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女に磨かれ男は輝く
ラピダリィ(lapidary)とは、宝石の原石を磨き整え宝飾品に仕立て上げる職人のことを指すらしい。本作の篠田さんは一見するとチェリー好きのヤリマンにしか見えないが、タイトルと合わせて読むと、男のポテンシャルを見抜きアドバイスで磨き上げ、必要とあらば自分の体まで使って光り輝く男にすることに誇りと使命感を「趣味」として持つ聖人のようなヒロインである。北方謙三を引くまでもなく、男を磨き上げるにあたって中核をなすのは性経験であることは言うまでもない。女性は自分を輝かせてくれる男性を見抜く眼力を養うことに全身全霊を懸けているが、男は自分を認めてくれる女がいれば誰でもいいのだ。女兄弟や幼なじみ、可愛い後輩といった女性へのコネクションを持たない冴えない男にとって、篠田さんのような女性はまさに夢の存在と言える。
蛇足ではあるが、笛吹くんを磨き上げ可愛い彼女の一つでも作ったところが篠田さんの趣味にとってのゴールと言えるのだろう。そして彼女は次の石探しに向かう。もし笛吹が篠田さんを引き留めようとした瞬間、二人の関係は破綻するのだろう。藤丸先生の「Life is battlefield」シリーズのすみれさんに通ずるものがあるが、篠田さんのプロ根性に打ち勝てるのか、そもそも笛吹くんも通過点と割り切れるのか、余韻を楽しみたい。
ここまで書いて今更なのだが、笛吹はフエフキではなくウスイと読む。山梨市内に流れる笛吹川(ふえふきがわ)の異名でもあるらしい。山梨はワールドクラスの宝石加工産業の集積地として知られ、宝石職人を目指す人のための専門学校まであり県をあげて応援している。では篠田という地名は山梨付近に見当たらないのだが、J2在籍でありながら2022年天皇杯を制したヴァンフォーレ山梨の現監督が篠田氏である。ヴァンフォーレはなかなかJ1で結果を残せず、2017年シーズンに降格して以来J2で燻っている。天皇賞制覇というポテンシャルのある原石をどのように磨き上げ、J1という舞台で花咲かせるのか、篠田監督というラピダリィに期待したい。
あらすじ
キスの経験もない冴えない大学生の笛吹(うすい)は、出逢いの場と化している学科飲み会に辟易としていた。帰ろうとした矢先、高嶺の花であった篠田さんからお声がかかる。篠田さんに誘われるがまま飲み会を退席して家に連れ込まれる。篠田さんは磨けば光る笛吹のような男が好きだと言われ、髪を整え、キスを教え、ベッドに押し倒した。
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