HOTMILKを擁するコアマガジンから新刊「コミックご乱心」が創刊され、komifloにも展開されている。「ドエッチ時代劇オンリー漫画誌」という触れ込みだ。早速ご紹介したい。
時代劇というフロンティア
時代劇というものが地上波テレビの世界から消えて久しい。有名どころだけでも「水戸黄門」「暴れん坊将軍」「銭形平次」「遠山の金さん」など枚挙にいとまがない。過去の時代を扱ったドラマという意味では、NHK大河ドラマなど今でも無くなったわけではない。どちらかというと時代劇という言葉には「一話完結で最後にチャンバラで悪者をとっちめる勧善懲悪モノ」という意味が込められており、その系譜だけで言えばニチアサと呼ばれる戦隊シリーズそしてプリキュアも時代劇フォーマットと呼べる。一方でグローバル化する世界の中で、舞台も衣装も特殊な時代劇を新作するコストに対し、タイパ重視のエンターテイメント業界で「マンネリ」と揶揄され続けた時代劇が(刑事ドラマなどとともに)姿を消すのは止むを得ないところであった。
しかし皮肉なことに、少年漫画界隈では和月伸宏先生「るろうに剣心」から日本刀を用いた剣劇ものが隆盛を極めている。少年ジャンプだけでも「BLEACH」「銀魂」など剣士が主人公の作品が超長期連載され、吾峠呼世晴先生「鬼滅の刃」で最高潮を迎える。タイトルから日本刀(日輪刀)なくして語れない作品であり、大正の舞台設定ながら西洋文化より時代劇の世界観に寄せている。漫画を描く分には舞台設定そのものに対するコスト(配役やら衣装やら小道具やら)は現代劇と大差なく、資料とフォーマットが確立している分うかつに北欧神話などにモチーフをとるよりハードルが低い。併せて漫画アニメは日本が優位性を持つコンテンツであり、上記の作品も海外で支持を受けている。本来時代劇モチーフでエロに振るのであれば姫君なり花魁なりを表紙に持ってくるところ、真剣少女を起用したあたりも「日本刀=王道漫画」の時勢にあやかったと思われる。
さらなるご乱心に乞うご期待
とはいえ掲載作品はかなり「濃いめ」である。滝れーき先生「女盗賊無惨」、荒井敬先生「花の塵」と、巻頭2作品続けてドロドロにハードだ。登場人物も読者層も高めに設定されているように感じる。子門竜士郎先生「十六人谷」に至ってはゴリゴリのホラーである。別に時代劇風味だからと言って純愛イチャラブでも悪くない思うが、セリフ回しなどが時代がかっている時点であまり甘めには仕上がらないのかもしれない。
不思議だが掲載作品の漫画のうち「和服」タグがついているのは3作しかない。んなこたあない。これは明らかに手違いだと思われる。これ以外に時代劇を彷彿とさせるタグが無いため、絶対に全作品つけるべきだろう。komifloは髪型や服装などタグを拡充したのだが、今回多数登場した結い上げ髪や、「姫」「花魁」に相当するタグも存在しない。花柳界の作品を求める人が「キャバ嬢・風俗嬢」タグを検索するとは思い難い。今後もこの方向性で行くのであれば、専門性のあるタグは必要だろう。私の感触では和風モチーフは異世界モノより作品数が少ないと思うが、人気次第では他誌でも和モノを導入する余地は十分ある。日常的に和装の人が激減したので「ババア臭い」というクレームは出ないと思うが、竿役の描写や盛装の女性を脱がせる構図が固定化すると厳しい。特に下着姿の描写に相当する漫画的描写に関してブレイクスルーが欲しいところだ。
コミックご乱心 Vol.001
880円