copyright 2025 ワニマガジン 玉ぼん
タイトル | もいちど奏でて、ルースター |
作者 | 玉ぼん |
掲載誌 | 快楽天 2025.09 |
ページ数 | 22 |
ヒロイン | まゆ |
竿役 | 雛形飛鳥 |
発射数 | 3 |
公式タグ | フェラ / おもちゃ / ムチムチ / おもらし / 中出し / 巨乳 / 恋愛 / 潮吹き / 陰毛 |
修正 | 白抜き修正 |
引き続き快楽天から、玉ぼん先生の作品をご紹介したい。本作もまた漫画を超えた「文学」としてご賞味いただきたい。
恋人よ ぼくは旅立つ
ネタバレとは少し違うのだが、本作冒頭そして事後にヒロインまゆがリクエストしている曲について。作中で間接的に語られている通りなのだが、漫画は音が鳴らせないし曲名を勝手に出すのも良くないのだろう。玉ぼん先生に成り代わってこの曲をご紹介するところから始めたい。1975年リリース、松本隆作詞、筒美京平作曲、太田裕美の代表曲と言って良い「木綿のハンカチーフ」である。150万枚を超えるミリオンセラーで翌年の紅白でも歌われたヒットソングだが、偶然にもリリースの2週間前に日本史上最強「およげ!たいやきくん」の発売が重なってしまいオリコンチャート最高は2位である。レジェンドとはいえきっかり半世紀前の曲でありご存知でない方も多いと思われる。どうにかなってしまった世界線のまゆと飛鳥を想い、ぜひ本作とともに歌詞も含めて味わってほしい。男性側の言い分、女性側の言い分を交互に歌い上げている。
「木綿のハンカチーフ」のあらすじ
彼氏は成功を求めて東へと旅立つ。半年後、故郷の恋人に成功の証として指輪を送る。しかし故郷に残った恋人は土産など要らない、彼氏が変わらないまま元気で居てくれればそれで良かった。しかしそんな思いと裏腹に彼は故郷の恋人にも都会の華やかさを求めだす。時が過ぎ、変わってしまった彼は「自分の事を忘れてくれ」と告げた。別れを察した恋人は最後に「涙を拭うためのハンカチ」をねだった。
おう聞きたいか俺の武勇伝
本作ヒロイン安住まゆは北海道で「あずみたまごの養鶏場」を営んでいる。本号カバーガールであり、農作業で磨かれた体躯とビビッドなチャゲもとい赤髪のインパクトが強い。まゆにもまたギターでの成功を夢見て上京した雛形飛鳥という彼氏が居た。高校卒業、テンプレのようなビッグマウスで都会に旅立つ彼の背中が「お前はまぁ現地妻の一人にしてやってもいいぞ」とうそぶき、まゆはその背中に「二度と帰ってくんなバーーカッ」という餞と、涙と、おそらく手製のギター柄のお守りを投げつけたのだった。8年後、「令和のチャラ帝あっちゃんでーす! バチクソヒサビサで草ァ!!!」、盛大な「負けフラグ」を体現した彼は故郷に帰ってきた。

ピヨ太郎(8)
高校卒業から8年ということは26歳。婆ちゃんに「釣書」=お見合い写真とともに相手に送るプロフを持って来られるお年頃である。口先でかわすまゆだったが、内心まだ飛鳥のことが心に残っていた。ギターを背負って突然故郷に帰ってきた飛鳥は、まゆが切り盛りする養鶏場をふつうに手伝い始めた。そこに雄鶏のピーちゃんことピヨ太郎が現れる。当たり前だが養鶏場は雌鶏しか仕入れない(乳牛と違い交尾しなくても産卵出来る)。高校卒業間近の飛鳥はたまたま混じっていたオスのヒヨコにピヨ太郎と名付け、「俺の代わりにまゆを守れよ!」と告げた。そして飛鳥を失ったまゆは「何となく」ピヨ太郎を手元に残したのだった。満8歳のニワトリは、家畜としてのみならず生物種としても長生きしている部類だ。ちなみに玉ぼん先生らしいが今は昔、ピコ太郎のPPAPがバズったのがちょうど9年前(2016)のことである。ピヨ太郎は名付け親の言いつけだけを忠実に守り、飛鳥の差し出した右手を血が出るほど思いっきり突っついた。
都会の絵の具に 染まらないで帰って
慌ててギタリストの右手を手当てするまゆ。飛鳥は呟く。8年活動した飛鳥のバンドは300人のハコすら埋められず遂に解散の憂き目となっていた。7ページ、まゆに「慰め」を求めた飛鳥は紡ぐように弱音を吐く。「俺 音楽 やめる から まゆんとこに帰ってきていい…?」。8年ひそかに待っていた言葉、しかしまゆの目線はボロボロになっても故郷まで抱えて帰ってきたギターケースに向けられていた。まゆが望むのは海に眠る真珠でもハンカチーフでも無い、3ページ(の右コマ)のように眩しく輝いている飛鳥だった。「無理ー 私 お見合いするし」「は…はぁ!? 誰とっ!!」「飛鳥には言わなぁい」。8年ぶりの飛鳥は眩しく輝いてはいなかったが、妬いて焦って求めてくる姿にスイッチが入ったまゆは身体を許す。
