copyright 2025 ワニマガジン よちリョウタ
タイトル | から焚き |
作者 | よちリョウタ |
掲載誌 | 快楽天 2025.09 |
ページ数 | 24 |
ヒロイン | 坂下真子 |
竿役 | 唐木俊彦 |
発射数 | 2 |
公式タグ | フェラ / 三つ編み / 処女 / 背徳・インモラル / 陰毛 |
修正 | 白抜き修正 |
本日もまた快楽天から、よちリョウタ先生の作品をご紹介したい。ライトで甘めなよちリョウタ先生作品の中では本作は少しビターテイストに仕上がっている。
予知せんせい
当ブログはエロ漫画作品を後世に遺したいという思いで綴っている。おそらく1年後、いや半年後には忘れているであろう時事ネタを記しておくことも無駄ではないと思う。そして当ブログは伏せ字を使わないのでお名前そのまま、竜城諒先生の一件に触れておきたい。「たつき諒」という表記の方がお馴染みかもしれない。竜城先生は1975年漫画家デビューで、少女漫画を中心に作品を発表されている。アイデア出しの一環として夢を記録されており、「ほんとにあった怖い話」などに収録の作品集にいくつかの内容を載せた。これが1999年のことなのだが、その中に「2011年3月に大災害」という東日本大震災に符合する予言があったため注目を集めた。その竜城先生の作品集「私が見た未来」の中に、あわせて2025年7月に大津波の発生を示唆する「予知夢を見た」旨の記載があった。夢を見た日が2021年7月5日だったとのことで、7月5日がXデーだと認識された。時おりしも奄美地方のトカラ列島近辺で群発地震が発生しており、7月6日には震度6弱を記録するほど。悪石島の住人は全島避難を余儀なくされるほどだった(ちなみに8月2日までにほぼ全員が帰還している)。話題が話題を呼び著書が爆売れする一方で、もし大津波が発生したら自分たちもタダでは済まない台湾でも物議を醸す大騒動となった。そして一旦ガセネタとしてフェードアウトしかけた7月30日に今度はカムチャツカ半島で大規模な地震が起き、太平洋岸全域に津波警報が出る騒動が起きた。国内においては津波の直接的な被害はほぼ無かったが、これをもって予言が的中したと考える言説が再燃した。

1,200円
大筋には全く関係ないが、本作冒頭で竿役である唐木俊彦が地震による電車の運転遅延に巻き込まれており、それが本作エロの直接の発端となっている。快楽天本号の発売は7月29日であるため、都内に影響が出た7月30日の地震は予見できない。よち先生の予知ということにしたい。
父と娘と新入社員
本作は回想が長めではあるのだが、登場人物が少ないため把握しやすい。ヒロインの坂下真子は、唐木の上司の娘である。時間軸的に一番古そうなのが3ページ。男どもは基本的に経年変化が分かりにくい。唐木新入社員時の真子さんはかなり幼そうに見える。見ようによってはアンダーティーンっぽい。そして本作のキモではあるのだが、エロ時間軸においても何歳なのか明言はない。女子の発育は早いので、性的同意年齢の16歳以下というふうにも見える。下と想定すればするほど唐木のプレッシャーはデカくなる。6ページまでが回想で、提示された情報は大きく3つだ。
- 上司の坂下は部下を家に招くという癖がある
- 何故か坂下は不在時の真子の世話を唐木にやらせたがる
- 真子は唐木に懐き、父母の離婚の際にも唐木を頼りにしていた
1と3はまあ違和感はない。結果として唐木は高頻度で坂下家を訪れていた。今回は地震で足止めを食らう形となった唐木。そして7ページ、坂下父は元妻が被災し棚が落ちたという連絡を受け急遽元妻の家に出向くこととなった。
0.03mmの提案
カバンの中身を確認する父に、真子は「時間かかりそうだよね」と聞く。答えを濁す父は唐木に「いつも通り好き勝手にくつろいでくれていいからさ」と後を託し出ていく。唐木は真子の成長、そして発育を見ていた。しっかりした面持ちの真子は一人で留守番が出来ない歳でもなさそうだ。そして何より、赤の他人の男と一夜を明かしていい年齢ではもはや無い。帰りの交通は遅延と出ており帰れないわけではない。「ごめん…俺やっぱり…」帰ろうとする唐木に聞かせるように真子は呟いた。「お父さんとお母さんさ まだ会ってセックスしてるんだよね」。そしてタンスの引き出しからコンドームの箱を取り出す。男と女とコンドーム、やることは一つである。しかし真子が両親のセックスライフについて知っている事に些かの違和感はある。いずれにしても真子の方から強めに迫ってゆく。12ページ、口で一発抜かれた男と女そしてコンドーム。とどめに真子は「お父さんには言わないから」と最後の譲歩を迫った。
