komifloタグのリニューアルを読み解く – 後編

前稿に引き続いて、komifloタグリニューアルについて、今度は掲載作品数について調査した結果をご報告する。詳細については前稿をご参照いただければ幸いである。

以前もご説明した通り、komifloは現時点での公開総作品数を調べる方法が無い。おそらく2000強だと思われるのだが、メガストアの新規追加など増加傾向にある。単話売りしている(komiflo plus)分は検索から消えないと思われるため、こちらも累積していくと考える。タグは当然重複するので、総合計は作品数より遥かに多くなる。

3月時点でのタグの累計数は17,142だった。これが現時点では25,038と46%の増量となっている。タグの件数自体が42%増えているので、タグが追加された分だけ作品あたりのタグ数が増えていると言って良さそうだ。

新規タグが上位にも多数入っているため、順位だけで見ると変動が大きい。3月時点での作品数が0のものが新規追加のタグになる。しかし既存タグに限ると上位はほとんど変動がない。上記の通り作品数自体が増加しているため、全体としてはどのタグも増加傾向にあるのだが、一部マイナスになっているタグがある。ニッチなタグほど掲載にムラがあるため偶然と思われるものから、理由が読み取れるものまである。上位から順に見ていこう。

1位は変わらず「巨乳」である。とにかくエロ漫画だけあって乳はおしなべて大きいのだが、komifloはことさら大きいと作品内で謳っていなくても巨乳タグを付けまくる傾向にある。3位の「淫乱」も同様だ。「貧乳」は21位で決して小さくない。前回紹介した通りkomifloには元々プレイに関するタグが無く、今回追加された「中出し」が2位に入っている。なおコンドームの有無に関するタグは現在も無く、ゴム出しも相当数含まれている。「生」派の方には残念ではあるが、そもそも修正がきついため読者側で判別しようがないという問題もある。

私は驚いたのだが、今回追加された「パイパン」と「陰毛」に関しては非常に拮抗しており、わずかに「パイパン」が多いという結論になった。ちなみに両者合わせても巨乳に届かない。「どちらでもない」という事はないと思うのだが。いずれにしても上位タグは「今日のオカズ」の検索にはそぐわないという傾向は否めない。しかしタグのクロス検索が可能なため、オカズが絞り込めない場合のサブ条件としてこの辺は使いやすくなった。「JK」タグが改廃され「学生」(6位)となったが、ヒット数に大きな変動はない。シチュエーションカテゴリのトップ「恋愛」(7位)も順当である。

前回ご説明した「金髪・茶髪」は9位に入っている。そして今回の改廃の目的と私は思っているが、唯一大幅に該当数が減ったタグが「おもらし」(54位、-341)だ。これが丸々新規追加された「潮吹き」(15位、+417)に移動していると考えられる。極めて妥当な判断であり、全て「おもらし」で処理していたのが異常だったといえる。20位以上で唯一掲載数が減ったのが「ファンタジー・SF」(18位、-7)なのだが、あえてSFを範囲に含んだのに減った理由は謎である。異世界楽天や外楽の掲載数の関係だろうか。そもそもファンタジー要素の薄い、純然たるSFノリのエロ漫画というのが直感的に思いつかない。ついでにこれも直感的だが、ヤリチン属性の竿役がほとんど居ない(タグもなく、おそらく需要もない)のに、「処女」(14位)より「童貞」(19位)の方が少ないのも若干違和感がある。

「しつけ」(26位、-6)は、「女性上位」(25位)の反対のタグとして運用されている。ここでいう女性上位は「ヒロイン側がリードする」という意味であり、セックスの体位の事ではない(実際シチュエーションカテゴリである)。今回プレイタグが大量追加されたが、セックスの体位に関するタグは一つもない。何なら男のボディ自体が作画上邪魔でしかない正常位より、ほとんどの作品で女性が映える騎乗位のシーンが各作品一度はある印象だ。性同意を非常に気にする世相を反映して、男性がリードする展開は描きづらく、今後も順位が緩やかに下がっていくだろう。「ハード系」(59位、-3)も同様と思われる。「ツインテール」(35位、-3)が減ったのは、改称で外されたピッグテールというよりは、「おさげ」(61位)や「三つ編み」(74位)に正しく再分類されたのだろう。

