copyright 2024 ワニマガジン 玉ぼん
タイトル | 玻璃の欠落-序章- |
作者 | 玉ぼん |
掲載誌 | 快楽天 2024.11 |
ページ数 | 6 |
ヒロイン | 東雲ゆき子 |
竿役 | 高島四郎 |
発射数 | 1 |
公式タグ | 不倫・浮気 / 中出し / カラー作品 / 和服 / 女性上位 / お嬢様 / 寝取り / 巨乳 / 背徳・インモラル / 足コキ / 逆転なし |
修正 | 白抜き修正 |
copyright 2024 ワニマガジン 玉ぼん
タイトル | 玻璃の欠落-前編- |
作者 | 玉ぼん |
掲載誌 | 快楽天 2024.12 |
ページ数 | 28 |
ヒロイン | 東雲ゆき子 |
竿役 | 高島四郎 |
発射数 | 2 |
公式タグ | 不倫・浮気 / 中出し / 和服 / お嬢様 / 巨乳 / 淫乱 / 背徳・インモラル / 陰毛 / ぶっかけ・顔射 |
修正 | 白抜き修正 |
copyright 2024 ワニマガジン 玉ぼん
タイトル | 玻璃の欠落-後編- |
作者 | 玉ぼん |
掲載誌 | 快楽天 2025.01 |
ページ数 | 28 |
ヒロイン | 東雲ゆき子 |
竿役 | 高島四郎 |
発射数 | 3 |
公式タグ | おもらし / 不倫・浮気 / 中出し / 和服 / お嬢様 / 巨乳 / 恋愛 / 淫乱 / 潮吹き / 陰毛 |
修正 | 白抜き修正 |
本日は満を持して、玉ぼん先生の3部作をまとめてご紹介したい。エロ漫画雑誌において3か月連続の連作掲載というのは昨今極めて珍しい。しかも全体として一つの、いや複雑に絡み合った物語を構成しているという珠玉の名作である。先月告知していた通り、本作に関しては後編までそろった時点でご紹介することにしていた。実際にその間読むことも控えており、前編扉絵だけを見ていてよくわからないがヒロインは「かんざしでダーツするお姉さん」と認識していた。全部を読み終えた後で改めて見ても、見事なスリーフィンガーグリップで矢の重心を意識し的をよくエイムしている。生れ落ちる世界次第ではダーツ女子プロとしてど真ん中に当てていけていたのかもしれない。
時代設定と人物来歴
本作は攻略可能な女性が二人登場する。本作の舞台である東雲財閥のご令嬢である妹のちよ子と姉のゆき子だ。二人の父は造船業を営んでおり、第一次大戦のさなかにイギリスへ船を売りつけ「船成金」と呼ばれるほど大儲けした。年代は下記の通り、本作の時間軸は今から106年前の1918年、大正7年のことである。
大正3年(1914): 第一次世界大戦勃発
大正4年(1915): 東雲家が船をイギリスに売り大儲け
大正7年(1918): 物語時間軸 11月にドイツ休戦協定により大戦終結
そして本作の竿役が高島四郎というメガネの書生である。まずネタバレにならない範囲で本作登場人物のプロフィールをまとめよう。
高島四郎
実家は北海道・小樽付近の借金まみれだった雇われ漁師。名前の通り四男坊として産まれる。大人でも舌を巻くほどの商才に恵まれていた彼は、とある商家で小僧として下働きをしていた際に東雲父の目に留まる。男児に恵まれなかった東雲家の跡継ぎとして白羽の矢が立った四郎は東京に連れてこられ、跡継ぎとなる前提でちよ子と婚約する。東雲家の資金で旅学(留学)を3年経験し東雲家に住み込み、義父の懐刀として難攻不落だったカイマン社との契約をまとめる成果を出した。ゆくゆくは東雲家の後継者として金持ちになる野心を秘めている。東雲ちよ子
華族の出である正妻の母親との嫡子。上記の経緯により四郎と婚約者となる。ちよ子の母の最初の子は流産しており、なかなか子供に恵まれなかった。その経緯から母はゆき子を蔑んでいるのだが、ちよ子自身は姉として仲良くしたいと思っている。快活な性格で、観劇によく出かけている。東雲ゆき子
