copyright 2024 文苑堂 時田
タイトル | ランデヴー・ピッチ・マニューバ |
作者 | 時田 |
掲載誌 | COMIC 外楽 Vol.19 |
ページ数 | 32 |
ヒロイン | 女神 |
竿役 | キミ |
発射数 | 2 |
公式タグ | フェラ / パイパン / ファンタジー・SF / 中出し / 女性上位 / 巨乳 / 恋愛 / 淫乱 / 異種間 / 逆転なし |
修正 | 黒棒による修正 |
本日は外楽から、時田先生の商業エロ処女作品をご紹介したい。外楽なのでもちろん「異種和姦」なのだが、それだけに留まらない感動ひとしおの一作である。ネタバレに近いところも触れていくのでできれば事前に本作を一読してから御覧いただきたい。
20年越しの囁き
本作の導入はエロ漫画として異色だ。ヒロインがビジュアルに登場する扉絵のシーンは6ページ目である。そして馴れ初めはなんと扉絵時間軸の20年前に遡る。どちらにも名前がないので、竿役は「キミ君」、ヒロインは「女神」と以後呼称する。それはキミ君が小学生だった頃。学校でいじめられていた彼の下校途中、ドブ板の下からヒロインの求愛が聞こえてきた。「今日もいじめられた眼鏡のかわいいキミ/ひどい目に遭ったのに誰にも不機嫌を巻き散らかさないキミは優しい子だね」と個別具体的な褒め言葉、そしてそんなキミ君が大好きだよと地の底から声が聞こえてきた。反射的に危険を察知したのだが、彼は本当に優しかった。そして何より「すき」という言葉に飢えていた彼は、危険を承知で「おれもきみがすき」と返答をしたのだ。その後毎日、人生の節々で、隙間から聞こえる求愛の言葉に彼は愛を言葉を返し続けた。それが20年続いた。学生だった彼はおそらく望まない形で、怒声飛び交う常闇製パン(株)工場第13ラインのライン工として人生をすり減らしつつ糊口をしのいでいた。そんなベルトコンベアーとあんぱんの隙間からも女神は求愛し、彼もまた人知れず愛を返していた。そんなとある梅雨の夜、アパートで独りコンビニ弁当にパクつきながら、キミ君は女神と雑談を繰り返していた。女神は突如、「キミに会いに行きたい」と告げる。キミ君が毎日注いでくれた愛によって女神は自分の肉体を構築でき、あとはキミ君から現世に招待する言葉があれば降臨できると意向を問う。20年、キミ君は隙間から聞こえる声に励まされつつも幻聴か何かだと思っていた。その主が現れるという。彼は20年前と同じ身の危険を察知し、前と同じように彼女を受け入れ招き入れた。すぐさま顕現した彼女は一回り大きく半裸で若干の禍々しさはあったが、少なくともキミ君のどタイプだった。はにかむ彼女をキミ君は自分の美の想像を超える「女神」と称賛した。そしてヴェールの向こうに居た20年越しの女神に対し低学歴低所得な自分が分不相応に思えた。自己卑下の言葉を紡ぐキミ君の口を女神はキスで塞ぐ。最後に触れるが、人知を超える濃厚な舌技に童貞のキミ君は心を持っていかれる。「捕食者の目」とキミ君が表現した彼女の熱い視線、そして悪魔の尻尾はキミ君の勃起した下半身へ向けられる。尻尾だけでズボンを脱がされシゴきあげられるキミ君は、危機感ではなく純情男子として一旦距離をとろうと提案する。恥ずかしげに顔を隠したまま、「映画館とか行って」「おしゃれなカフェ?とかも予約して」と一般常識的な手順を並べる。女神は全て理解し全肯定したうえで、「えっちなことやめて今から映画館行こっか?」と引く姿勢を見せる。キミ君はお預けを食った表情で、本当は「つづけてほしい」と囁き、女神は「もちろんいいよ♡」と彼を抱き寄せ挿入の体勢に入った。
Rendezvous pitch maneuver
ここで一旦タイトルの説明をしたい。ランデヴー・ピッチ・マニューバ(rendezvous pitch maneuver, RPM)はスペースシャトルが国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングする前に行う「身体検査」の動きを指す。2003年にスペースシャトルのコロンビア号が大気圏再突入時に空中分解する大事故を起こした。原因は打ち上げ時の外付け燃料タンクの一部が翼部分に当たり損傷し、大気圏突入の高熱に耐えられなかったことだった。この対策として、ISSにドッキングする直前にスペースシャトルを縦方向に一回転(ピッチング)させ、背面を含めた損傷がないかを目視確認する操作手順(マニューバ)が考案された。このRPMは採用され、2005年から最後の2010年のミッションまで毎回行われた。超高速で飛行するISSの間近(180m)で一回転するのは、一つ間違えればそれ自体が大惨事に繋がりかねない高難度の操縦が要求される。そしてRPMによって何らかの不具合が見つかったとしても修繕できる可能性は少なく、乗組員はISSに収容し人的被害は避けられたとしてもシャトルは乗り捨てるしか無い。そんなRPMだが見ている分にはコミカルで面白い。実際のNASAの映像(早回し)があるので御覧いただきたい。
捕食者の瞳
