑠夏のことを憎からず想っていた。しかし彼から見た瑠夏は「一軍の存在」高嶺の華だった。本作で正確に描写されてはいないが、夏のはじめにその瑠夏から押し倒されたことが二人の性生活の幕開けだったらしい。「汽水域の二匹は」の赤瀬川あゆと同じく、瑠夏もまた一軍ならではの中傷に巻き込まれたのだ。赤瀬川の場合は竿役の白波誠吾が赤瀬川のために喧嘩を買って出てボコられた事に対する慰めと感謝でHが始まる。本作の史郎はそもそも中傷の顛末すら知らされておらず、瑠夏の腹いせと当てつけの一方的なHだ。純粋な役得である。史郎は白波誠吾と同じく陰キャを自認しており、瑠夏に問い質すようなことはしなかった。介入したい気持ちはあったが何かが出来る自信もなければ、解決してしまえば今の関係が解消されると信じていた。たまたま夏休みでもあったため何も進展しないことをいい事に、残暑の残る8月の、最後の最後まで史郎は現状維持を貫いた。
別れる為に出会った幼馴染なんていないけど
本作は夏休み明け、「汽水域の二匹は」と真逆の展開に向かう。少なくとも史郎の知らぬ間に1軍のトラブルは解消したらしいと瑠夏から聞かされた。誤解が解け、謝罪もされたので、瑠夏としても水に流そうと言うことになった。一方で瑠夏は史郎を関係ない当てつけに巻き込んだことを謝罪する。しかしもちろん史郎は心境は上の空だった。あるべきものがあるべき所に戻る、おぼろげに史郎は自分が何を失うかを理解した。悲しいことに白波誠吾と違って自分がしゃしゃり出る余地すらなかった。8ページ、そんな史郎の諦念など知ったことかとばかりに彼の手は瑠夏の腕を強く掴んで離そうとしなかった。
でも俺はきっと会わす顔を失うだろう
強く強く手を引かれた瑠夏は「一軍のメンバーに再び話する予定がある」と抵抗する。「あんまふざけてると怒るよ」と牽制もした。それでも無言で引っ張られた瑠夏は、史郎の真意の半分を理解する。11ページ、逆に押し倒された瑠夏が史郎の顔に触れると、そこには涙があった。史郎は問う。「逃げなよ ふりほどいて つきとばして あいつらのところへ」。かつて同じ事をした瑠夏は何も言わず全てを受け入れた。11ページと18ページ、史郎の声にならない渇望が綴られる。
泣いてるところも 苦しいところも 気持ちいいところも 全部全部 全部知ってるのに 知らない顔で笑わないでよ 僕のいないところで 大人になんかならないでよ
好き すき すきだよ だいすきだ るか 僕のものになって おねがいだから 誰のものにもならないでよ
ローン・ウルフ(lone wolf)とは組織に属さず単独で行動する「一匹狼」を指す。狼を含むイヌ科の動物はだいたい群れを作って行動する。群れの大目的は子育てであり、全体が血縁関係で結ばれていることが多い。オスは2歳頃に自分の所属する群れ(パック)の下位オスとなるか、一匹狼となるかを決め、出て行く。そしてメスを捕まえて生殖し新たな群れを形成するのだ。実はこれが「ローン・ウルフのそれから」の狼的な答えである。一匹狼を自認していた史郎が、群れからはぐれたメスとツガイになった。そう思っていた。その瞬間に史郎は新たな群れのアルファオスとなった。しかしメスは群れに戻ろうとした。これは他ならぬ新リーダーへの背信である。史郎は瑠夏を組み伏せ、歯形を残し、20ページ、腹に外出しした。仰向けで腹を見せる行為は犬にとって恭順のしるしである。かくして瑠夏は史郎の「イヌ」になった。
人間やるのって難しいね
21ページ、引き続き史郎の家でチンコにじゃれつく瑠夏に、史郎は「最近ずっと考えてる 取りこぼしたものについて」とこぼした。もう一度「汽水域の二匹へ」に戻ってみたい。こちらはタイトルの通り、淡水と海水、自分の居る場所に馴染めない二人の邂逅だった。部活に励んでいるはずの赤瀬川が毎日橋の下にやってくることを白波は不思議に思っていたが、その関係に満足しており詮索はしなかった。ある日、赤瀬川への中傷を聞いた白波は相手と派手な喧嘩をする。自分のために満身創痍になってまで反抗してくれた赤瀬川は気持ちが溢れて白波にキスをする。この後の赤瀬川のセリフこそ、史郎が「取りこぼしたもの」である。
人間やるのって難しいね 群れになじもうとしても群れから離れても 嫌な思いするんだもん …ね いっそどうぶつになれたら いいと思わない?
史郎は瑠夏を新しい群れのメス犬にしたかったわけではなかった。「瑠夏と一緒にいられたら それだけでよかったはず」だったのだ。人間は犬では無い。嫌な思いをしたとはしても「一軍の仲間である瑠夏」と「史郎にビッチな姿を見せる瑠夏」が両立できたはずだ。赤瀬川は人間関係にまみれて生きる苦しさを理解した上で、白波に「どうぶつになること」を求めた。対して史郎は「人間をやることの難しさ」に背を向け、同意を求めず、瑠夏を動物として扱ってしまった。始めたのは瑠夏ではあったが、瑠夏はもとより当てつけであり、夏休みが明ければ史郎を当然人間として扱うつもりであった。こちらも人間としてのコミュニケーションを放棄して始めた関係だからこそ、史郎が動物扱いを無言で求めてきたときに瑠夏は断れなかった。そして最後の最後まで、二人は人間としての愛を語ることが出来なかった。繰り返すが、狼の群れの存在意義は子作りであり、このまま二人は一見幸せな家庭を築くのかもしれない。狼のままでいられればそれでいいのかもしれないが、その先で別の誰かと、史郎が取りこぼした「人間としての恋愛」を知ってしまったとき、「動物やることの難しさ」を痛感するのかもしれない。
過ごした時間や場所や年齢は関係ない
本作の配信後というか今日9月1日に、本作で述べられているとおり2025年が観測史上最も暑い夏だという事が確定した。毎年のように暑い暑いと文句を言ってはいるが、それでも9月に入るこの瞬間だけは、逢魔が時のような寂しい感覚に襲われる。世界中とは言わないまでも夏の終わりの感覚(それが蝉時雨で無かったとしても)がある人に限って、いつ読んでも、本作の読後には幾ばくかの寂寥感を共有できると信じる。冒頭に書いたとおりこの感覚は人を死に追いやるほど強い。本作は同じヒロインでありながら冒頭の日常系おせっせと、後半の陵辱系交尾の両方が楽しめる点でお得だ。しかし晩夏の夕暮れ、貴男が抜いたその後、どうか気を強く持って寂しさに耐えて欲しい。
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