移り変わらぬ気持ち [荒井啓] 秋桜が咲いた日に 最終話 (HOTMILK 2025.07)

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copyright 2025 コアマガジン 荒井啓

タイトル秋桜が咲いた日に 最終話
作者荒井啓
掲載誌HOTMILK 2025.07
ページ数50
ヒロイン上村茉莉
竿役無し
発射数0
公式タグ妹 / 巨乳 / 恋愛 / 背徳・インモラル / 陰毛
修正モザイク修正

本日はホットミルクから、荒井啓先生のヘビーな長編の完結話をご紹介したい。全6話で、1・2話と5・6話は同号掲載となっている。今号に5話が載っているので前から順番にお読みいただきたい。参考までに、コメントでも書かれているが最終6話はエロとは言いがたく正直抜きには向かない。せっかく同号掲載なので5話で済ませることを推奨しておく。

話数ホットミルク掲載号ヒロイン竿役
12021.10まつり弘樹
22021.10まつり
32022.07まつり
小板橋

(上村)
42023.08まつり
弘樹
52025.07まつり弘樹
6(最終)2025.07まつり無し

荒井啓先生の他作品を既にお読みの方はご承知の通り、本シリーズもいわゆる胸糞要素がかなり強い作品である。また近親の描写が多くを占めている。以下そこに触れていくためこれらの要素が苦手な方は閲覧注意とさせていただく。

登場人物

本シリーズの初出は3年半前になる2021年10月号だ。1話1ページからヒロインである上村茉莉の妊婦姿という剣呑な出だしでスタートする。本作の家庭の事情はややこしいため厳密にはヒロインの名字は確定していないが、同居している兄が「上村かみむら」と呼ばれているのでまず間違いなく同姓だろう。漢字表記「茉莉」は5話で判明するが、作中ずっとひらがなで呼ばれているので以降も「まつり」表記とする。本作の竿役は二人。シリーズの語り手である主人公には実は名前が無く、まつりからは最後まで「お兄ちゃん」と呼ばれている。会社では上村と呼び捨てられている。そして本作の胸糞要素である二人目の竿役が弘樹だ。旧姓加瀬弘樹。1話時点で2年生であり、兄の1つ下、そしてまつりの1つ上である。上村家の母は既に他界しており、医者である父の再婚相手が加瀬弘樹の母だったため、まつりに兄がもう一人出来たことになる。しかしまつりは最後まで彼のことを「ヒロくん」と呼び、血を分けた兄とは一線を引いていた。本作には小板橋さんというサブヒロインがおり、上村が勤める印刷会社の受付嬢のメガネOLだ。彼女は少なくとも男から見てさほど胸糞要素では無いが、物語を引き締めるスパイスとして登場する。

上村家年表

本作の時間軸を整理しよう。まず大枠の理解のため年表を用意する。年月に関しては想像で埋めている部分もあるのでご容赦を。1話冒頭の妊婦シーンは庭のコスモスが咲いた日と記載がある。これを仮に2025年秋として以下記載する。

  • 2014年秋 上村母退院に伴い大阪の叔母宅に預けられていた小6まつりと再会(4話)
  • 2016年頃 上村母他界
  • 2018年冬 上村父再婚により弘樹と同居開始 弘樹がまつりと肉体関係を結ぶ(1話)
  • 2019年春 兄就職 兄の気持ちがバレてまつりとデート外泊する(2話)
          まつりに中出しした事をきっかけに兄は独り暮らしを始める
  • 2019年夏 兄とまつりがデートを重ねる一方、小板橋とも関係を持ってしまう(3話)
  • 2019年秋 まつりが兄宅に転がり込む
          同棲生活を続けるも小板橋さんとの情事がまつりにバレ実家に戻る(4話)
  • 2020年春 弘樹が東京でモデルの仕事を始め、高校は留年
  • 2020年冬 兄とまつりが喫茶店で近況を話す まつり東京で進学を決める(5話)
  • 2022年頃? 兄印刷会社を辞め旅行代理店に転職 まつり大学を辞める
  • 2025年春 父危篤の報を受け兄がまつりの上京先を訪ねる
          まつりの妊娠が発覚(3ヶ月) 予定日は2025年冬(5話)
  • 2025年夏 まつりが兄を東京に呼び、弘樹と破局(6話)
  • 2025年秋 上村父他界 実家処分のため兄とまつりが再会(1話冒頭+6話)
  • 2025年冬 二人で田舎の漁師町に移住 小洒落たハンバーグ屋「COSMOS」を開業
  • 2028年頃 一花2歳 洋食店が軌道に乗る
  • 2041年秋 一花15歳(高1) コスモスの咲く季節にてEND