贈り物をねだるわ アフターピル下さい
9ページ、おっぱいに顔をうずめ「まゆはいつもお日様の匂いがする…」という飛鳥に他の女の匂いを嗅ぎ取るまゆ。それでもまゆは許した。8年待った本妻の強さである。「あの頃より数が増えたピアスも 伸びた手足も 染め忘れてる金髪も… 私は全部知らないのに 変わらない優しい手つきに安心する」、かつて身体を合わせた、まゆが唯一知る男の変わらぬ求愛を身体は覚えていた。13ページからの玉ぼん先生らしい豪快かつ細密なセックスの描写が始まる。強く抱き寄せる飛鳥の右手に潰されるおっぱい、そして包帯、すべてに熱い血が通っている。16ページで両者8年ぶりの中イキ(8年前にどうだったかは想像)。トロけた顔で「アフターピル代…払ってよねっ…」というまゆを飛鳥は「やだ」と再度貫く。「デキたら産めばいーじゃん」、飛鳥の本気だった。その証拠に8年前投げつけられたお守りを見せる。それは恋人だけでなくギタリスト飛鳥にとっても最初のファンレターだった。奇しくもまゆが求めていた「恋人もギタリストも諦めない飛鳥」は彼の手の中にあった。
雄鶏は独り鳴き続ける
ルースター(rooster)は「雄鶏」を指すとともに、「騒がしいお調子者」という意味がある。そこから来ていると思うのだが、本作の「養鶏場」という設定が私は好きだ。北海道のイメージが強い酪農は、広大な放牧スペースと生乳の加工場が必要である。肉畜も同様だ。対して養鶏は比較的小さなスペースでも営める上に、鶏卵は基本割れさえしなければ輸送も容易だ。このため養鶏場は消費地に近い大都市近郊にも少なくない。物価の優等生と呼ばれた卵のブランド化は難しく採算性は厳しい。「あずみのたまご養鶏場」はケージではなく鶏が外に出られる放し飼いという高品質な養鶏をしているが、そのコストに見合うだけの生産のためには相応の数を詰め込む必要がある。一方でまゆも触れているように、音楽に限らずクリエイティブな仕事で食っていくなら都会の方がチャンスが多い。しかしクリエイティブな仕事というのは最終的にはクリエイターの中から魅力的な何かを産み出すしか無い。それは孤独な作業である。人と交わることは必要だとしても、揉まれすぎると個性が削り取られ埋没しかねない。何が言いたいか。
「過疎な田舎で満ち満ちるほど多数の鶏から必需品ながら大量安価の鶏卵を産み出す」まゆと、
「過密な都会の呆れるほど人が来ないハコの中で唯一無二なのに需要のない音楽を産み出す」飛鳥。
この皮肉めいた対比が二人の悩みであり、二人の利害一致点であり、本作の味なのだ。事後、一度都会に戻った飛鳥は一週間でまゆの元に帰ってくる。バンドが解散したことを奇貨として、ソロギタリストとしてであれば故郷の養鶏場を手伝いながらでもネットで音楽を届けられるという算段だ。本音はまゆのお見合い阻止だともはっきり言った。その後の経緯は語られないが、顛末だけラスコマで語られる。ここから2年後、飛ぶ鳥と書いて雛形飛鳥は「空飛ぶルースター」というハンドルネームでサイロを背景に弾き語る謎のニワトリマスクギタリストとして、ご自慢の「あずみたまご」のネット販売に勤しんでいた。新曲「鶏っぽいな」は10ヶ月で28万再生を記録している。と同時にパパと呼ばれることになった飛鳥は、チビに羽をむしられるピヨ太郎を助けに駆けつけようとしていた。満10歳のニワトリは相当な長寿である。現在ギネス認定されている最高齢ニワトリ「ピーナッツ」は2023年12月23日に21歳238日で亡くなったそうだ。ピーナッツ含め長寿記録に残っているのはメスニワトリで、オスの記録は見当たらなかった。ぜひピコ太郎のように末永く寿命を延ばして欲しい。
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330円

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