イってない君がいた? [ガー] 風俗イったら君がいた (BEAST 2024.11)

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copyright 2024 ワニマガジン ガー

タイトル風俗イったら君がいた
作者ガー
掲載誌BEAST 2024.11
ページ数28
ヒロイン水瀬(マリン)
竿役岡本(タナカ)
発射数1
公式タグフェラ / スポーツ / パイパン / ローション / シックスナイン / 同級生・同僚 / キャバ嬢・風俗嬢 / 巨乳 / 競泳・スクール水着
修正白抜き修正

引き続きBEASTから、ガー先生の作品をご紹介したい。当ブログでご紹介させていただいている作家先生の中で最もワード検索しにくい方である(もず先生や右端先生も結構混ざりがち)。作家名ではなく単行本名「喰らうガール」と検索いただくのがオススメだ。

風俗バレ

本作こそエロ漫画定番の、いわゆる「風俗バレ」作品である。よくある展開は、竿役と表の付き合いがある女性と風俗店でご対面してしまうパターンで、「上司・教師」などの管理職系・「彼女の友達」系、そして「嫁の妹」など肉親系に大別されようか。どれも根底に「風俗店で勤務すること自体の問題、バレたくない、後ろめたさ」という嬢側の問題があり、対策として「竿役も風俗店の客である」という弱みから「共犯関係」に持ち込むためにスペシャルサービスを提供するという展開が王道と言える。風俗店で働くことの是非、客として利用することの是非をここで論じるつもりは毛頭ない。しかし現実として風俗嬢勤務とバレてしまうことで、社会的に許容されたとしても周囲の男性から「性的に放埒だとみなされてしまう(ワンちゃんいけるかも感)」を持たれてしまうのが最大の懸念といえる。一方で風系でも水系でも男女問わず「金持ってんだよね」という詮索を受けるのもリスクだ。古今東西で風俗業は試練にさらされており、「嬢の身元を保障・管理する」のために相応の経費を払っている。一見の客に対しては極力嬢側に面通しをさせ知人である場合は嬢の交代・キャンセルも辞さない。実際に表の顔が知られてしまった恐れがある場合は、嬢が可能であれば別地域の店舗に異動させるという対処も取られる。ただ現実問題として風俗店がある地域はそれなりに限られており、嬢側も客側も地元を積極的には選ばないだろう。また「キレイだがワケアリで金が欲しい」女性と「遊ぶほど金を持っているがモテない」男性が実社会で接点を持っているのもまたレアケースと思える。男性側が意図的にストーキングしている場合を除いて、偶然カチ合うという事件はそんなに多くないだろう。本作はそれが起きたという話である。

スーパー海物語INまーめいど

登場人物を整理しよう。ヒロイン水瀬と竿役の岡本は高校の水泳部の同級生で、水瀬はおそらく地元H大への推薦、岡本は東京の大学へ進学した。岡本は水瀬のことを好きだったが、言い出せなかったかうまく伝わらなかったかで結果お付き合いは叶わなかった。本作時間軸はここから少なくとも5年後。大学を卒業した岡本の就職先は期待外れだったようで、彼は地縁のない僻地への転勤を命じられた。新しい勤務地に馴染めない岡本は、鬱憤を晴らすべくソープランド「まーめいど」に偽名で予約をいれる。風俗に行く客側も上記と同様に、身元バレは嬉しくない。念の為書いておくと一般的な店舗型風俗で客が名前を名乗る必要は無い。しかし予約や派遣型(デリ)となると当然相手の確認が必要になる。そこでも応対ができればそれでいいので適当な名前を名乗っても咎められることはない。ただ人間はとっさに本名を言ってしまいがちなのと、都度デタラメに言ってしまうとトラブルの元なので、前もって偽名(できれば生年月日などの設定も)を決めておくと良いとされる。タナカ(カタカナ表記)が竿役岡本の偽名である。嬢側は当然「源氏名」を名乗る。適当な偽名を使うと、たまたま客の嫁や母親と同じ名前になってしまうと気まずい。古くからの知恵で源氏物語の巻名を使ったところから源氏名と呼ばれるようになったとされる。現在でも極力年上の女性が使わなさそうな名前を名乗る。タナカの指名はマリンさんという嬢だった。そして本作は終始一貫して「マリンさん=水瀬さん」だという確定情報が読者に提示されないまま進行する。4-5ページで何か言いたげなマリンさんだったが、踏み込もうとする岡本を制止し、あくまで竿役のことを「タナカさん」と呼び続ける。