本作の舞台である「田舎」はおそらく奈良である。2話のデートシーンでは最後に「大和橿原シティホテル」に逗留する。この手前で映画を見ている場所はおそらくイオンモール橿原アルルだろう。本作が私にとって衝撃的だったのは、ストーリーだけで無く舞台が私にとっても実家界隈だったからだ。同じく橿原が舞台の京アニ「境界の彼方」以来の衝撃である。あと具体的な地名が出てくるのは兄の独居先の最寄り「阪海 紀三ノ浦駅」(4話)だ。最終話の「田舎の漁師町」含めて南海沿線っぽい。駅名とは符合しないが雰囲気は南海尾崎駅東口だろうか。

Side 弘樹

上村母は病気持ちだったようで、医者の父が面倒を見れるのは兄のみ。まつりは大阪に住む叔母の家で育っていた。母の退院と、まつりの中学進学を機に再び実家にて同居を始める。二人の出会いはコスモスの咲く実家の庭だったらしいので小学校卒業前年の秋のはずだ。二人は2歳差。小学校時代は別居していたという点が、二人の異性としての意識の端緒を生んでいるのだ。そして本シリーズの問題点は全て弘樹が発端である。つまり上村父と加瀬母の再婚が全ての元凶だ。なお本作は近親モノだからなのか、親世代の人物は一切描写されない。弘樹という男がどこで道を踏み外したかはよく分からないが、イケメンであると同時に性に奔放で、かつ悪い事への興味を隠せない性分だった。最初は兄に物音を聞かれながらまつりを調教する程度だったが、セックスを拒絶したまつりにDVをするようになり3話ENDのまつりの家出の直接的原因になった。上京してからは仕事が思うほど上手くいかない中で「まつりに性接待をさせる」よう仕向けた。ここまで来れば弘樹の心は当然冷め切っており、あろうことかまつりが妊娠の話を始めたとき弘樹は「ほなみ」という別の女性と浮気のチャット中だった。もう弘樹はまつりのことを道具としてしか見ておらず、自分の性欲以前に仕事に差し障るという考えで中絶を要求する。6話、兄の前で平然とそれを公言した弘樹の顔に兄が渾身のグーパンを入れる。本シリーズの中で唯一と言ってよいスカッとする瞬間だった。商売道具である顔に傷をつけられ、弘樹の実母まで介入した上でまつりとの別れさせられたところで本作の筋からは消え失せる。

Side 兄

改めて兄の目線で本シリーズを再度振り返ろう。兄にとってのターニングポイントは弘樹との同居の前、中学時代のまつりの着替え、下着姿を偶然見てしまったところだった。母親が不在がちの家で思春期を迎えた兄にとって、妹のボディラインは兄の脳裏に焼き付いてしまった。妄想で妹を犯すだけに飽き足らず、使用済みのナプキンにまで手を出してしまう。それでも肉親への欲情を抑え込んでいた兄だったが、血のつながりの無い弘樹とまつりの性調教を壁越しに聞かされ限界寸前だった。兄はその劣情を脱衣場のまつりの使用済みパンツに向けた。そしてその現場をまつり本人に見られてしまったところで、妄想は現実となった。まつりとの情事を兄に聞かせようとする弘樹に対し、兄はこの事を絶対の秘密とした。一方で性に関するタブーを破り捨てられたまつりは兄への慕情を隠すこと無く、身内以外には恋人のように対応していた。この二つがホテルで衝突する。弘樹とは違う優しい兄へのじゃれ合いの延長のような形でまつりは無邪気に生中出しを求める。激情に流された兄は実妹とのセックスに溺れたものの、肉親を「妊娠させる」という可能性に耐えられない。兄はまつりと弘樹から逃げるように独り暮らしを始めた。

