copyright 2025 ワニマガジン しらないひとし
タイトル | 彼女はボクの王子様 |
作者 | しらないひとし |
掲載誌 | BEAST 2025.10 |
ページ数 | 24 |
ヒロイン | 叢雲玲音 |
竿役 | 虎徹 |
発射数 | 2 |
公式タグ | ショタ / フェラ / パイズリ / ショートカット / 中出し / カップル・夫婦 / 女性上位 / 学生 / 巨乳 / 恋愛 / 手コキ / 逆転なし / 金髪・茶髪 / ぶっかけ・顔射 |
修正 | 白抜き修正 |
本日は再度BEASTから、オキニ作家しらないひとし先生の作品をご紹介したい。
逆転
komifloには「逆転」タグ、そして「逆転なし」タグの二つが存在している。FANZA動画にはアニメ含め305タグ存在するが「逆転」にあたるものは入っていない。「逆」で検索すると「逆ナン」のみヒットする。一方DLSiteの男性向けR-18には意外にも「逆転無し」タグのみ存在する。
ここでいう「逆転」の概念に触れる前に、女性向けBLに触れたい。そう、「リバ」である。BLには古来より「攻め」「受け」という概念がある。男性同士の性行為では「タチ」「ネコ」と呼ばれる。コネクタは元々男女で一対であり、人体構造上オトコ2人同時にサオとアナを満足させる挿入方法は存在しない。そのため男性にある何らかのアナに挿入する側(=攻め)と、される側(=受け)が発生する。攻め側は本質的に男女間と同じ方式と言って良いのに対し、受け側には女性相手では通常発生しない体位・性感そしてマインドセットが必要となる。そしてこの概念はR-18を超越しており、受け攻めという表記は必ずしも挿入を意味しなくなっている。
さて、ホモソーシャルではヘテロと違い誰もが「タチ」「ネコ」どちらにもなれるので必ずしもニコイチになる必要が無い。大勢で代わる代わるといったプレイも悪くない。対してBL界隈は「カプ」を非常に重要視し、カプは排他的である(カプ外の交流は不倫とみなす)という大前提がある。そして「受け攻め」を挿入時の役割では無く精神的人間性にまで拡張したところから、同一キャラであっても「受け」人格と「攻め」人格は別であるという根本思想が生まれた。キャラ・カプの構築と感情移入を目的とするBLにおいて、セックスごときで人格が変わるのは積み上げた世界観を崩壊させる禁忌となった。作中はおろか、同じ作家が別作品でカプを攻守交代させる(各作品では一貫している)場合でも「リバ」であると判定される。かくもリバに対する忌避反応は根強く、リバを包含する作品を公開する場合は、タグ付け・表紙での注意喚起だけでなく作者プロフにまでその旨を注記することを推奨するほど異端の存在なのだ。
逆転なし
男性向けの話に戻る。男女間のセックスの話である限り、挿入の方向は変わらない。上記の定義に則れば「男性が攻め、女性が受け」である。しかし上記の通り受け攻めは精神性で定義されると考えられ、女性がリードしている展開において女性は「攻め」なのだ。komifloではこのパターンを「女性上位」というタグで表現する。一方で男性向けでは「くっころ」「メスガキわからせ」「チン堕ち」といった、「高飛車な女性の膝を折らせる」展開が一定の評価を受けている。エロ漫画であればセックスによって男性が優位を得る展開だ。挿入方向による定義では常に男性が「攻め」なのでこの流れは自然に描ける。これが「逆転」である。一方で頑固、生意気で男尊女卑気質の男がベッドの上では女に甘え媚びるという「逆転」も少なくない。起承転結における「転」としてストーリーを構築しやすいという利点が大きいといえる。しかしながら、エロ漫画男女においてもBLと同様の「精神性に起因した受け攻め」を前提とするように、ベッドの上で突然にキャラ変すること即ちリバを良しとしないという考えは理解できる。これが「逆転なし」タグである。BLにおけるリバとの最大の相違点は、挿入方向の関係で冒頭からオチまで「竿役が攻め」の作品が男性向けのスタンダードであることから、このパターンに「逆転なし」タグが打たれることは稀である。また一方で「ヒロインが冒頭からリードする」構図を前もって提示することは場合によってネタバレとなりうる。「女性上位」そして「逆転」「逆転なし」は検索タグとしては付与しても、BLにおけるリバのように事前に注意喚起する類の重大事項ではないのだ。男性向けエロにはこの他にもTSものや百合など考慮すべき要素は様々あるが一旦ここまでにしたい。