天使と悪魔と唐木
14ページ、手でじっくりと解された真子は、この潤滑液が次の工程への準備であることを学習する。一方で唐木はまだ割り切れていなかった。白い天使と黒い悪魔が説得を続ける。
天使の主張「唐木は正気を失っている」「相手は上司の娘だ」「手を出していい関係性でないと分かっているはずだ」「上司の信頼を裏切る行為だ」
悪魔の主張「もう一線は越えている」「ゴムはつけている」「自身もその気になっている」「誘ったのは真子であり唐木の裏切りではない」
挿入。卑怯にも唐木の選択は「目を閉じて見なかったことにする」だった。押し寄せる快感。真子が「唐木さん 目あけて」、退路を断たれた唐木は自分を受け入れた真子の裸と向き合った。ゴム付きであるにもかかわらず腟内での射精に抵抗する唐木。22ページ、「…そっか “これ”してる間って私だけを見ててくれるんだ」誰に言うでもなくそう呟いた真子が相好を崩す。その口元を見た唐木はまたしても射精感に襲われ身を任せた。
熱く火照るからだ、き
本作タイトル「から焚き」とは、鍋釜の中に何も入っていない状態で火にかけることを指す。水は温まりにくい物質なので、紙でできた鍋を火にかけたとしても中に水が入っている限り燃えたりはしない。水や油など熱を受け止める物が無いと、金属である鍋は裸火と同じ温度(1700℃)まで上昇しうる。プラスチック樹脂の発火点は400℃前後であるため、直接火に当たっていない部分でも発火しうる。火災の原因の一つとして知られている危険行為だ。本作において「から焚き」されているのは勿論真子さんである。母親の不倫と離婚、父親の秘めた性欲というコンロで煽られた真子は、知らず知らずのうちに「愛情」を強火で蒸発させてゆく。本当は唐木さんという優しいお兄さんとじっくりコトコト煮込まれながら、火加減をコントロールできる大人になるはずだった。この日、真子の「愛情」は煮切れてしまった。から焚きが始まる。火の消し方を知らない真子は、から焚きを防ぐためだけに抗う唐木を鍋に突っ込んだ。チンコから熱いほとばしりが噴き溢れるたび、彼女は鍋の扱いを誤って理解してゆく。鍋を下ろすのでもなく、火を止めるのでもなく、何かを茹で続けることで鍋は常に監視してもらえ、から焚きを防ぐのだと。事後、暗い部屋で唐木を見送る真子は、ふつふつと、危険な熱を帯び始めていたという描写でオチとなる。
本当の火元
しかし本作はこれだけでは腑に落ちない点がある。坂下さんこと真子の父親は何を考えていたのかだ。坂下は「新しい部下は必ず家に招待する」と言っているが、唐木には妻と一度も会わせていない。そのくせ娘とは必要以上に接触させている。本作時間軸の夜、坂下は「被災した元妻を助けに行く」と言った。真子はこれを「母親との逢瀬」だと唐木に告げ口した。しかしこの一連の流れには裏付けが無い。真子の母は離婚前から複数の男と関係を持っていたという真子の証言にも根拠がない。父子家庭の坂下家において、真子の情報源は父親しかいない。つまり「真子の母親は性に放埒だ」と娘に伝えつつ、よその男に抱かれている元妻を今も抱きに行っていると真子にわざと匂わせていることになる。私の出せる結論は一つ、そう、不倫しているのは父親の方だ。彼は真子の母親ではなく愛人を取った。しかし一方で真子の親権も得た。愛人とのアバンチュールにあたって真子の世話を焼かせる要因として唐木を指名したのだ。さらに深掘りたい。愛人は連れ子など受け入れる気は無かった。それを察した坂下は、真子と唐木を接近させつつ、上記のような性的な要素を匂わせ真子を「から焚き」したのだ。7ページ、「時間…かかりそうだよね」「うーん…ちょっと分かんないなぁ」という父娘のやり取り。「自分たちもよろしくヤってるので、お前たちも私など気にするな」という暗黙の了解が双方向に流れている。真子は「父の不貞に見ないフリをするので、早く帰ってこないでね」という思惑だったわけだが、父親もまったく同じ事を考えていたということだ。愛娘に性知識を流し込みつつ、若い独身男性をけしかける。すべてが坂下の書いた流れだとすると帳尻が合う。何なら妊娠でもしてくれれば早く内々に娘を片付けられる上に会社でも忠実な手駒として唐木を使える。そう言えば本作のコンドームは父親がこっそり用意した物、、というのは流石に穿ちすぎか。ゴムをつけているのに中出しを回避しようとした唐木の直感は正しかったのかもしれない。真子ちゃんの成長を竿役にも読者にも印象づけた上で、冷めた目での大人びた駆け引き、それでいて純真真面目にセックスに向き合うヒロインは非常に目を惹く。最後まで割り切れない竿役の逡巡も本作にピリッと苦みを利かせている。よちリョウタ先生の作品幅の広がりを見た一作だ。
