残り30cmの詰め方 [楝蛙] おあずけ (快楽天 2023.08)

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copyright 2023 ワニマガジン 楝蛙

タイトル おあずけ
作者 楝蛙
掲載誌 快楽天 2023.08
ページ数 24
ヒロイン 由萌
竿役 タッくん
エロページ位置(割合) 16 – 23 (33.3%)
発射数 2
公式タグ ギャル / 制服 / 学生 / 巨乳 / 幼なじみ / 恋愛 / 金髪・茶髪 / 陰毛
修正 白抜き修正
今回は楝蛙先生のほぼ巻頭作品をご紹介する。今号の巻頭およびカバーガールはホムンクルス先生だが、フルカラー作品のやや小品(それでも9ページ)なので、実質漫画一番手がこちらの作品だ。公開当初からとんでもないイイネ数をたたき出している作品なので紹介しないわけにいかない。
 

陰と陽とが交わる恋模様

本作は、「ヒロインが勉強を教えてもらう」系の作品である。ヒロイン側のバリエーションと比べて、とかく容姿体力が無くても勉学にパラメータを振った竿役が非常に多い。あまりに多いため、あえて男女のロールをひっくり返した藤丸先生の「ギャルから学ぶイイ方法という作品が出来るほどだ。
 
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copyright 2021 ワニマガジン 藤丸
なので本作は悪い意味ではなく、導入が非常にわかりやすい。これで後半のシーンにページを割くことができるわけだ。

残り30cmへのこだわり

私は楝蛙先生の作品の醍醐味は「残り30cmからの男女の距離の詰め方」だと思っている。恋人同士のパーソナルスペースに入ってから、セックスという「ゼロ距離」に至るまでの道のりだ。一般エロ問わず、そして実際の男女関係でも「スマートな誘い方」というのは永遠の課題であり未だ正解は出ていない。非エロのラブコメでは30cmがゴールであり、肉体関係を匂わせたとしても描写されることはない。インスタントセックスが身上のエロ漫画では告白即Hが一般的であり、かつては男側が押し倒し、最近は配慮のため女側が押し倒すことでこの距離感の描写をバイパスすることが多い。男の責任と女の性欲、意思の確認と脱衣、段取りの確認と準備、実際にはいくつものチェックポイントを通り抜けてセックスに至る。楝蛙先生はここの描写を、特にヒロインの逡巡と決意を描き抜いてくれる。本作もそこは欠かせない。

30cmまでの道のり

ヒロインの名前は実は前半では出てこない。同名の方がいらっしゃったら申し訳ないが、由萌(ゆめ)という名前は漢字から読みづらい。後半で明かされるがヒロインの親の娘に対する姿勢には問題があり、名付けからも若干の毒親ぶりがうかがえる。主人公の竿役は最後まで名前が出て来ず、由萌から「タッくん」と呼ばれている(「たっくん」の表記ゆれがある)。竿役が進学校に進んだのと対照的に、由萌はギャルとして高校生活を過ごしていた。由萌は大学進学を考えていたが、金銭的理由で親から拒否された。由萌は奨学生になることを条件に大学受験に臨むと決意し、幼馴染のガリ勉であるタッくんに教えを乞うたというのが前提として描かれている。タッくんと由萌は親同士の付き合いがあり、タッくんは由萌の願いを快く引き受けながらも、「金銭的理由」というところに引っ掛かりを感じていた。タッくん曰く、学費に関しては制度上の救済策がいくつもあるはずで、問題は「親の意向」であると察していた。ガリ勉とギャル、陰と陽の交わり。当然意識するのだが、由萌側が距離をとる。むろん好意がないわけではないが、受験に向けて恋愛にうつつを抜かすのはタッくんに失礼だ、と自らに「おあずけ」を課す。11ページ、まさに「残り30cmの距離感」のまま季節が過ぎゆき、受験を迎える。

奨学生入試って?