正妻との子が出来ない時分に、使用人だった妾の「田舎娘の色香に惑わされ」産まれた庶子。母は病により他界。東雲家で養育されていたが、妹のちよ子が出来たことにより立場が急変。姉であるにもかかわらず、寵愛されるちよ子とお揃いかお下がりばかりを与えられ自己承認と愛情に飢えていた。年頃になると東雲家に恨みを感じるようになり女学校にも通わなくなる。
この通り、四郎はちよ子の婚約者であり東雲家の人間として扱われていた。しかし皮肉にも本作ではちよ子とのエロシーンは1枚も無い。序章・前編・後編を通してヒロインはゆき子のみである。
前段(ネタバレなし)
物語の前段に触れていこう。まだネタバレは無い。四郎はちよ子の婚約者であるのだが、ゆき子と肉体関係を持っていた。道ならぬ情事にどちらから誘ったかは明言されていないが、おそらくはゆき子から四郎に処女を捧げた。四郎は危ない橋を渡っていることを重々感じながらも、ゆき子との妖艶な情交から抜け出せずにいたのだった。ゆき子はちよ子のものである四郎を奪い取り、四郎の子を孕むことで忌まわしい東雲家の汚点となることを望んでいた。いっぽう四郎は最後の一線だけは守ろうと、ゆき子の膣内に出すことだけは何としても避けていた。序章と前編前半で描かれていたのがここまでである。
以降物語の核心に触れてゆく。重大なネタバレを含むため、未読の方は先に後編まで読まれることを強くお勧めしたい。
玻璃
その前に本作のタイトルにもある「玻璃」に触れておきたい。仏教において極楽浄土を彩る七つの宝(七宝)とされる素晴らしいものとして、金・銀・瑠璃(るり)・玻璃(はり)・硨磲(シャコ)・珊瑚(サンゴ)・瑪瑙(メノウ)の7種が挙げられている。玻璃は透明な水晶またはガラスを指している。現在ではガラスは安価で大量生産が可能だが、古代では宝石に並ぶ貴重品だった。古代ローマで製法が確立し、工芸品として愛されてきた。瑠璃は青色の宝石で、12月の誕生石ラピスラズリの和名である。硨磲は寿司ネタのシャコではなく、大型二枚貝であるシャコガイの貝殻を指す。磨くと真珠のような乳白色の光沢を放つ。珊瑚は群体をつくる動物で、サンゴ礁を形成する造礁珊瑚と深海で固く樹上になる宝石珊瑚がある。ここでは後者を指し、赤い色が濃いものほど良いとされる。瑪瑙はオパールと水晶(石英)が縞状に形成された鉱物を指す。
本作タイトルの「玻璃」は、キーアイテムであるとんぼ玉(柄が入ったガラス玉)を指している。前編に出てくるガラス玉は、故郷にいるガラス工房で働く友人の手ほどきで四郎自らが作ったものだ。実はこのガラス工房は特定できる。本作では四郎の故郷として小樽の風景が示唆されている。小樽の名物の一つがガラス工芸だ。小樽のガラスはもともとニシン漁で使う網の「浮き」として明治43年(1910)に小樽の浅原硝子製造所が製造した。木製の浮きより軽くて丈夫なため大量生産され、小樽のガラス製造を大きく発展させた。四郎がとんぼ玉を作ったのは東京に来る前のことであり、時代的にはこの浅原硝子製造所(1903年創業)であった可能性がある。なお浅原硝子製造所は現在も4代目のもとで営業を続けており、漁具としての浮き球も未だ製造しているそうだ。
本当の馴れ初め
いよいよ本作の核心に触れたい。上記のプロフィールに書いていないエピソードとして、出会ったばかりのゆき子に四郎は、故郷から持ってきたとんぼ玉をかんざしにしてプレゼントしていた(前編21ページ)。妹と違う「ゆき子だけのもの」を欲する嗚咽に、貧乏漁師の四男坊として、裕福な家庭ながら両親にあからさまに冷遇されているゆき子に思うところがあったのだろう。手慰みで作った不器用なものだが、「世界に一つだけのかんざし」には違いないと四郎は笑った。これが、ゆき子の四郎への強い思慕に繋がったのは想像に難くない。と同時に、ゆき子が四郎に返した優しい微笑みもまた四郎の心に深く刻まれたのだった(後編5ページ)。この時点で四郎は、商人として成り上がった行く末に、ゆき子の微笑みを見据えていたのだった。無論その野心は、雇用主である東雲家にも、ゆき子にも明かせないものだった。ここがボタンの掛け違えとなる。
