copyright 2023 ワニマガジン スミヤ
快楽天筆頭
スミヤ先生が巻頭なのは珍しいと思ったが、文句なしの名作だった。スミヤ先生の描く女子はだいたいクセがあったり影があったりキャラに深味があるのだが、本作のヒロインも上々である。
深き謎は黒塗りの中へ
本作にはいくつか不可解な点がある。エロ漫画に限らないが、コマの外枠を黒塗りするのは回想場面など場面転換があるというお約束がある。本作は12ページ目からHシーンに入るのだがしばらく上記のように暗転している。部屋を暗くした描写とも思えるが、何かヒロインの心理描写のようにも思われる。
挿入のシーンで「あれ?ゴム」「大丈夫です 大丈夫な日なんです」「そんな都合よく」「はい都合よく」という意味深なやり取りがある。エロ漫画は大体から都合よく出来ているのだが、ヒロインが殊更言い聞かせるように繰り返す所に意図を感じざるを得ない。男性は概ね女性の排卵日に無頓着なもことを責める向きもあるが、そもそも外から見て女性の生理周期を当てる術がないのだから無理もない。大丈夫だと言われたら信じるしかないのだ。
変わったのは?
そして事後、普段通りのオフィスで山田はこう思う。「中野さんはいつも通り 出張前と変わらず 変わらず?」何らかの変化を示唆する独白で締められている。しかしラスコマのヒロインには変化がないように見える。では何が変わったのだろうか?実はヒロインではなく山田の目の色が変わっているのだ。出張前の描写では山田の目は黒く塗りつぶされているか、生気の無い目をしている。それが中野のAVの話を聞いたところ、それについて考えている所で彼の目の色は文字通り変わっている。それは困惑、興味、そして恋慕にと変わっているように見える。出張後の山田から見える中野は、以前のものと違って見えるのだろう。
つづく?
最後だけ見るとハッピーエンドに見える本作だが、上記の通りいくつかヒロインからみて不穏な描写がある。「新しい派遣社員」ということは恐らく過去にも別の上司はいただろう。実際節々に過去の性遍歴を示唆する台詞もある。変化に気づいてしまった山田と、暗い過去を背負う中野の今後は如何に?
救いはある。スミヤ先生の単行本には「エンドロール」と題した、全収録作の後日談をチラ見せする描き下ろしが追加されるのが恒例となっている。ダークな話ほど何らかの救済がなされることが多いので、本作のモヤモヤは一旦封印としたい。というかスミヤ先生は連作も多いので、そもそも続きがある??
あらすじ
新人の派遣社員、中野愛梨の上司となった山田は、酒席で彼女が元AV女優だったと打ち明けられる。山田が出張先でつい中野のAV出演作を探していたところを本人に見られてしまう。中野は自ら自分の源氏名「野中りあ」を検索してみせ、これと同じ事をしてみましょうかと持ちかける。
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