無事に童貞を卒業したキミ君に、さらなるおねだりを始める女神。工場勤務明けでもう無理とギブするキミ君に、「大丈夫 リンパって知ってる?」と返す。背後を取った尻尾がドスッ♥という不穏な音を立てて左肩に刺さる。狙いは左鎖骨下静脈につながるリンパ節だ。尻尾は一本ではなく全身をまさぐられ悲鳴を上げるキミ君。「ごめんソコ人類には気持ち良すぎるツボだった…」というさらに不穏なセリフとともに女神は全力応援を続ける。十分な硬度を取り戻したところで上から腰を下ろし再挿入。逃げることも許されずエロ漫画らしく「おかしくなるっ」と漏らしたキミ君に女神は意味深長なセリフを返した。全文を引用する。「なってほしいの…ちょっとおかしく… 今だけは からっぽのお部屋も心許ない残高も見えないほど 上司さんの顔も 月末の仕送りも 明日の洗濯も もうなーんにも思い出せないくらい 今だけ私のことで頭がいっぱいのおばかさんになってほしいの…おねがい」。キミ君はもう危機感も抱かない。「そんなお願い…毎秒勝手に叶えてるよっ」と叫んで膣内に出す。自分に自信のないキミ君が唯一女神に誇れること、それは彼女のお願い事を、愛を一度として拒んだことは無いことだったから。そして朝まで二人は突き合った。
目を瞑れば聞こえるもの
朝まで絞って精根尽き果てた頃、女神はキミ君に「本題」を切り出した。「私の住む国に来ない?」行けば最後、現世には戻れない常闇行きの片道切符。28ページ、彼は一旦目を瞑り、初めて彼女のお願い事を拒否した。驚きの表情を隠せない女神にキミ君は続ける。「今すぐ行きたいのは山々だけど さすがにもう少しかっこよくなってからにするよ」「せめてこの世で一番美しい君と背筋を伸ばして一緒に歩けるくらい」。思いがけないキミ君の男らしいセリフに惚れ直した女神は彼の「待って」を認めた。再び常闇へ帰ろうとする女神は、「たまにはキミから声をかけてほしいな」と可愛いお願いをする。隙間から声がすることは経験上分かっていても自分から声掛けするためにはどうすればいいかを訊いたキミ君に彼女は答える。「最良の面会窓」それは両まぶたの隙間だった。季節が移ろっても未だパンのベルトコンベアーの前で怒鳴られるキミ君はふとまぶたを閉じる。その背中には女神の気配と自分を褒める声が聞こえていたのだった。
以下、本作で抜きたい方は一旦用事を済ませてから読まれることをお勧めする。
女神の正体 ※閲覧注意
さて女神は一体誰だったのか。ヒントは30ページにある。本当の二人の邂逅は20年前の愛の囁きより少し前だった。女神の回想「あわれな路傍の死骸だった私を 穢れに頓着せず手厚く葬ってくれた瞬間から キミは私の最強の王子様になった」と、描かれる潰れたカタツムリがそこにいた。ドブ板の隙間、湿ったふすまの隙間、苔むした石の裏、古樹のウロから20年にわたってキミ君に語りかけてきたのは、キミくんの優しさによって手厚く葬られたカタツムリではないと私は考える。なぜか。本作の女神の外見にはカタツムリを思わせる要素がないからだ。唯一考えられるのは濃密なキスの舌技と「恋矢」と呼ばれる石灰質の槍である。交尾中にこれを相手に刺すことで相手の寿命を縮める効果がある。それにより相手の卵子を独占し自分の精子の受精率を上げる効果があると言われている。本作の悪魔の尻尾はそのイメージかも知れない。しかし女神にキミ君の寿命を縮めようとするモチベーションは感じられない。私の出した結論は彼女のツノの模様にある。自分で書いていながら以下本当に閲覧注意である。ロイコクロリディウムという名前を覚えている方は少ないかもしれないが、カタツムリに寄生し色鮮やかなブルードサックという幼虫の袋をカタツムリの触覚に形成し、宿主ごと鳥に食べられることで生殖する吸虫のことはどこかで見せられたことがあるのではなかろうか。こいつこそが本作ヒロインだと考える。寄生したものの本懐を果たせず路上で息絶えたカタツムリとともに葬られた彼女は、キミくんの愛を糧として次の寄生先を探す。彼女の最終宿主はキミ君好みのメス型の悪魔だったのだろう。ロイコクロディウムは寄生するだけでなく何らかの方法で宿主を都合よく操作すると言われている。宿主となった悪魔はおそらく本作で見た褒め殺しによって宿主の頭部に居座り意識をコントロールすることで「肉体を得た」。つまり彼女の目的は、「捕食者の目」の見ているものは、キミ君に食べられることなのだろう。キミ君を自らの世界に呼び込み、キミ君の中に侵入することで「ずーっと一緒」になる。そして意識を乗っ取り「もうなーんにも思い出せないくらい 今だけ私のことで頭がいっぱいのおばかさんになってほしい」というのが寄生者としての彼女の本能であり目的なのだ。しかし私は女神がキミ君の恩を仇で返そうとしているわけでは決してないと思う。それが彼女にとっての善であり心からの愛なのだ。やがてキミ君の優しさは彼女を受け入れるだろう。その日まで彼は彼女に寄り添ってゆっくりとランデヴー・ピッチ・マニューバを続ける。筆舌尽くしがたい愛の形を読ませて頂いた。
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