砕ける玻璃
どんな宝物よりも「自分だけのもの」を与えてくれた四郎に恋焦がれたゆき子は、感謝を伝えるため四郎に近づいた。偶然にもその時、東雲の父は四郎と立ち話をしており、ゆくゆくの東雲家の家督、つまりゆき子ではなく嫡子ちよ子との結婚を提案した。唯一の自分だけのものと幼心に信じていた四郎もまた両親によって妹に取られる。動揺したゆき子は大事にしていたかんざしを落としてしまう。素人の作ったとんぼ玉は気泡が入っており脆い。四郎も気を付けるように言っていた通り、落としたとんぼ玉は弾けてしまった。あわてて拾うゆき子。不幸にも彼女の存在に気付かなかった四郎は、この申し出を受け入れると言った。それを独り聞いてしまったゆき子の心もまた玻璃のごとく砕け散ったのだった。ここから物語の本線の通り、「ちよ子の婚約者である四郎を寝取り、四郎との子を妊娠する」という方向にゆき子が動き出した。
石女の涙
しかし事態は急転する。前編のエロシーンの事後にあたる26ページ、根負けした四郎はゆき子の中に出してしまう。まどろみの中で、ゆき子は四郎と二人の子を設けて仲睦まじく暮らす夢を見た。ご満悦のゆき子に、焦った四郎は月経周期を聞こうとする。「月のものってなぁに?」ゆき子は素っ頓狂な返事を返した。どう見てもゆき子は第二次性徴期を過ぎている。無月経性の不妊は現代であれば女性ホルモンの投与で改善することが多い。しかし神経系ではなく血液を通して身体を調節するというホルモンが初めてイギリスで発見されたのは明治35年(1902)のことであり、性ホルモンが治療に使われるのは1940年代以降だ。ゆき子は医者から無慈悲に「治療できない不妊」と告げられる。ちよ子とは違う「自分だけの」子供を持つことも、復讐の思いさえも断ち切られたゆき子は独り嗚咽し、暴れ、黒い自室の床で泣いた。手には継ぎ接ぎのとんぼ玉のかんざしを握りながら。
四郎の想い
序章および前編はゆき子の目線で語られていたのに対し、後編は四郎から見た物語として描かれている。戦時景気に乗って船をさらに増産しようという東雲の思惑に反し、四郎はドイツの劣勢から戦争終結を予見していた。東雲家の借金がかさむ前に、さっさと経営権を握って舵取りをしなければならないと四郎は決意を固める。ゆき子の不妊は父にも知れ、父は融資と引き換えにゆき子を孕まない慰み者として「色狂いの爺」の後妻にやることを決めていた。一方で四郎は、自分だけでなく婚約者であるちよ子もまた芝居役者と恋仲になっていることを知っていた。表向き両親の意向に従って跡取りとの婚約に従うも、役者との恋路もそこそこに楽しむ。そのようなちよ子の姿を四郎自身と重ね合わせ「ちよ子は弁えた女だ」と評した。四郎はゆき子の部屋を訪ね、全てを拒絶するゆき子を抱いた。後編13ページ、四郎はゆき子への想いを伝える。しかし四郎は間違いを犯す。「離れたところに居を構えて…妾として囲うなら皆も目をつぶってくれるはずだ!」。しがない使用人である四郎がゆき子と添い遂げるためには、「ちよ子と結婚し東雲家の財産と家業を継ぐ」ことが前提だと考えていた。ちよ子もまた表向きを取り繕ってくれればゆき子との関係を認めてくれるという確信があった。しかし失意のゆき子はそこまで「弁え」てはいない。ちよ子の付属品として東雲家に縛られ続けるくらいなら後妻になった方がマシだと言い放つ。そして「身体で私を繋ぎ止めて」と、孕めない身体を差し出した。四郎も遠慮なく本気で攻める。ゆき子の手を握り、突き通し、中で出した。
旅の終わり、そして始まり