こたえあわせ – よちリョウタ先生による本作解説
本業の方で少々懸案があり、本稿に時間をかけてしまった。よちリョウタ先生が自ら本作を解説されることは事前に告知されており実は内々焦っていたのだが、8月7日にPIXIV FANBOXにて本作の作者解説が発表されている(現時点では全体公開)。ここまでは先生の寄稿を見ずに書いている。以降、拝読させていただいた上で追記したい。
本作のオリジナルプロットでは、もっと母親の存在が好意的に語られていたようだ。そして唐木は事後に真子への好意を露わにする。エロ漫画的によくある軽めの後口に仕上がる予定だった。しかし先生は本作プロットの人間関係の重さを再評価した上で、甘さ控えめの味付けに仕上げたとのことだ。10ページ、真子の「知りたいの」の部分は恋のABCではなくやはり両親が何を考えてこんなことになったのか、という意図であり、直接的に説明せず伝える表現に苦心されたとの事だ。そして「伝わらない怖さを克服できた」と自己評価されている。私も同感だ。本作は「思わせぶり」ではなく、所作や台詞でヒロインが何かを伝えようとしている事がとても強く感じられる。最後まで心の底から笑えなかった真子のことを先生は気遣っており、解説の中で満面の笑みを一枚挿されている。漫画はストーリーと絵が切り離せない宿命であるものの、このような形で救済が与えられるのはよちリョウタ先生らしいとも言えるし、素晴らしい。
最後にエロ漫画における「ストーリー」と「抜き」の配分、その難しさに言及されている。まさに当ブログが一番気にしているところである。私の考えを述べたい。ドラマの「孤独のグルメ」という作品は、主人公が毎回どこぞの飲食店でひとりメシを食うという構図である。そこに至るストーリーは語られるが核心のグルメパートには全く関係が無い。何があってもなくても人は腹が減りメシを食う。それが本作の骨子である「食事は自由であるべきだ」の体現だからだ。これに対してセックスは一人でするものではない。相手が必要だし、女性は何の理由も無くセックスをしない。前段と何の関係も無い女とHする話はエロ漫画では無い。なのでセックスに向けての導線となるストーリーやコンテクストは必須である。しかしセックスへの流れをリアリティをもって描こうとすると(風俗レポでもない限り)10ページそこらで語れるわけが無い。ここにエロ漫画ストーリーの本質的なパラドックスがある。つまり論理的に何かがネジ曲がっていることが、Hなことなど何もない現実と「抜き」が両立するエロ漫画の必須条件である。緻密なストーリーの組み立てと納得感のあるキャラクターの心情描写はあっても良いがエロ漫画の必須要素では無い。時に鮮やかに、唐突に、時に巧妙に、煙に巻きつつ、展開がインスタントエロに変わる「ウソ」をつく切れ味が巧拙を分けると思っている。導入が短くても名作がある一方で、ページを重ねても「ウソ」無しではHシーンに持って行けないか、ありきたり過ぎてエロくならない。ウソは何でもアリであるが故に難しいし、時に人を傷つける(万人が納得できるNTRなど無い)。そしてウソが魅力的であればより早くエロシーンに展開できる。初めからこの魅力的な「型」を決めている作家様も少なくない。逆にストーリーが緻密であること自体は売りにならないと考える。
僭越ながら、よちリョウタ先生はここで言うウソの提示が上手い。「深夜の駅でクダまいてる男に話しかける三上さん」(社畜の女神さん)、「初対面のインストラクターが勃起しても文句言わないるなさん」(ラスボス♡降臨)、そして本作の「年頃の娘と二人きりにさせたがる上司」、というウソを開幕からぶつけてくる。ある意味で必要な情報が最短でまとめられている。最初に切り札を通しているのだから、もう即「抜き」でもいい。その上でよちリョウタ先生はストーリーのさらなる掘り下げを進めており、それはそれで良しだ。逆にエロへの分岐を少し後ろへ倒す(冒頭エロを匂わせずに進める)とストーリーパートとのギャップで引き締まるかもしれない。なお次回作は「ヌキ寄り」とのことなので引き続き楽しみにしたい。
よちリョウタ先生の作品はこちら!!

330円

440円
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