完全変態 [桃雲] 繭中のあなたへ (快楽天 2025.11)

copyright 2025 ワニマガジン 桃雲

引き続き快楽天から、桃雲先生の作品をご紹介したい。

蚕のひとつ覚え

本作タイトル「繭中」は「けんちゅう」と読む。蚕のサナギである繭まゆを指す。カイコについては加速先生「蚕のひとつ覚え」でご説明したのでそちらも読んで頂きたい。本作は平たく言うと「サナギからの羽化」というカップル二人の成長物語で、カイコ要素は少ない(後述)。私の捉え方では、カイコは繭に価値があり「繭中のあなた」は茹で殺される運命にあるので少し解釈違いになってしまう。ただ読んで頂ければ分かるとおり単純な蛹化とも違う描かれ方をしているので注目して欲しい。

幽霊の氷室さん(仮名)

本作ヒロインは絹川小糸さん2年、生徒会長である。竿役は織井紬1年、生徒会ヒラ役員だ。すぐ分かるが二人は密やかに交際している。生徒会室では文化祭の準備でてんやわんやしていた。私自身生徒会を通算3期経験しているのだが、少なくとも母校では生徒会が文化祭に向けて何かすることは無かった。しかしこの学校含めて漫画では生徒会がやたら精を出す話が多い。絹川さんは2-Bの「お化け屋敷」企画の造作物の安全性を指摘し、同学年の女子生徒と丁々発止していた。彼女は竿役にちょっかいかけない系の美味しい敵役なので仮名を付けたい。最後に幽霊になるカラミと絹つながりで「氷室さん」と以降呼称する。

プレジデント vs ソーイングビー

本作ヒロイン絹川さんは責任感の強い真面目メガネキャラである。彼氏にお茶汲みをさせるものの仕事は一切振らない。対して竿役の織井くんは手芸部に所属しており、コスプレ喫茶の衣装を苦も無く量産していた。私などから見れば会長のデスクワークより、針と糸でコス6着を事もなげに製作している織井くんの方が労られるべき存在に見える。しかし最近の高校生はスマホの進化のお陰で逆にPCが使えないと聞く。生徒会役員としても彼氏としても、絹川会長の仕事は激務にしか見えないのだろう。そんな彼女への心配から手元が疎かになった織井くんは針刺し事故を起こす。会長もまた愛おしい彼氏の怪我にいてもたってもいられず、傷口を口に含んだ。唾液の殺菌効果は決してアテに出来ない上に、他人の血液を口に入れることは事態を悪化させる要因にもなるのでマネしてはいけない。それはそれとして、突然の指フェラに興奮を隠せなかった織井くんと絹川さんは、「また今度手でしてあげるから…それまで我慢してね…つむぎ・・・くん」とエロ漫画ヒロインの顔を覗かせた。

B

6ページ、絹川さんと氷室さんが公衆の面前でマイクバトルを繰り広げているところを織井くんは目撃してしまう。2年B組を代表して「うっせー邪魔すんな」と逆ギレする氷室さんを絹川さんは相手にせず正論で押す。負けた氷室さんは背中越しに「(心配するようなことを言ってるが)自分の立場が大事なだけでしょ」と捨て台詞を残した。そんな放課後、織井くんの懸念通り絹川さんは生徒会室で椅子から崩れ落ちる。いつものように気丈に振る舞おうとした絹川さんは、彼氏と二人きりの空間でその強がりを飲み込むことにした。生徒会室にありがちな長ソファに会長を寝かせて織井くんが膝枕をする。ヒロインを竿役が膝枕するのは珍しい。メガネを外した絹川さんは、同じく会長職を一人こなしていた兄への憧れを吐露した。デレる彼女を抱きかかえ織井くんがキス。ここからペッティングが始まる。上のお口も下のお口も正直に彼の愛撫を求めだした。お返しに絹川さんも、手では無く口で織井くんを絶頂に導いた。

melting snow

これを契機に絹川会長は織井を仕事に巻き込むことができるようになった。この会長の心境変化が影響を与えたのかは分からないが、問題の2-Bの視察に赴いた二人は氷室さんから唐突な謝罪を受けとった。決して目は合わせないモノの、氷室さんもまた状況を認識しクラスの協力を素直に求めることで事態が急速に良い方向へ動いていた。「絶対みんなで文化祭成功させて…いい思い出にしたいから…会長だってそうでしょ」感動の和解の瞬間である。

