copyright 2024 文苑堂 くっきおーれ
タイトル | 想いのつたえかた |
作者 | くっきおーれ |
掲載誌 | COMIC BAVEL 2024.11 |
ページ数 | 28 |
ヒロイン | 詩織 |
竿役 | 蒼大 |
発射数 | 1 |
公式タグ | おさげ / パイパン / 中出し / 処女 / 巨乳 / 幼なじみ / 恋愛 |
修正 | 白抜き修正 |
本日は続けてBAVELから、まもなく単行本発売のくっきおーれ先生の作品をご紹介したい。くっきおーれ先生の作品は元々好きなのだか、このヒロインには完全に一目惚れである。
ピアノ弾いてちょーだーい
掲載順でこの次の作品がウチガワ先生「明日、バドミントンしよ」なのだが、両作品とも「恋人未満の彼女と同衾」というシチュエーションが被っている。こちらはタイトル通り活発なヒロイン吉野あずさがグイグイ引っ張ってくれる、わかりやすいストーリーといえる。対して本作は真逆で、ピアノ少女ヒロイン詩織の「わかりにくさ」を読み解く物語である。ピアノは女子のお稽古事として1960年代から普及し始め、ピアノを購入する家庭も増えていた。ピークは1980年頃で、これは集合住宅など家で楽器演奏をしにくい環境が増えてきたことが原因とされる。今でも小学校では鍵盤楽器を必修としているのだが、国内におけるピアノの生産台数は激減している。あるけど使われず置物と化しているピアノに注目したのが皆さんご存知「タケモトピアノ」で、輸出も含めた遊休資産の再活用に一役買っている反面、新品のピアノの市場はますます厳しくなっている。本作で詩織さんが弾いているのはグランドピアノだが、ご家庭でこれをお持ちの家は相当お好きな方に違いない。下図の通り日本で普及しているのはアップライトピアノと呼ばれる、鍵盤の前から上方向に弦が伸びている奥行きの小さいピアノだ。どちらも鍵盤の仕様は原則変わらないが、弦を曲げてコンパクトにしているぶん音の響きがグランドピアノには敵わないとされる。しかし標準的なグランドピアノは奥行き3メートル、重さ300kg、そして値段が200万円となかなかの財産である。当然精密機器なので動かすのも大変だし、バラして運ぶわけにもいかない。しかも調律代が年間2万弱かかる。蒼大くんの心を打ったのは詩織さんの演奏技術と表現力なのだが、「グランドピアノがある家」というだけで目の色が変わっても不思議ではない。
ピアノ、オルガン、キーボード
本筋に入る前に、本作8ページ、詩織さんはグランドピアノだけでなく電子ピアノもお持ちである。上図の通りピアノの生産台数は激減しているのだが、もう一つの要因として本格的な電子ピアノの普及がある。楽器演奏ができない集合住宅環境だからこそ、自由に音量調整できヘッドホンの出力も可能な電子ピアノは家庭での練習・演奏用として大いに普及した。オルガンから派生した「電子オルガン(エレクトーン)」、鍵盤の形状のみを利用した「電子キーボード(シンセサイザー)」とは別に、ピアノ特有の打鍵の重量感と音響を再現したものが電子ピアノと呼ばれるもので、ヤマハ「クラビノーバ」、カシオ「プリヴィア」といったブラントが有名だ。高いものはアップライトピアノと変わらない形状とお値段がするのだが、本作のような平置きタイプなら10万円を切るものもある。横幅は普通のピアノと変わらないのでそれなりに嵩張るのだが、グランドピアノを持つ財力と情熱のある詩織宅にとってはお安い買い物だろう。
ピアノの音色と、温かい手
