卒爾ながらご注進 [くっきおーれ] 卒爾の後に (COMIC BAVEL 2024.06)

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copyright 2024 文苑堂 くっきおーれ

タイトル 卒爾の後に
作者 くっきおーれ
掲載誌 COMIC BAVEL 2024.06
ページ数 24
ヒロイン 結菜
竿役
発射数 1
公式タグ パイパン / JD / 同級生・同僚 / 巨乳 / 恋愛 / 淫乱 / 羞恥
修正 白抜き修正
本日は引き続いてBAVELから、くっきおーれ先生の作品をご紹介する。またしても糖度は高めなのだが、少しピリッとした口当たり、それでいて優しい味に仕上がっている。
 

ヤッちまった結菜さん 

本作のテーマは「性的接触における男女の性役割の相対化」言い換えると「逆レ」である。ヒロインの結菜は男の部屋で裸で目覚める。この導入はエロ漫画では少なくない。ヤッたかヤッてないかは半々である。本作はヤッている。結菜は昨晩からの状況を整理するのだが、記憶が鮮明になるにつけ色を失った。実は結菜と翔くんの来歴はよく分かっていない。幼馴染作品が続いているが、この二人は割と他人行儀なので大学やバイトで知り合った感もある。そして事件前夜は翔くんの二十歳の誕生日ということで一緒に酒を飲んであわよくば告白して付き合っちゃおうという算段が結菜にあった。成人年齢は18歳に引き下げられたが飲酒可能年齢は20歳のままなので翔くんが酒を飲むのは初めてとなる。アルコールに限らず試薬のついた綿を肌に密着させて反応を見ることをパッチテストと呼び、内服ないし塗布する時のアレルギー反応の有無を前もって確認できる。特にアルコール耐性に関しては需要が高いため専用のパッチが市販されており、成人の集いなどで提供されたりするそうだ。真面目な翔くんは事前にパッチテストをしてアルコール耐性はあまりなさそうだという結果を得ていた。しかし好きな人を前に加減がわからない結菜は飲ませすぎてしまい、自分も適量を超えてしまった。くっきおーれ先生の温情か詳細な描写はないが、要するに結菜は酒癖が悪かった。最終的に自ら脱いで翔くんを襲うのだが、手前段階のへべれけ状態でどんな奇行に走ったかは本人の記憶からも抹消されていた。いずれにしても「ヤッた」という事実が自分の下腹部からも伝わってくる。そこで裸で起き抜けの翔くんと目が合う。
 

エロ漫画で感じる刑法史

念の為書いておくと、かつての強かん罪(5年以上の懲役、以下もFC2規制によりひらがな表記)被害者が女性だという要件があり、膣に挿入されている場合に限っていた。それ以外の強要は全て強制猥せつ罪(6月以上10年以下の懲役)で処理されていた。2017年の刑法改正で「強制性交等罪」と範囲が拡大し、男同士であってもアナルであっても旧強かん罪が適用される事になった。なおご存じの通り2023年に再度刑法が改正され量刑そのままで「不同意性交等」「不同意猥褻」とさらに解釈が拡大されている。結菜さんが翔くんと同い年かどうかの明言は無いが、今年20歳の7年前、ちょうど思春期きっかけの潔癖な時期に刑法改正された事は記憶に重く残っている可能性が高い。そうでなくてもZ世代は潔癖なところが多い。結菜さんは自ら犯してしまった翔くん並びに重罪について理解してしまった。繰り返すが10年前は犯罪でさえなかった行為だ。密室で起きた事、居直ることもできたろうし男側に押し付けることもできるだろう。それでも犯罪以前の問題として「好きな人を犯した」というショックの方が大きかったのかもしれない。ここが本作のテーマだと私は思う。
 

仕切り直し

当たり前ながら裸で顔面蒼白の結菜を見て、全裸土下座したのは翔くんの方だった。全てを覚えている結菜さんに対して、おそらく何も覚えていない翔くんの方がシチュエーションに対する衝撃は大きかったろう。あきかにヤっている。しかも相手は嬉しそうではなく慄いている。そもそもかつて強かん罪が女性に適用されなかった理由の一つは「勃ってないと入らない」からである。「濡れていたから和姦」は昔から通らないのだが、「勃ってたら和姦」が事実に反すると法規制されてから10年経っていない。若い男性器など性的な理由でなくても簡単に勃つのだが、20歳男子がこの状況で「ヤッてない」と思えるほど自分の下半身を信じることは難しい。そして二人とも根は善良なので、後追いでお互いの好意と性欲を伝える。相手を苦しめることは全く本意ではない。まさに結果オーライとばかりに、「やり直しH」が始まる。
 

卒爾

くっきおーれ先生の女性キャラは一本芯が通っており、純情さと恥じらいの描写が胸に刺さる。竿役も基本的にいいやつなので読んでいて胃に優しい。ぐちょぐちょしたエロさは無いのだが、可愛さをハートで感じるエロである。本作タイトルにある「卒爾」(そつじ)は「率爾」とも表記する。卒爾は名乗るときや何かを進言するときに「卒爾ながら」という表現で、「突然ぶしつけなことを言うようですみませんが」というニュアンスで使う。「卒」は「急に」という意味、「率」は「軽率」のように「かるはずみで」という意味である。「爾」は「玉璽」のジと同じくハンコを意味し、ハンコと紙のようにしっかりべったりとくっつくという意味である。まとめると「突然に、勢いだけで、二人の身も心もしっかりと密着させてしまった」というのが「卒爾」である。調べれば何ともエロい、本作のタイトルにぴったりのワードセンスである。
 

卒爾ながらご注進

「不同意性交」の極めて難しいところは、不同意だと強盗と同レベルの重罪なのだが、同意があれば犯罪ですらない所だ。性的同意はそんなにデジタルなものではないと思うし、「強制」という表現よりむしろ恣意性が増しているので訴え出にくいのではないかとさえ思う。「運用は変わらない」という説明もあるが、とにかく3次元に向かうときには気を引き締めていくしかない。最後に結菜さんにお知らせだ。実は強かん罪が強制性交等罪に改正されたときに対象だけでなく「親告罪」から「非親告罪」に変わっている。つまり犯罪の事実に対して翔くんに訴える意志が無くても逮捕されうるという事だ。「後追いの同意」はもちろん認められないので、モノローグにも気を付けた方がいい。ちなみに酒を飲ませてグデングデンにしてよくわからないまま犯した場合かつては「準強制性交等」というのだが、これが無くなり「不同意性交等罪」に統合されている。意識がないなら同意が無いのだから当然と言えば当然と言える。どっちみち法定刑は変わらないのだが、「酒の上での過ち」は通らない。

 

あらすじ

結菜が朝目覚めるとそこは二十歳の誕生日をお祝いした翔君の部屋だった。しかも裸で寝ていた。昨晩の記憶をたどると、翔くんに飲めない酒を勧めて潰して、酔った勢いで彼を押し倒していた自分を思い出してしまった。とりかえしのつかない事をしたと焦る結菜の眼前で、同じく裸の翔が驚いた顔で目覚めていた。

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