ゆき子は四郎が自分を本当に本当に愛してくれていると気付いた。そしてそのために、ちよ子との結婚を、自らの人生を投げ出そうとしている事も。ゆき子は四郎との想い出のみを抱え、東雲家から単身飛び出した。翌朝、四郎の枕元、ゆき子がいたはずの場所には、大事にしていた継ぎ接ぎのとんぼ玉のかんざしが返されていた。四郎もまた、「とんぼ玉のことなんて知らない」と言ったゆき子の真意を、ゆき子自身もまた自分に微笑んでくれた時と何ら変わっていないと理解した。聡い四郎もまた見切りは早かった。辰野金吾が設計した東京駅駅舎が完成したのは大正3年(1914)のこと。完成間もない壮大な東京駅のホームで、ゆき子と四郎は再会を果たす。東雲家の人間として「…連れ戻しにきたの?」というゆき子の問いに、四郎は「…捨てました 東京で得たもの全て」と返す。そう、「東雲家の財力でゆき子を助ける」という考えが間違いだったのだ。ゆき子と東雲家は両立し得ない。四郎がゆき子を取るのなら、東雲家は捨てなければならなかった。
玻璃とどこまでも
もともとゆき子がどこに行こうとしていたかは分からない。二人は北へと向かった。上野から青森への鉄路は早くも明治24年(1891)には開通していた。27ページ、逆さまに描かれた日本地図は、小樽というよりは石狩あたりを指している。併せて二人が行商などで生計を立てつつ安息の地を得たこと、東雲家が没落したこと、ちよ子は劇団俳優と結ばれたこと、そして離れた地でちよ子とゆき子は再会を果たし、少なくともちよ子は婚約者に捨てられたことを恨んではいなさそうなことが明かされる。時は流れ大正12年(1923)、完成間近の小樽運河で手を握り合う二人の姿。本作タイトル「玻璃の欠落」が「はりのかけおち」と読むことが明かされオチとなる。最後の畳みかけはもはやエロ漫画の枠を超えた大正ロマンストーリーだ。玉ぼん先生は「当て馬の恋」で2023年下半期のランキングトップを獲得されているのだが、本作も間違いなくkomifloを代表する作品として語り継ぐべきものだ。komifloランキングは各話ごとに集計されるため、連作の場合票が割れるのは否めない。単純に足し合わせろとは言えないが、連作全体としての評価軸を加味できないものか。それに値する作品であると断言する。
群来と竜胆とチョコレート
ぐだぐだと過去イチ長くなり大変申し訳ないが、最後に本作を彩る要素についていくつか触れることを許してほしい。序章で触れられていた「群来(くき)」の様子がこちらである。ニシンは明治大正期の北海道の主要漁獲物で、干物にして全国に流通したほか肥料としても使われた。ニシン漁の網を引き上げる際に歌われたのが有名なソーラン節だ。大量に獲れたニシンだが乱獲がたたり昭和に入ると漁獲高が激減する。群来も長らく見られなかったのだが、稚魚放流など資源回復の試みが実り、平成11年(1999)に留萌で群来が再度目撃されるようになる。下は2024年に小樽で発生した群来の様子だ。
作中登場するチョコレートもまた大正時代を彩るアイテムの一つだ。チョコレートは長らく栄養価の高い飲み物として知られていた。カカオには油分(カカオバター)が多くなかなか湯に溶けない。そこでカカオバターを圧搾し飲みやすくなったココアが広く飲まれ始める。1847年、このココアバターをカカオと砂糖に加える事で固形化した今のチョコレートの原型がイギリスで開発される。日本では明治時代に輸入が始まり、明治32年(1899)に現・森永製菓が輸入原料からの国産チョコレートの製造を始める。明治42年(1909)には日本初の板チョコの生産も始まった。そして本作の時間軸である大正7年(1918)に森永製菓が港区田町に工場を造りカカオ豆からのチョコレート生産に成功した。100年経った今でも森永製菓の本社は田町にある。
後編6ページ、四郎がチョコレートと一緒に贈った青いリンドウの花。漢字では「竜胆」と書き、根は漢方薬としても使われている。「竜胆色」と称される薄い青紫色のほか、白やピンクの品種も存在する。青いリンドウの花言葉は「悲しんでいるあなたを愛する」「寂しい愛情」、自らの境遇にふさぎ込むゆき子への慰めとしてまさにぴったりのアイテムと言って良いだろう。流石だ。
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