あめのむらくも
ここまで長々と書いた理由は、他ならぬしらないひとし先生が本作の紹介文でヒロインの「逆転」を示唆する表現があったことに落胆されたそうだからだ。
本作はこれ見よがしに「女性上位」である。竿役は虎徹くんというのだが、名前負けと言いたくなるほど小動物属性である。かくいうヒロインもまた叢雲玲音と壮大な名前だ。虎徹は江戸時代の刀匠、長曽祢興里の出家後の名前から来ている。ヒロインは「天叢雲→雨の叢雲→叢雲rain」だろうか。どちらも刀剣だが、天叢雲剣は他ならぬ三種の神器の一つであり格が違い過ぎる。ちなみに本作タイトルの英題は「My lover is my prince」となっている。”lover”は愛する男性を指す(愛する女性は”love”)ので、訳すと「私の彼氏は王子様」となる。とにかく隙のないボーイッシュヒロインなのだ。
「新撰組」近藤勇の愛刀とされる長曽祢虎徹

天叢雲剣(草薙剣)が祀られている名古屋・熱田神宮

ダメじゃない 気持ちいいだろう?
冒頭コマから、本作カプは玲音さんから「伝説の樹ドン」で告白したらしいことがわかる。以降、虎徹君は自己認識が追いつかないままに学校一の王子様キャラとカレカノの関係になった。無論虎徹君側にイヤな要素は無い。というか同性異性関わらず玲音さんは掛け値無くスパダリである。周囲との関係も良く、率先して車道側に立ち、虎徹君が古式ゆかしいヤンキーに絡まれても実力行使で叩き潰してくれる。それでいてファッションにも一切の緩みが無く、クレープを食する所作まで美しい。同性異性問わず、ここまでされた側は自信を失っても仕方ないだろう。虎徹くんはエロ漫画竿役として彼女を家に誘いリードする役回りなのだが、7ページ、あまりにも上げ膳据え膳されている中でコンドームだけ用意している事に自己嫌悪していた。玲音さんは逆にいや増して自信満々に彼氏をベッドへとエスコートする。11ページ、ついに虎徹くんは姫プレイを受け入れる。12ページ、それに対して玲音さんが「いい子だ」とグルーミングする。しかし安易な射精を玲音さんは許可しない。13ページ、「それダメぇ!」と嬌声を上げる虎徹を玲音さんはたしなめる。「ダメじゃない 気持ちいいだろう?」、玲音さんは虎徹くんをいじめるつもりも、支配するつもりも無い。可愛い虎徹くんに奉仕して、虎徹くんに肯定して欲しいのだ。玲音さんの強さである。15ページ、攻守を交代して玲音さんにクンニを施す。玲音さんはテレも無く率先し「うん いいよ 気持ちいい…」と告げる。そして17ページ、有無を言わせず虎徹くんにのしかかり挿入する。本作は逆転なしだ。セックスに至っても虎徹くんにリードする隙は与えない。それでいて玲音さんは精液以外のものは何も奪わない。もらった分を与える。照れず媚びず愛を語らう。事後に至ってもそこは変わらない。「男らしくとか女らしくとかそんなのは古い考えさ 私たちは愛し合っている それだけで十分じゃないか」。長々と逆転について語らせて頂いたが、本作は「逆転なし」も何も、攻めも受けも何もない、ノーサイドなのだから逆転などあるわけがないというのがしらないひとし先生のメッセージだった。玲音さんは誰もが納得する可愛い系ボーイッシュヒロインであり、虎徹くんもしらないひとし先生らしい可憐な竿役だ。絵で伝え、目で伝え、セリフで愛を伝える。曇りなき眼で読めばただただ尊い、純愛えっちな作品だ。
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