建前と本音の色恋関係

冒頭で書いた風俗モノ特有の「スペシャルサービス」だが、本作の舞台はソープランドである。要するに本番行為は標準サービスに含まれている。本邦において管理売春は刑法犯罪なのだが、ソープランドが提供するのは「女性による個室での入浴介助」であり、密室で裸の男女が恋仲になってナニをしようが店側は関知しないという建前がある。その意味で本作は建前通りの「真剣恋人ごっこ」を完走しているといえる。マリンさんは、タナカさんのいう「昔好きだった子」について聞き出す。当たり前だが風俗で嬢を指名する客は自分のタイプの女性を選んでいるわけで、「昔好きだった子に似ている」トークは日常茶飯事だろう。水泳部というワードが出たことに対して、マリンさんはサービスで競泳水着でローションマットプレイを始める。サービスと書いたが通常コスプレは有料オプションだ。御存知の通り、各種風俗の中でソープのみ「店に払う入浴料」と「女性に払うサービス料」を分けている場合が多く、最終的にマリンさんがしれっとコスプレ代を請求した(請求されてなくても岡本が払った)可能性はゼロではない。

マットプレイで一発抜いたあとベッドで2回戦が始まる。本作をお読みの方はもちろん感じられたと思うが、「かつて好きだった女友達とソープランドで再会する」というのを素直にラッキーと捉えるのは難しい。もちろんHできて嬉しくない筈はないが、自分だけでなく大勢の男に股を開いているという事実とその経緯に多少なりとも動揺は隠せないだろう。岡本としても、他人の空似であってほしいという思いはあったに違いない。マリンさんも同じく、過去の自分を嫌でも思い起こす岡本の存在に様々な感情があったろう。それでもなお「恋人を演じる」ことが嬢としての本文でもある。21ページ、マリンさんの「やっと…繋がれたっ…♡」という言葉に、額面通りに受け取れない重みを感じる。マリンさんのうなじに見えるほくろが、かつての水瀬の後ろ姿と重なり思わずその名を呼びかける岡本。それに対してマリンさんも岡本自身も口を噤んだ。名前を言わずにかつて言いたかった告白のセリフだけを紡み、恋人役であるマリンさんもそれに応じた。

イってない君がいた?

風俗嬢は指名されてナンボである。自分のことを気に入ったと思った客にはメッセージ入りの名刺を渡すサービスがあり、気恥ずかしいので渡されたその場では読まないのがマナーである。事後、最後の28ページ、彼女から渡された名刺はタナカではなく「岡本くんへ」という書き出しだった。マリンさんが知り得ない彼の本名を告げた、水瀬さんからの回答だった。彼の口を噤んでいたからこそ、彼が「嬢と客」としての一線を踏み越えていなかったからこそ成し得た回答だ。ほろ苦さが残りながらも清々しいオチである。ガー先生ガールズの切れ長な猫目と恥ずかしげな表情が堪能でき、本職準拠のプレイ内容も実用性十分だ。しかし一点気がかりがある。エロ漫画には実際には存在しない「射精音」というのが存在する。精子の放出という動きを直接表現できない漫画において、「ドピュ」「ビュル」といった書き文字で表されるアレである。断面図という画期的手法でビジュアルに描かれることも増えたが、それでもなお男性の体感として捨てがたい描写である。27ページ、本作クライマックス、抜きドコロである大ゴマだが私には射精していないように見える。書き文字が入るところにはプレイ時間終了を告げるアラームの音(とアラーム本体)が書き込まれている。「プレイは良かったのに時間内にイケなかった」というのは風俗初体験あるあるであり、岡本も初参戦だと言っていたのだが、意外なところでリアリティを追求したのかもしれない。そして強いて言えば情熱的に言い寄られたマリンさんの方がイッたようにも見える。本作タイトルの「君」は、実はヒロイン水瀬からみた岡本なのかもしれない。

ガー先生の作品はこちら!!

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