高卒で印刷会社に就職した兄は職場にそれほど馴染めてはいなかった。しかしその中で、小板橋さんという女性にタゲられる。一方でまつりとは度々会っており、白良浜海岸、夏祭り、そして兄のアパートでも身体を重ねた。挿れても出せないことが責め苦になっていた兄はまつりとの決別を固める。そしてたまたま言い寄られた小板橋さんと一線を超えた。このとき兄は膣内で射精したのだが、ゴムが着いていたかどうかはモザイクの向こう側で分からない。なお小板橋さんは処女だった。そんな日に限って家出してきたまつりがアパートの前で待っていた。弘樹からDVを受けたまつりは兄のアパートに転がり込み、学校に通いつつ押しかけ女房暮らしを楽しんでいた。そして再度中出しを迫る。実兄はこの思考にたどり着くのか、兄は妹のアナルに突っ込み思いの丈を放った。二人の素性を知らない街で夫婦として生きてゆく、そんなイメージを固めたまつりだったが急転直下、今度はあろうことか小板橋さんがアパートをアポ無し訪問する。普通に妹として紹介されるまつり。酒が入った小板橋さんは何かを感じ取ったのか、兄との一晩のアヤマチについて赤裸々にノロけ出した。兄に裏切られたと傷ついたまつりは言い訳など聞かず実家へと出戻り、そのまま弘樹との関係を続け東京に出てしまう。小板橋さんと結局なんともならず、転職してしまった兄は「まつりがそれでいいのなら」と送り出してしまった。

Side まつり

そして東京で進学したはずのまつりはいつしか大学を辞め、弘樹にいいように扱われていた。故郷に砂をかけ、危篤の父にも会わず、兄ともわだかまったまま飛び出してきたまつりにとって、弘樹は唯一のよすがだった。しかしそんなまつりに最強最悪の味方が宿った。身体の異変に産婦人科の診察を受け、自分が妊娠三ヶ月であることを知らされる。「堕ろせ」という弘樹に、頼れるのは兄しか居なかった。キレた兄の前でまつりはようやく弘樹と決別し、お腹の子と生きる決意を固めた。本作6話、兄はまつりの部屋に足を踏み入れる。色々掛け違ったボタンが引きちぎれ、お腹の目立つ裸のまつりと向き合った兄は、二人いや三人で生きていこうと手を差し伸べる。まつりの実兄として、愛し合ったとしても子を残せない関係であることが兄にとっての呪縛となっていた。医者の息子として、世間から後ろ指を指されながら生きていくことに耐えられる自信が無かった。しかし兄は父の伝手だった職場を自ら離れ、両親も失い実家を引き払う。たとえ弘樹の撒いた種だとしても、愛するまつりとその子供とで幸せな家庭を築けることに安堵の表情を浮かべているように見えた。

兄はおそらく実家を売却した金で脱サラし、田舎の漁師町にハンバーグが売りの洋食店を開業した。その名もコスモス。兄が厨房に立ち、まつりがホールを回す。常連客も根付き、いつしか娘の一花も厨房に立つ兄につかまり立ちで懐いていた。帳簿をつけ終わったまつりは、夫婦のように兄と睦みごとを始める、ゴムは着けて。「やっぱり生でしたいよね?」「やっぱり赤ちゃん欲しいよね?」と兄の顔を見てまつりは聞く。兄は答える「俺たちには一花がおるやないか」。そしておそらく冒頭まつりの年になったであろう制服姿の一花、その部屋にたたずむ一輪挿しのコスモスで本シリーズ大団円となった。