エロ漫画的には、2－Bのお化け屋敷の進捗が良くなったことで放課後の時間が空いた。18ページ、本番が始まる。

Baptism bonnet

昆虫類は幼虫から成虫に至る間にサナギの状態を経る種とそうでない種に分かれる。カイコを含む蛾はもちろん前者に含まれる。このことを英語でcomplete metamorphosis, 日本語で完全変態と言う。そしてご存じの通り英語でHentaiとはエロ漫画を代表とした2次エロコンテンツを指す。生徒会室という繭中で、織井くんの提案による完全変態がいまマク開ける。

織井くんはとにかく会長に「甘え」を徹底的に経験してもらいたかった。手芸モンスターである彼が辿り着いた結論はまさかの「赤ちゃんプレイ」だ。絹川さんが装着している赤ちゃんが頭に着けてそうなアレは、ボンネットという。Christening BonnetあるいはBaptism bonnetと呼ばれる、キリスト教における洗礼の際に着用するドレスの一部である。本来はキリスト教への信仰を固めた信者が全身をドボンと水(ヨルダン川)に浸すものだが、お宮参りと同じく幼児のうちに頭に水をかけてもらうことで洗礼とする場合に着用する。ここまではカワイイで許される可能性もゼロではないが、若干ドン引きしている絹川さんの口におしゃぶりまで突っ込むのは手芸部の域では説明出来ない。絹川さんはおしゃぶりを咥えたまま、下半身をイジられ始める。20ページ、これが赤ちゃんプレイであることを印象づけたまではいいとして、このままだとヒロインが喋れない。おしゃぶりは2ページで退場して頂き、絹川さんも乳首舐めに移行する。理解力の高い会長は、21ページ、「紬くんの…ミルク… 小糸のここに飲ませてほしい…でちゅ…」とおねだり。快楽天本号の表紙アオリは「おっぱいは飲み物だよ♡」だったのだが、おちんぽも飲み物だった。竿役はカワイイ顔をしてなかなかエグい。このまま中出ししてクライマックスとなる。

ミサンガ

事後、文化祭本番で再び氷室さんが登場する。お化け屋敷の幽霊として、二つの切れた腕輪を二人に差し出すという役回りである。そして手をつないだ二人が「ねえ…また新しいの作ってくれる?」「もちろん 次は絶対切れないのを」「ふふっ それだとミサンガの意味がないじゃない」というセリフでオチとなる。ミサンガ(Miçanga)というのはポルトガル語でビーズの意味であり、下の画像のような女児大好きビーズセットが出てくる。源流はアフリカの装飾品だそうだ。つまり紐部分は本来ミサンガでは無いし、ミサンガが切れるということも無い。

本作で出てきているのは「フレンドシップ・ブレスレット」と呼ばれるモノで、1970年代のアメリカで流行したのが発端らしい。ビーズは必須では無く、ジグザクの編み模様にそれぞれ意味があるとされる(文字を織り込むこともある)。友人が互いに相手に巻き願い事をする。自然に切れたときその願いが叶うという云われが好評を博した。カイコが羽化するときもまた自ら繭の糸を切って飛び立つ。本作オチでの二人の願いが何かは明らかにされていないが、「成長」そして「変態」を強く感じさせる、ニッチな実用性も兼ね備えた桃雲先生らしいハートウォーミングな物語だ。

桃雲先生の作品はこちら!!