本題に入る。本作は竿役である蒼大くん目線で描かれている。詩織さんは扉絵を見た時点から胸の動悸が止まらないほどに可憐なのだが、蒼大くんから見た詩織さんは特に印象のない娘だった。彼女のピアノを聞くまでは。音色に魅了された蒼大くんは連日のように詩織さんのピアノを聴きに通ったそうだ。3ページ、心を奪われ目を丸くする蒼大くんに対して、詩織さんは生気のない眼をしていた。両親の期待値はともかく、実は彼女自身にとってピアノは「お稽古ごと」でありさほどの興味は無かったのだろう。しかし蒼大という異性を魅了したことが詩織にとってもターニングポイントだったのだろう。蒼大は詩織のピアノについて「優しくてしみるように温かい 詩織ちゃんの感情が流れ込んでくるかのような感覚に飲まれて 気づいた時には詩織ちゃんに夢中になっていた」と書いてある。いっぽう詩織は裏腹に「温かい感情が流れ込んでくるかのような」自分を称える蒼大の手が、気づけば詩織をピアノに夢中にさせたように見える。そして二人共、相手自身のことを好きになっていたところは同じだ。しかしお泊りの日、この根幹の違いがすれ違いを生んでしまう。10ページ、詩織のピアノに惚れ込んだ蒼大はピアノを通じて彼女の感情を読み取ろうとした。その感情は奇しくも「締めつけられているような」「ドロドロした」苦しいものだった。詩織とのお泊りに男子なりにワクワクドキドキしてきた蒼大にとってその感情はあまりにも意外で寂しく感じた。一方の詩織の原体験であり、感情を読み取るよすがは「触れ合い」だった。9ページから10ページ、彼女は普段より大胆に蒼大との触れ合いを求めた。蒼大は「平常心」と心で唱え、皮肉にも心を閉ざしてしまった。11ページ、詩織もまたお泊りにワクワクドキドキしていたのだが、蒼大の手が伝えてきたものは「称賛」でも「愛情」でもなく、肩を掴んだ「制止」だった。がっかりした詩織は不貞寝してしまう。
ピアノの音は聞こえない
消灯。ピアノの音は聞こえない。しかし蒼大は隣で眠る詩織にはやる気持ちを抑えられなかった。彼女の唇に、胸に触れる。詩織は起きない。しかし反応する。蒼大は詩織は寝たふりをしていると悟った。拒絶してこないことをいいことに蒼大の手は下半身へ伸びる。詩織の心の内が読めない蒼大は、「沈黙」だけを頼りに前戯を進める。そして「寝てたから知らないなんて言い訳は許さない」と一人叫んで返事を待たず挿入した。孤独と混乱の中、破瓜の血を見て狼狽える蒼大に詩織は黙って手を差し伸べた。19ページ、詩織がずっと欲しかったものは「触れ合い」だ。それが性的なものであったとしても詩織はそれを通して蒼大を感じたかった。口約束など要らない。狼狽など見たくない。伝えたいものが溢れた詩織は自ら手を伸ばし蒼大の首に絡めた。そして蒼大は頬を撫で手を握ってくれた。これが蒼大から詩織への「愛の告白」だと詩織は感じていた。しかし蒼大がそこに気づくのはもう少しあとだった。20ページから21ページの長いモノローグ、蒼大はピアノの音だけでなく、触れ合いだけでなく、言葉で伝えることの必要に思い至った。そして22ページ、詩織に愛を告げる。23ページ、既に触れ合いを通して愛を囁かれていた詩織だからこそ、ここで不思議そうな顔をして「うん」と生返事したのだ。翌朝、詩織の電子ピアノの音で目覚めた蒼大は、おそらく初めて詩織と言葉による意思疎通をした。ピアノの音は耳に入らなかった。彼女の言葉こそ愛おしく、真実を正しく告げていると理解したからだ。そんな彼女が言った「お母さん達 まだ帰ってこないから…」。これが17ページ、「もうダメだからな 朝になって本当に寝てましたとか そういうの絶対…」という蒼大の言葉への、真っ直ぐな「想いのつたえかた」だと思った。冒頭アオリにある「むずキュン」が止まらない、果てしなく尊い恋物語だった。
あらすじ
新しい街に引っ越してきた蒼大は、母の友人の娘である詩織と出会った。はじめは意識しなかったが、彼女の弾くピアノの音色に心を奪われる。ピアノ聞きたさにしきりに詩織の家に通ううちに詩織本人の事も気になるようになった。一方で何かを伝えるように一心にピアノに打ち込むようになった詩織。ある日、詩織の両親が留守の日に家に呼ばれた蒼大は、風呂上がりの彼女の裸を見てしまう。はやる心を抑えようとする蒼大に詩織の本当の気持ちは伝わらなかった。