小板橋流ハンバーグ

本作最終話47ページにいくつか情報が残されている。3話4話でひっかき回した小板橋さんはその後に洋食店を訪れている。彼女はまつりが実の妹だとおそらく知っている。それでいて二人を祝福し、かつ意地悪な当てつけをしたことまつりに謝罪していると思われる描写がある。本作における料理シーンは、まつりがカレーを作っている(1話)のと弁当を用意しているシーン(4話)、そして小板橋さんが兄のアパートで振る舞った「おばあちゃんのレシピ」によるデミグラスハンバーグ(4話)しかない。修羅場であるにもかかわらずこのハンバーグは美味しいと評判だった。これが新生上村家のスペシャルハンバーグとして店を支えているのかと思うとなかなかに胸が熱い。あと小板橋さんも結婚指輪を披露している。

兄に顔面を殴打された弘樹もまたモデル稼業を続けていることが示唆されている。まつりの性接待疑惑がシロであるためには、まつりがいなくとも仕事が続いていないとややマズい。いつか真実を知るかもしれない一花のためでもある。必要な描写だろう。ただノーダメというのも気が悪いので、殴られた左頬に残った傷痕をドーランで隠している描写がある。そして一花ちゃん。初出33ページの顔からは何とも言えず父親の雰囲気が垣間見える。兄・まつりとも黒髪なのに幼少期は髪色が薄いのも遺伝だろうか。成長した一花は母と同じ髪色になっている。最後の時間軸は6話エンドからおそらく16年後。1話のまつりと同様に紺色のソックスだった。現世でだめなら来世で。ファッションの流行とともに輪廻転生を感じるエンドではある。

引用: 森伸之様

移り変わらぬ気持ち

繰り返すが、本シリーズのメイン竿役は最後まで名前を呼ばれなかった。事実婚して子供が寝静まった後でも「おにーちゃん♡」と呼ぶのは凄みさえ感じる。本作タイトルにあるコスモスは早いと7月から11月くらいまで咲く。見頃は9月10月なので秋の桜と書かれる。一年草であり違う花ではあるものの毎年秋を告げるように咲く。本作で具体的に登場するのは、実家での二人の再会のときと、最終話での実家売却の折、そしてラストシーンである。マフラーをしていたり(1話)、浴衣を着ていたり(3話)、桜が散っていたり(4話ラスト)と意外にも秋の描写は少ない。モノクロ漫画につきコスモスの色は分からないのだが、色によって花言葉が異なる。ピンク色だと「乙女の純潔」赤色だと「情熱」、そして茶色だと「恋の思い出・恋の終わり・移り変わらぬ気持ち」とある。最後に水を差すようなことを言って恐縮だが、最終話25ページ、妊婦の身体となったまつりが兄にその姿を見せるシーン。妊娠するとホルモンバランスの変化によりメラニン色素が生成されて乳首が茶色に変わったところも描写されている。エロ漫画としては異例といえる衝撃的なシーンだ。かつて乙女だったまつりは、様々な経験を経て浮ついた恋愛を終わらせ、移り変わらなかった兄への気持ちを抱いたまま幸せを掴んだ。コスモスなのである。そして新たなる乙女の純潔とピンクのコスモス一花。心を揺さぶられるインモラルエロスの最後として清々しい、想像もしなかった着地点に誘われた。末尾におそらく本シリーズをまとめた荒井啓先生の単行本が9月下旬に発売予定という告知が入っている。ちょうど秋桜の咲くころに、また再会を願おう。

引用: 電話占いピュアリ様

本シリーズの単話販売はこちら!!

荒井啓先生の作品はこちら!!

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