奨学生入試、もしくはスカラシップ入試と呼ばれる制度がある。従来の奨学金制度は事実上の借金であり、大学卒業者の収入が将来にわたって保障されていることが前提の制度といえた。就職氷河期以降は制度が立ちいかず、研究者に対する返済免除既定の改悪や「踏み倒し」も含めて社会問題となった。一方で少子化に伴う大学間での学生の囲い込みが経営上の課題ともなり、成績優秀者に対する返済不要な奨学金もしくは学費免除という制度が充実している(後者は「特待制度」とも呼ばれる)。特に乱立著しい私立大学や、就職実績を重視する医療福祉系の大学で奨学生の制度が整備されている。由萌の志望校は「鰐沢大学」らしいのだが、参考までに「駒澤大学を例に取ろう。「駒澤大学全学部統一日程選抜奨学金」という制度があり、出願時にエントリーした上で成績上位200名に入ると返済義務のない年額30万円が支給されるそうだ。この全学部統一日程選抜というのは試験期間が早めに設定されているため、早慶など上位校の滑り止めも含めて競争が激しく、他の選抜方式に比べて難易度が高いそうだ。本作でも由萌はタッくんに先立って合格を決めており、リスクをものともせず狭き門をくぐり抜けたと言えよう。なお全体を通してタッくんは同じ鰐沢大学への進学を志望していない。複数学部に出願しているとの事なので、おそらく東京の私立上位校を目指していたと思われる。タッくんの試験日程は、1日目が教育学部、2日目が文学部とのこと。

30cmの距離が詰まる瞬間

いよいよタッくんの一発目の試験の前日、新宿カイマンホテル805号室に独り前泊していたタッくんの元へ由萌からメッセージが入る。由萌が家を出て東京に向かっているとのこと。由萌はタッくんの受験日程を誰より把握しており、わざわざお邪魔するような性根ではない。ただならぬ空気を察して勉強どころではないタッくん。駆け付けた由萌は受験シーズンとは思えないほどの軽装で、学校に行った身なりの押っ取り刀で出てきた事がうかがえる。ここで上述の「親の意向」という推察が正しいと判明する。由萌は大学進学を学費の問題と考え奨学生を目指したのだが、くそ親父は「高校卒業したら働いて家に金を入れろ」という考えだと由萌の進学を改めて拒否した。憤りを感じつつも困惑するタッくん。14ページ、由萌の「ごめん」から始まる告白タッくんの胸に手を置き、頭を胸に押し付ける。「我慢」という言葉。そして決意したようにタッくんの目を見上げて「好き」。そこからのキス。求める唇。応じる舌。「明日早いんだっけ」「…どうせいつも深夜まで寝付けないから」ここだ。これが「残り30cmの距離の詰め方」の一つの理想形だ。以後、二人は離れもせず、唇を、下半身を、「好き」をぶつけ合う。最初は外に出しており、中出しの描写はない。少なくとも初日はゴムなど用意していなかったはずだが、徹夜でボロ負けした後には恐らくどちらかが用意しただろう。その後も懲りずに3発ヤったらしい。

おうちかえる、その後

後日談。由萌の親はタッくんの親が説得し、色々な条件とともに由萌は進学を許されたとある。この条件は明かされていないが、流れ的にタッくんとの交際自体は伏せられたようだ。しかし由萌が東京まで行って2泊した事から何となく察せられたとの事。好意的に解釈すれば「高学歴のタッくんが卒後に良いところに就職して、夫婦二人で金を稼いで仕送りしろ」という感じだろうか? しかし残念なお知らせがある。タッくんは良い大学に合格したのだが、志望学部は「教育学部」「文学部」、比較的就職には強くない学部と言える。中でも教育学部であれば潰しは利いたかもしれないが、他ならぬくそ親父の難癖による玉突き事故でタッくんは試験前夜に徹夜するハメになり不合格となっている。上位校であれば文学部でも就職率は悪くないが、法経に比べると収入面で少し落ちるのは否めない。そしておそらく由萌に課されたであろう最大の条件は「実家住まい」であろう。受験明けの二人は合格の余韻と付き合ったことで幸せいっぱいだろうが、いざ離れた大学での生活が始まると、甘い生活の「おあずけ」を感じることになるかもしれない。
 

あらすじ

タッくんは、幼馴染でギャルの由萌に勉強を教えている。由萌は大学進学を希望していたが親に拒まれ、奨学生となることを条件として受験に臨んでいた。そんな幼馴染を意識するタッくんだったが、受験までは勉強に専念する。由萌は無事合格を果たし、タッくんも受験のため上京し前泊していた。そこに由萌から「家出した」「今から会いたい」というメッセージが届く。

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恋のち交尾

1,210円

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