「ギャグ・コメディ」(46位、-5)が減ったのは、今まで箸休めに載っていたギャグ作品、快楽天であればF4U先生「異世界はこう抜く」、位置原光Z先生「青春リビドー山」が相次いで連載休止したことと関連している。前者はまさかの「全年齢対象」で単行本化されたのだが、後者は休止の経緯が不明であり、本誌内で単行本化が告知されていたにも関わらず頓挫していると作者が表明している。エロ漫画の海外展開という側面では、伝わりにくいギャグ漫画は貢献しないかもしれないが、商業エロ漫画雑誌に不可欠な文化と私は信じている。復活を待ち望みたい。

「表紙」タグが41位なので、ここより下は1雑誌に必ず載っていると言えないニッチタグと言える。ヒロイン目線のストーリーも増加傾向に見えるが、「オナニー」(58位)は意外と順位が低く感じる。年上女性全般に使われる「お姉さん」(10位)というタグ(ちなみに「姉」は69位)に対して、「ショタ」は67位と離されている。前回集計時にも書いたが、NTR系タグは「不倫・浮気」タグ(36位)と依然競合しており、「寝取らせ」(108位)が追加されたにも関わらず検索性が悪い。

旧タグでの最下位だった「義母」は、「お母さん・義母」と改称され大きく掲載数を増やしている(78位、+51)。新タグでのヒット数ワーストは、「性転換・女体化」「フタナリ」「男の娘・女装」とキレイに揃ってしまった。この辺はジャンルとしての人気は急上昇しているが、どう考えても専門誌ないし同人誌を望んでいると思われる。幅広くカバーする商業エロ雑誌にちょこちょこ載せることに意味があるかは正直疑問があるのだが、それこそ専門誌のスピンアウト、単話販売など将来の布石として枠を確保したというところだろうか。生身の3次作品と比べて優位性が有るのは「双子」(105位)だと思うのだが、これもニッチジャンルらしい。ケモミミなど女優に被せればOKだが、「美人双子をAV共演させる」のは極めて難易度が高いだろう。エロ漫画ならむしろ3Pより安上がりとさえ言える。

komifloの読者層は、「定期購読者」と「ネカフェでの利用者」に大別され、私のような前者は基本的に配信順に読んでいると思う。タグ検索したいのは後者であり、ネカフェではAVと直接競合している。例えばFANZAの映像作品のジャンルは「その他」を除いても260種類もある。これもどこまで実用的かはさておくとしても、1タグでも刺されば嬉しいアダルトジャンルにおいて、このようにタグの大幅リニューアルが行われるのは利用者にとってメリットが大きい。作家陣・編集陣におかれても、読者アンケートより正確性(正直性)・速報性の高いデータとして、ジャンルの趨勢の見極めにkomifloのタグが与える影響は小さくないと考える。

それはそれとして、komifloの作品検索の導線は初心者にあまり優しくないとも感じている。スマホは仕方ないにしても、PCブラウザからであれば、コンテンツの左右に作品情報や作家情報が表示されていても邪魔ではないだろう。それこそタグ情報が常時表示されていれば、作品をめくりながらの検索もしやすい。作家から検索する場合も、作品リストがサムネイルだけでは刺さらない。AVだと「女優」と「ジャンル」のクロス検索はあまり意味がないと思うが、二次エロで「タグ」から「作家」の検索は大いに意味があるだろう。インターフェースの改修はタダでは無いが、折角タグが拡充したのだから、ご検討いただければ幸いである。

異世界はこう抜く

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